その人口ボリュームの大きさから、消費動向が注目される団塊ジュニア世代。特にその女性層には、結婚・出産などの生活変化に伴う大型消費が期待されている。野村総合研究所の塩崎潤一氏に、団塊ジュニア女性の特徴や、アプローチのヒントなどをうかがった。
――「団塊ジュニア女性」の特徴を、どのようにとらえていらっしゃいますか。
いま、団塊ジュニアの女性たちが注目される最大の理由は、彼女らが年齢的にちょうど世帯形成期にあることだと思います。
ある世代の消費動向や生活意識を探る時に使われる方法に、コーホート分析があります。これは「加齢効果」「時代効果」「世代効果」の三つの側面から世代を考える手法です。実は、ある世代の消費スタイルの変化は、多くの場合「加齢効果」によって説明がつくのです。加齢とは年齢が増えて世帯形態が変わることで、家族の出費に大きな変化をもたらします。
現在、団塊ジュニアの女性が結婚している比率は、およそ7割でしょう。ちょうど子供を産むかどうかという時期です。結婚していない方も、すでに第1子のいる方もいますが、そういった人たちを含めて、世帯の状況が大きく変わろうとしている時期にいます。
例えば子供が生まれ、成長すれば、新しく家を持たなければなりません。住宅に対する出費があります。同じように教育ローンや学費の積み立てといった、教育費の出費も必要になります。
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つまり今までは夫婦2人で使っていたお金を、子供たちに回さなければならない。共働きだった夫婦で、子供が生まれるから妻が専業主婦になるという場合の変化はさらに大きいはずです。出費の構造が大きく変われば、マーケットにも大きく影響していくはずです。
――独身の30代女性や、子供を持たない夫婦も増えていますが。
時期的な幅はあるでしょうが、多くの女性はいつか結婚し、子供をもつと思います。様々なスタイルが混在する今の状態は、「多様化」ではなく「途中段階」と考えるべきです。ただ、親と同居している独身女性などは、可処分所得が大きい可能性がありますから、数は少なくとも、そこを狙うニッチな戦略もあると思います。
――「世代論」的な特徴はあまり意味がないのでしょうか。
団塊ジュニアを世代で語る意味があるとしたら、それは「数が多い」ということです。団塊世代と団塊ジュニアという二つの世代は、日本人の人口構造上、突出しているベビーブーム世代です。ただし数が多いことと、世代の塊として何らかの意味をもっていることは違います。平均値的な分析結果を世代特有の価値観ととらえるのは間違いです。団塊ジュニアの価値観は「世代」としての特徴ではなく、30代という「おかれている年齢」としての特徴です。 |
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――団塊ジュニアの消費行動を考えるうえでポイントになることは何でしょう。
消費スタイルは、加齢効果と共に時代効果、つまり時代の変化による影響を受けます。例えば「若い頃からマイカーに乗っていたため、高齢者になっても自動車を持つことに抵抗がない」などと言われますが、それは、彼らと自動車の登場が時代的に重なったということです。
団塊ジュニアの消費行動に最も影響のあった時代効果はインターネットの普及です。団塊ジュニア以降の世代は、会社も家庭でもネットを使ってきた経験があります。その結果、多くの人が情報収集を様々な角度から実施するようになりました。優れた情報収集力によって、彼女たちは情報を一方的には受け止めず、複数の情報を比較した上で判断します。
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また、この世代の女性で注目されるのは「コミュニティー」の価値です。女性の場合、退職すると外部との遮断が大きいわけですよね。子供が小さい間は母親は外に出にくい。だからこそ、今まで子供の学校などを通じてしかなかった社会との接点が、ネット上のコミュニティーのような形で広がる可能性が生まれています。
外に出なくても買い物ができる状況を提供することも、より重要になると思います。そうすると通販はやはり有力なチャネルになってくると思います。単に情報を提供し販売するだけでなく、その後のケアなど彼女たちのニーズに応え満足させるような仕組みをちゃんと作れるかどうかが大きくなってくるのではないでしょうか。 |
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――「友だち母娘」という表現がありますが、団塊ジュニアは、親とのつながりがゆるやかながらも強いと言われます。
両親との距離は縮まっているでしょうね。親が元気になったことが大きな理由だと思います。高齢者になってもまだまだ積極的で、体力的にも元気な人が多い。ですから母娘で一緒に買い物に行くといったように変わってきているでしょう。これも時代の変化です。昔はリタイアしたら、家におとなしくしている人が多かったのですが、いまは外部との接触を続け、それにともなって外出の機会も増え、買い物をするのだと思います。
また、おじいちゃん、おばあちゃんの世代にとっても、やはり孫がいるかどうかは消費に影響を与えるんですね。それは孫のために物を買うだけではなく、孫がいることによっていろいろ影響を受けて、若い世代向けの買い物をするなど、価値観が若くなることがあるわけです。経済的に余裕がある祖父母の支出を期待しながら、団塊3世代の消費を一網打尽にするという考え方は有効ですし、そこでマスメディアを利用する戦略もありうると思います。

出所:『第三の消費スタイル』(野村総合研究所)
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――これからの団塊ジュニア女性市場の変化について。
これまで、日本人の消費スタイルは、よいモノにはお金を出す「プレミアム消費」と、安ければよい「安さ納得消費」の二極化が進んでいると言われてきました。しかし、実際にはそのような単純な二極化では語れません。第3の消費は「モノに対するこだわりはなく、かつ、価格もそれほど気にしない」というタイプで、これを私は「利便性消費」と名付けています。コンビニのATMは手数料がかかりますが、ちょっとした利便性を提供することで多くの消費者に利用されています。この「利便性消費」は、日本人に占める割合が一番多いのです。
団塊ジュニア女性が個人消費から世帯消費に移るとき、消費スタイルがどう変わるかを見極める必要があります。例えば、独身時代は「プレミアム消費」だったのが、出産を機に「安さ納得消費」になるのか、あるいは「利便性消費」になるのかといったことです。
また、価格に対する感度は時代の変化による影響を強く受けます。時代効果は、すべての年齢層に共通した「流行」のようなものです。その時代の社会環境を的確に把握することも重要になります。
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