「ジェンダー」とは、社会が作りあげた人為的な性差で、「男はこうあるべきだ」「女はこうあるべきだ」といった性別による役割分担のことをいいます。社会にはまだまだ男性と女性の不平等な関係や役割分担の偏りが根強く残っています。広告表現でも、ジェンダーの視点から見ていかがなものかと思う例が時々あります。
1年ほど前のことになりますが、朝日新聞掲載の、ある映画広告の原稿に、「18歳未満の方は、上映時間が23時を過ぎる回の入場は、父兄同伴でも出来ません」とありました。名古屋本社の審査担当者が「父兄」という言葉に疑問を持ち、「保護者」に変更するよう広告会社にお願いし、修正してもらったことがあります。広告掲載基準上の話とは違うのですが、ジェンダーに関する表現について、本社では「男女のいずれかを排除したり、いずれかに偏ったりしない」として「父兄」は「父母、保護者」とする、としています。
私が子どものころは「父兄」が当たり前で、誰も疑問に思いませんでした。「父兄会のお知らせプリントを配ります。お母さんに必ず渡すように」という先生の言葉がいまだに頭に残っています。「父兄会」は、子どもの保護者として父と兄が代表していた時代の名残です。今は「保護者会」「父母会」などといっているようです。
広告に見られるジェンダー上問題と思われる例としては、女性の体形などについての、男の願望に基づく露骨な表現があります。また安易に使われがちなのが「処女」です。「処女作」「処女航海」のように「処女」を比喩(ひゆ)的に用いている表現です。単に「最初の」という意味で使うなら「第一作の」「初の」とすべきだと思います。こうした表現については、場合によってはジェンダーの考えを伝えて改善をお願いすることがあります。特に本社の「企画・制作」広告では気を配ってもらっています。
考えのポイントとしては、「男女のいずれかを排除したり、いずれかに偏ったりしない」ほか、「男女間に優劣・上下関係があるかのような扱いをしない」「性別によって役割・職業を固定しない」などが挙げられます。結婚・出産後も働き続ける女性が増えてきたにもかかわらず、「役割固定」の典型例として「外で働くのは男性、家事や育児・介護をするのは女性」というのがあります。このような古い考えに基づいて広告を作ると、読者からの反発を覚悟しなくてはなりません。












