市場変化による戦略転換時に新聞広告の効果を実証

◆ 量販店からカメラ専門店への転換

 2009年10月、9年ぶりに全面広告を掲載した「カメラのナニワ」ことナニワ商会。大規模量販店の進出により、5〜6年前から戦略転換を行ってきた。それは家電量販店ではなく「カメラの専門店」としてより専門性を打ち出していくことである。そのために品ぞろえを充実させるだけではなく、店員の知識やサービスを向上させ、撮影ツアーや写真教室も開催。さらに2007年には心斎橋本店で内外装を全面リニューアルした。大型量販店で多用されている蛍光灯はなるべく使用せず、シックでモダンな雰囲気に統一し、視覚的にも専門店としてのイメージを打ち出している。

 同社が一番期待しているのは中古カメラ市場だ。年々デジタル化が進むカメラ業界だが、フィルムが主力だった時代の中古品のニーズはかえって高まっているようである。また、最近ではデジタルカメラの中古品も徐々に増え始め、初めてのカメラはまず中古品から、というケースも少なくないという。

 同社の店舗開発室及び広告宣伝室の運営統括を担う西崎氏によると、中古カメラの品ぞろえは「カメラのナニワ」が西日本一を誇るとのこと。通常なら梅田までしか出てこない府北部や阪神間のお客様でも、中古カメラを求めて心斎橋まで来店してもらえるのではないか、との期待を込めて今回の新聞出稿を決めた。

◆ 新聞広告が新規顧客開拓と過去の顧客を呼び戻すきっかけに

 「何を見て来店されたかのアンケートを店頭で取ったのですが、朝日新聞を見て来たという人が本当に多かったんですよ」と西崎氏。9年ぶりの出稿ということもあって、「えらい店の雰囲気変わったな」「まだ、あったんやね」などと過去の顧客層を呼び戻すことができた。加えて、「亡くなった主人がずっと集めていたカメラを売りたいんだけど…」と年配の女性からの問い合わせもあるなど、これまで実施していた顧客へのDMだけでは拾えなかった層からの反響も予想以上に大きかったようだ。

 広告モニター調査の結果によると、「カメラのナニワを利用しますか」という設問に対して、年に数回以上利用すると答えた人は4.6%だったのに対し、「以前利用したことはある」「利用したことはないが知っている」と答えた人はそれぞれ4割以上になり、認知や過去の利用経験はあるものの、現在は利用していない人が多いことがわかった。

 そして、「以前利用したことはある」人のうち、この広告を見てお店に行ってみたくなる人は45.8%で、「利用したことはないが知っている」人では32.7%でした。過去の顧客を呼び戻すきっかけになったことがうかがわれる。

 また自由意見では、「品ぞろえが豊富な店というイメージが一層増した」「他の量販店よりもカメラに重点を置いていることが感じられた」といった声に加え、「安売りのイメージがあったが、それ以上に品数の充実や下取りの利用など今回の広告で知らなかったことがわかった」といったものなど、カメラの専門店であることと中古カメラの取り扱いを明確に打ち出したことが、新規顧客の開拓だけでなく、過去の顧客を呼び戻すきっかけになったことがここでも確認できた。

 西梅田店では今回の広告掲載後の反響の高さから、これまで定休日としていた日曜日も営業をするようになった。同社本店での販促会議では、「今回の新聞広告は期待以上の反響があった」「これからも新聞いけるんちゃうの」「次は商品だけじゃなく、より専門店としてアピールできるように、写真教室や撮影会などサービスの案内ももっと載せてみたら」といった、新聞広告の価値を見直して次回出稿への期待を込める声が出てきたとのことである。

◆ まとめ

 専門店へと軸足を移してからは、リーチの広い新聞よりも、カメラ愛好家へのDMによる情報発信が有効だと考えてきた同社。新規顧客の掘り起こしという点ではなかなか良策を見出せずにいた。しかし、今回の数年ぶりの新聞広告で、過去の顧客の呼び戻しも含め、潜在顧客を掘り起こすことができた。あらたな戦略市場としている中古カメラのユーザーが朝日新聞読者と親和性があったことも今回の成果につながった大きな要因と思われる。

<広告モニター調査(大阪本社版)調査概要>

【調査地域】 大阪市と中心とした半径30キロ圏内と神戸市

【調査対象者】  調査対象地域に居住し、朝日新聞を購読する15~69歳の男女個人

【抽出方法】 確率比例2段抽出(エリアサンプリング)

【調査方法】 パソコンを利用したオンラインサーベイ(モニターパネル調査)

【標本サイズ】 調査ごとに約1,500人のモニターから朝日新聞読者の性・年齢比に応じて300人を抽出

【回収数(率)】 240(80.0%)

【調査実施日】 2009年10月3日

【調査企画・設計】 朝日新聞大阪本社広告局

【調査機関・レターヘッド】 ハイパーリサーチ(株)

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