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ロングセラー商品の戦略を聞く!

Vol.10 明治「明治ブルガリアヨーグルト」

2012/02/17

 

金森 努のロングセラー商品の戦略を聞く! Vol.10 明治「明治ブルガリアヨーグルト」

明治
「明治ブルガリアヨーグルト」

 ブルガリアで育まれてきた伝統のヨーグルトを1971年に日本で初めて発売。市場にはプレーンヨーグルトというカテゴリーがまだなく、消費者の「すっぱい」「甘くない」という反応からスタートした「明治ブルガリアヨーグルト」は、「ヨーグルトの正統」というポジショニングを維持しながらシェアを拡大。日本の食文化に大きな影響をもたらしました。乳製品ユニット 市乳事業本部 ヨーグルトマーケティング部 マーケティング1グループ長の樋口靖夫氏に聞きました。

乳製品ユニット 市乳事業本部
ヨーグルトマーケティング部
マーケティング1グループ長
樋口靖夫氏

1993年入社。現場での営業担当を経て、本社で商品開発からマーケティング全般を担当、現在はヨーグルトのマーケティング業務を行っている。

開発の契機は大阪万博の「ブルガリア館」

金森氏 商品誕生の経緯についてお聞かせください。発売開始当初は「明治プレーンヨーグルト」という商品名で、容器も今と違って牛乳パック型だったとか。いずれにしても、プレーンヨーグルトの市場がなかった時代だったのではないでしょうか?

樋口氏 ヨーグルトはありましたが、甘みや寒天で加工され、おやつとして食されていました。プリンやゼリーといったデザートのカテゴリーに属する商品だったのです。当社がプレーンヨーグルトの製造に踏み切る一つの契機が、70年の大阪万博でした。それまでプレーンヨーグルトの存在は知っていたものの、「すっぱ過ぎて売れない」と判断していました。しかし当時の経営陣は、「ブルガリア館」で紹介されたプレーンヨーグルトに改めて着目。ノーベル生理学・医学賞を受賞したロシアの微生物学者、イリア・メチニコフ博士の「ヨーグルトに含まれる乳酸菌が長寿に有用である」との学説にも励まされ、「本場の本物のヨーグルトをつくるべきだ。健康にいい乳酸菌製品の価値は日本人にも受け入れられるはず」と決意しました。

金森氏 発売後、人々の反響はいかがでしたか?

樋口氏 実は、1日数百個売れるかどうかというスタートでした。それどころか、「風味が変だ」「甘くないので不良品に違いない」といったお問い合わせが相次ぎ、当時の担当社員はその対応に追われる毎日だったそうです。

金森氏 はじめは砂糖の添付もしていなかったんですね?

樋口氏 そうなんです。お問い合わせを受け、紙パックの表面に砂糖を添付して売ることにしました。ジャムと混ぜるなど、食べ方の提案もしっかりやらなければダメだということで、コミュニケーションにも力を入れていきました。

金森氏 当初の販売チャネルは?

樋口氏 今のように大型スーパーが多くなかった時代で、老舗スーパーから町の小さな食料品店まで、きめ細かく展開しました。

金森氏 その後、ブルガリアの国名使用許可を得て73年に「明治ブルガリアヨーグルト」に商品名を変更されましたね。

樋口氏 ヨーグルトは、乳酸菌の生息に適した土地であるブルガリア、トルコ、ギリシャといった国々の伝統食品ですが、中でもブルガリアのヨーグルト文化はヨーロッパでよく知られ、メチニコフ博士が研究を深めた国でもありました。「聖地」の名前を冠したわけです。

朝に食べる習慣が定着し、需要が拡大

金森氏 その後の需要の拡大は、やはり「食べ方提案」が効いたのでしょうか?

樋口氏 それもありますし、81年に容器の形状を「フルオープンタイプ」にリニューアルしたことも大きかったと思います。今ではおなじみですが、スプーンですくいやすく、内ブタと外ブタの間に砂糖を収納できる形状は、当時革新的でした。

金森氏 他社がまねをすることも予想されたと思いますが、それについてはどういう考え方だったのでしょう?

樋口氏 常に一歩先を行くというポリシーでしたし、とにかく市場が小さかったので、ヨーグルト市場全体が大きくなればいい、という考えでした。デザートのカテゴリーではなく、独立したカテゴリーをつくっていくことを目標としていました。

金森氏

金森氏 実際にそうなりましたね。

樋口氏 はい。売り場も独立したコーナーを獲得できるようになりました。

金森氏 ヨーグルトを料理に使う発想も、この商品発だったのではないでしょうか?

樋口氏 そうですね。「いかに多くの人に食べていただくか」「いかに一人の人に多く食べていただくか」という2点が今も変わらない目標なのですが、最初に成功したのは前者のほうで、朝食の一品にヨーグルトを加えることをお勧めしていく中で、その習慣が日本の家庭にだんだんと定着していきました。現在も朝に食べるという人が圧倒的多数です。料理活用の提案は、主に後者を目的としてきました。

金森氏 私も毎朝ヨーグルトを食べています。プレーンヨーグルトは、日本の食文化を変えた商品の一つと言っていいのではないでしょうか。習慣化に成功したのですから。全チャネルで販売し、容器に創意工夫を加え、食べ方を提案し……、品質改良についてはいかがですか?

樋口氏 折々で行っています。まず、味については、当初と比べて酸味が減っています。そもそもブルガリアで一般的に食べられているヨーグルトは酸味が強く、伝承の味に近い当社製品は、他社製品よりも「ちょっとすっぱいヨーグルト」という位置づけです。そのポジショニングは守りつつ、お客様に好まれる酸味に調整してきました。また、乳酸菌も変えています。84年に従来のブルガリア菌・サーモフィラス菌に加え、「LB51菌」を使用し、「明治ブルガリアヨーグルトLB51」として発売していましたが、93年に「ラクトバチルス・ブルガリカス2038株」と「ストレプトコッカス・サーモフィラス1131株」に変更し、末尾をとった「明治ブルガリアヨーグルトLB81」にリニューアル。96年にはヨーグルト製品初の特定保健用食品に認定されました。

金森氏 ヨーグルトの味は乳酸菌で決まるんですか?

樋口氏 それがすべてというわけではありませんが、7、8割方は乳酸菌に左右されると思います。

 

 

 

 

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