既存事業と新規事業の両輪で「感染症トータルケアカンパニー」としての使命を果たしていく

 主力の虫ケア用品をはじめ、入浴剤、オーラルケア用品、ペット用品、園芸用品などの生活用品を展開するアース製薬。好調の既存事業に加え、近年は日本発の酸化制御技術MA-Tシステム®(以下、MA-T)の普及と事業化に力を入れている。代表取締役社長CEO 兼 グループ各社取締役会長の川端克宜氏に聞いた。

――2021年12月期の連結決算は、売上高2000億円超、営業利益100億円超。純利益は前期比2倍の70億円超で過去最高益を達成しました。好調の要因について。

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 日本の住環境やその周辺における虫の絶対数は、暮らし方の変化によって激減しています。しかし虫ケア用品のマーケットは拡大し続けています。人々の虫に対する感度がより敏感になっているのだと思います。当社は創業以来、商品を通してお客様の虫に関するお悩みを解決してきました。近年は「感染症トータルケアカンパニー」を掲げて活動しています。虫媒介感染症を予防する商品を提案する企業として、「感染症に立ち向かう」という考え方に立ち返り、より広いフィールドでその使命を果たしていきたいと考えています。

――成長分野や注力分野について。

 虫ケア用品に並ぶ収益の柱として、日用品のマーケットを育ててきました。さらに海外にもマーケットを広げ、特にアジア諸国での収益基盤の拡大に取り組んでいます。また、新型コロナウイルス感染症を背景として、アースグループが得意とする「除菌」「消臭」といった分野において新たな取り組みを始めています。きっかけとなったのは、日本発の酸化制御技術「MA-T」です。この技術で作った除菌剤は、ウイルスや菌がある時だけ反応して不活性化させることができます。99.9%が水でできているので口に触れるものにも安心して使え、効果の持続性も高く、医療・ライフサイエンス分野、食品衛生分野、農薬・林業分野、エネルギー分野など広範に応用可能です。

――MA-T関連の今後の展望は。

 当グループとしては、感染制御分野において貢献していきたいと考えています。除菌剤としての医療機関での活用や、市販の除菌消臭製品や化粧品としての普及を目指しています。また、当社はMA-Tの製造権を有しています。MA-Tの普及が進めば、当社のポートフォリオを変えるほどのインパクトにもなる可能性があります。業績好調に甘んじることなく、10年先、20年先を見据えて新事業にチャレンジしていきたいと思っています。2020年には、MA-Tの開発に長年携わってきたエースネット、MA-Tのメカニズムを解明した大阪大学発のスタートアップ・ドットアクアと3社間包括業務提携を締結。MA-Tの社会実装を加速させるべく産官学連携やオープンイノベーションを推進しています。

――2020年設立の日本MA-T工業会の代表理事に就任されました。

 日本MA-T工業会は、MA-Tの普及と価値向上、MA-T活用のプラットフォームの構築、オープンイノベーションの推進による科学技術の向上、MA-T産業の創造を目指す組織です。産業界のMA-Tに対する期待は大きく、現在、各業界トップ企業含む85社(2022年5月現在)が参画しています。

――SDGsの取り組みについて。

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 社名のアース(EARTH=地球)に象徴されるように、当社は世界でSDGsが提唱される以前から、事業そのものを通じて社会課題の解決を目指すCSV経営を行ってきました。もちろん生産プロセスにおけるCO2削減や、環境に配慮した商品パッケージの採用なども積極的に進めています。SDGsは2030年までの指針ですが、実際は永遠の課題です。そうした思いもあり、昨年、持続可能な成長を実現するための世界的な枠組みであるUNGC(国連グローバル・コンパクト)に署名しました。今後も「生命(いのち)と暮らしに寄り添い、地球との共生を実現する。」という経営理念に基づく事業を進めていきます。

――リーダーを務める上で、糧になっている職務経験は。

 35歳の時に広島支店長になりました。幹部社員はすべて年上でしたが、やりにくさはありませんでした。年下の支店長のもとで働く人たちの方がよほどやりにくいはずですから、「ここがわからんのです。話を聞いてくれませんか?」と正直に何でも聞いて、チームワークを築いていきました。そのスタンスは、今も変わっていません。

――リーダーとしての信条は。

 コミュニケーションを密にとること。自分の思いがきちんと伝わるまで、相手が“腹落ち”するまで、徹底的に話すようにしています。「言ったはず」「渡したはず」はコミュニケーションエラーのもとなので、何回も同じことを言います。しつこいほどに(笑)。それと、何か決裁した時には、その理由について必ず説明するようにしています。

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――愛読書は。

 組織論として参考にしているのは、『組織の盛衰 何が企業の命運を決めるのか』や『孫子に経営を読む』です。ジェームズ・アレンの『原因と結果の法則』は、自分が日々の経験の中で感じていたことを改めて確認できた本です。本書を読んでから「強く想うことは実現する」を座右の銘にしています。

川端克宜(かわばた・かつのり)

アース製薬 代表取締役社長CEO 兼 グループ各社取締役会長


1971年兵庫県生まれ。94年近畿大学商経学部(現・経営学部)卒。同年アース製薬入社。2006年広島支店長。11年役員待遇大阪支店長。13年取締役ガーデニング戦略本部長。14年3月から代表取締役社長。17年1月よりアースグループCEOも兼任。21年3月代表取締役社長CEO兼グループ各社取締役会長。

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(全国版掲載。各本社版で、日付が異なる場合があります)

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