山口県光市母子殺害事件の被告の元少年(28)=死刑判決を受け上告中=が実名で登場するルポルタージュ本が10月、一部の書店で販売されました。事件時に被告は18歳だったため、実名での刊行は少年法に抵触する恐れがあり話題になっています。少年法は実名や顔写真、住所など、容疑者である本人を推定できるような事実を含んだ報道を禁止しています。元少年の弁護団は、出版差し止めの仮処分を広島地裁に申請しました。
朝日新聞はじめ各紙は、この母子殺害事件の元少年を匿名にして報道しています。今回の「実名本」刊行について、各紙の報道によると、著者は「被告の元少年と25回の接見を重ね、人間として描きたいと考えた。匿名では人格の理解が妨げられ、モンスターのようなイメージが膨らむ」「匿名でもよいのではと思われるかもしれないが、私が会った人間の存在を感じてもらうには、名前は重要な要素」と説明しています。父親や元同級生らにも詳しく取材し「国民が元少年の実像をきちんととらえられていないまま、彼が死刑になることが本当に社会にとって良いことか」と問題提起したかったそうです。
著者のこうした考えはともかく、仮にこの本の広告が申し込まれ、広告に実名が書かれていた場合、審査としては匿名にするようお願いすることになります。
3年前、山口県の工業高等専門学校の女子学生が、19歳の男子学生に殺された事件がありました。山口県警は容疑者の学生が未成年であることから、少年法の規定によって実名発表はせずに全国指名手配しました。各紙の報道も匿名です。
後日、ある週刊誌がこの事件を取材し、記事の中でこの男子学生の実名と顔写真を載せました。出稿された週刊誌広告の見出しには実名も顔写真もなかったため、そのまま掲載しました。
重大事件を起こした少年の人権をどう考えるか。簡単に解答の出ない問題です。ちなみに警察庁は2003年、少年犯罪の凶悪化と低年齢化を受けて、容疑者が少年である場合でも、凶悪で再び犯罪を行う恐れが高く、捜査上ほかに取るべき方法がない時は、氏名や顔写真を公開して捜査することができるとの通達を出しました。基本理念は「少年自身の保護と社会的利益との均衡などを総合的に勘案する」としています。この通達に対し、日本弁護士連合会は「少年法及び子どもの権利条約をはじめとする国際人権規約に反するものといわざるを得ない」と反対声明を出しています。












