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タイにおける携帯電話の普及状況と所得別のプロモーション(後編)

2010年06月24日

 前回、タイにおけるスマートフォンの増加について言及したが、首都バンコクで働く大卒サラリーマンの平均初任給が1万5千~2万バーツ(約4万5千~6万円)と言われているにもかかわらず、日本円で約7万円前後するiPhoneやBlackBerryを買う購買力があるのか、という疑問が起こるだろう。

 実は、タイには法律上、固定資産税と相続税が無いため、所得が低くとも、資産の蓄えが潤沢にある家庭が多いのである。また、クレジットカードによる分割支払い(1回5千円程度)で購入する場合が多いということも挙げられる。なぜそこまで無理して購入するかというと、携帯電話はファッションブランドであり、高級な携帯を持っていることが、一種のステータスとしてとらえられているからだ。

 さらに、購入チャネルについては、タイ最大手の携帯会社AISや、衛星放送、インターネット回線も含めて最近急上昇中のTrue Moveといったキャリアの店舗も多いが、日本でいわゆる「白ロム」と言われる、SIMカードが入っていない状態の電話をキャリアの店舗以外の小売店で買うことが非常に多いのも特徴だ。キャリアの店舗で購入するよりも、2割程度安いことが多い。

 その代表である、MBK(マーブンクロン)というショッピングセンターがある。BTS(高架鉄道)のナショナルスタジアム駅近く、日系デパート「東急」の横にある、大衆向けの百貨店である。MBKの4階に行くと、SIMロックを解除済み(どのキャリアのSIMでも、差せばすぐに使用できる状態)の携帯電話が、数十店舗に何千個も並べられており、圧倒させられる。

 そこで目につくのはNOKIAを代表とするフィンランド勢と、LG電子、SAMSUNGなどの韓国勢である。韓国メーカーは特に目立ち、MBKに限らず、LGやSAMSUNGの広告を見かけることが非常に多い。日系の携帯電話の状況はガラパゴス化と言われることが多いように、海外では日本メーカーの携帯電話を使用している現地人をほとんど見たことがない。日本人としては、先般総務省がSIMロック解除の法制化に向けて動き出したことを皮切りに、日系端末メーカーにも、海外進出を加速して欲しいと考えている。現地ユーザーが高機能を欲しているかどうかにもかかわってくるとはいえ、世界と比較しても最高レベルの技術を、自国内市場だけで収めていることは、外から見てももったいないと感じる。

 さて、こうした携帯電話の普及状況をマーケティングの視点で見ると、携帯電話を利用していかに新興諸国のユーザーにアプローチするかを考える必要が出てくる。ターゲットの分析には性別や年齢層はもちろん、新興諸国では所得差という点が非常にクローズアップされてくる。なぜなら各商材のターゲットによって、利用しているデバイスのクオリティーがまったく変わってくるからだ。

 結論を先にお伝えすると、2008年におけるタイのPC普及率が28.2%であるのに対し、携帯電話の普及率は52.8%で、高・中所得者層にはPCやリッチ携帯(スマートフォン)への対応、低所得者層にはシンプルなモバイルサイトでの対応が必要となってくると考えられる。

 仮に2万バーツ(約6万円)以上の所得のユーザーがターゲットなのであれば、例えばiPhoneのリッチコンテンツに力を入れてプロモーションをかけるというのもひとつの手であろう。携帯にFacebookやツイッターのアプリをインストールしているユーザーも多いので、それぞれアカウントを立ち上げて連携させるということも考えられ、既に現地の銀行やクレジット会社、航空会社などの企業では積極的に発信しているところが多い。

 ただ、コモディティ商品を扱うような企業では、リッチではない携帯ユーザーにも対応する必要がある。その場合、SMSでのダイレクトメッセージで広告を配信したり、電話会社から短縮番号を取得し、プロモーションの際に短縮番号を告知することで、ユーザーとつながりやすくしたりするといった施策がよく見られるが、まだ他にも多くの方法がありそうだ。今後は、平均的な携帯電話のクオリティーが向上するにつれ、ますます新しい手法が開発され、選択肢も増えてくるだろう。さらに、モバイルでの検索についても、携帯のリッチ化にともない、増加していくことが予想される。

 タイにおける携帯電話でのプロモーションは、新しい分野ではあるが、トライアンドエラーを繰り返しながら、成功例を積み上げていくことが重要であろう。また、タイでの成功実績は他のASEAN諸国にも適用できそうだ。他諸国の携帯電話市場もタイと環境が似ており、ASEAN域内でタイ同様のブームが起こる可能性を秘めている。

 タイの市場で成功することは、今後のASEAN進出の足がかりとしても有益だ。グローバルな展開を考えている企業の方には、早めの対策をおすすめしたい。

(AUN Thai Laboratories Co.,Ltd. チームマネージャー 島田 裕一)

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