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広告月報 7月号

21世紀広告紀行
No.79 岡田芳郎

SEIKO
●4/25 朝刊(ページ送り)
  SEIKO


力強さを生み出す簡潔な表現スタイル


 広告は気合である。切り結ぶ一瞬に火花が散る。研ぎ澄まされた刃の切っ先が、正しく相手の胸に突きつけられるか、勝負は単純だ。
 すぐれた広告は、一目で分かる。手に取った瞬間に心をとらえる。理由や好き嫌いはあとからくる。最初が大事なのだ。
   4月25日のセイコーウオッチのページ送り30段広告は、自信にあふれた広告である。謎も論理も、トリックも仕掛けもない。一目で見たままがすべてだ。広告に向きあった瞬間、たくましい両腕で肩をがっちり押さえられたようだ。
一目で分かる持ち主の「人」
 広告を分析してみよう。まず、1ページ目の全ページ広告は、1人の若い男がこちらをまっすぐ見つめている。精悍なそして爽快な顔立ち。くっきりと濃い眉。意志的な目。しっかりと見つめているが、決して挑戦的ではない。むしろ表情には静けさが漂っている。ラフな形で整えられた髪に、若さと自由さと、現代の動きが表れる。プロ野球選手、ダルビッシュ有だ。
 ゆったりしたサイズの白いワイシャツの両腕を前で組んでいる。左手の袖口にセイコーウオッチが光沢を帯びている。時計をはめた手の指は右腕をゆるくつかむ。ほんのわずか身体の右側を後ろにねじった姿勢は、無意識のうちに大事な右腕を守っているかのようだ。そしてこの男がただ一つ身につけているセイコーウオッチは、ここだけに夢や記録が閉じ込められているかのようだ。
   広告右下部に「セイコー ブライツ フェニックス」の2種の時計が置かれ、機能性を重視した製品の躍動的な姿を提示する。付随機能の朱色の針が粋だ。朱色の針に、日本の美と心意気が凝縮する。
 右上隅に朱色の控えめな大きさの文字で、「その時、どこまで日本をわかせ、世界を黙らせることができるか。」と、コピーが語る。活字が小さいだけに言葉の大きさ、激しさは広がる。
 この男もこの時計もヤル気だ。気迫がこもり、ナンバーワンの自負がみなぎる。野球場の歓声が広告紙面の裏側から響き、この男と時計が重なり合って見えてくる。
 時計には、持ち主の「人」が表れる。人は、自らにふさわしい時計を持つ。「I,BRIGHTZ.」と広告の一番下に記された文字に、自らの充実と他者の評価への自信が表れている。
正攻法で表現される持ち主の「格」
 2ページ目の全ページ広告は、青年が真正面からこちらを見つめる。見つめ返すこちらの心の中を見通すような鋭い、力のあるまなざしだ。だが、そこに敵意は感じられず、表情を崩せばほほ笑みがこぼれてきそうだ。敏捷で剛毅な肉体と精神。短く刈り込まれた頭髪に、これから事を起こす人の初心が表れる。歌舞伎役者、市川海老蔵だ。情熱を秘めた落ち着きが、全体を覆う。
 ゆったりしたサイズの白いワイシャツの両腕を前で組んでいる。左手首にセイコーウオッチが光沢を帯びてつけられている。時計をはめた手の指は右腕にはさまれている。正対する姿勢は、真剣に何かを語り始めているかのようだ。そして、この男の唯一の飾りのようなセイコーウオッチは、ここから魔法や物語を生み出す秘密の箱のようだ。
 

 広告右下部に「セイコー ブライツ フェニックス」が置かれ、さまざまな機能が搭載された製品の楽しさが文字盤に浮かび上がる。メタリックな銀と黒で構成されたデザインに、三本の朱色の針が走る。おしゃれで暖かみのある色彩感覚だ。
 男の顔の横に朱色の控えめな大きさの文字で、「その一瞬で、どれだけ人の心を動かせるか。」と、コピーが語る。コピーが短いだけに言葉に込めた重さ、強さは伝わる。
 この男もこの時計もパワフルだ。真摯で、迫力がある。舞台の歓声が広告紙面の背後から沸き上がり、この男と時計が似た者同士に見えてくる。
 時計には、持ち主の「格」が表れる。人は、自分の心とセンスに合わせて時計を持つ。「I, BRIGHTZ.」と広告の一番下に記された文字に、自らの力と社会的役割へのプライドが表れている。
 今回のセイコーウオッチの30段は、価値あるものを正面からアピールする正攻法の広告である。無駄のない、簡潔な表現スタイルが、力強さを生み出した。

(元電通総研顧問)

COMMENT
セイコーウオッチ
ターゲットの心を的確にとらえる手法
 今回の広告は、新シリーズ「ブライツ フェニックス」の発売日にあたり、登場感を盛り上げることと、早期にブランド認知を高めることが目的でした。ダルビッシュ有投手と市川海老蔵さんの登場により、20〜30代の団塊ジュニアの男性に広く共感してもらうことを狙いました。常に向上心を持って、世界を視野に活躍するお二人は、ブランド・メッセージである「Japan Pride」=「日本にもいいものがあること」をアピールし、ターゲット層を力づけるには最適だったと思います。写真は意志をもった表情と目線に重点を置き、コピーもお二人の言葉をベースに力強さとリアリティーを表現しました。10万円後半から30万円と高額な商品にもかかわらず、今回は掲載直後から販売店に「新聞を見た」とお客様が来店し、大きな手ごたえを感じています。今後は、さらにターゲットの心に深くささる手法を考えています。(広報宣伝部 岡野浩幸氏)
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