メインユーザーの女性ターゲットにおいしく安全な水をアピール

 ドイツの浄水器メーカー、ブリタは、朝日新聞で3回シリーズの広告を展開しました。商品のメインユーザーである女性のニーズに対し、新聞広告や会員サイトでのクチコミなど、多様な手法で洗練されたイメージの拡散を促しています。

ヨーロッパ由来の洗練されたイメージを打ち出す

名嘉眞隼人氏 名嘉眞隼人氏

 ブリタは、来年創業50周年を迎えるドイツの老舗浄水器メーカー。マーケティング部マネージャーの名嘉眞隼人氏は、「ペットボトルのミネラルウォーターよりも経済的でゴミが出ないことに加え、東日本大震災以降は水の安全性に対する社会的な関心の高まりもあり、子どものいる主婦層を中心に支持が広がっています」と話す。

 支持層の8割は女性。売れ筋は、冷蔵庫で冷やせるコンパクトサイズのポット型浄水器。日本以外のアジアやヨーロッパでは、水を冷やして飲む習慣があまりないそうで、日本向けのモデルと言える。「デザインに対する好みも日本と海外ではずいぶん違うので、日本のニーズに合った商品をドイツ本社と協働で開発しています。その一方で、近年は若い世代へのブランド訴求に力を入れており、本国で人気の色やデザインを日本市場に投入するなど、ヨーロッパ由来の洗練されたイメージを打ち出しています」

 認知向上においては、試飲イベントのような体験の場を提供している他、主婦やOLに人気の料理教室「ABCクッキングスタジオ」に製品を提供し、コラボ企画も行っている。今年から、料理レシピのコミュニティーウェブサイト「クックパッド」で「BRITA Kitchen」というコーナーも始めた。「料理用やコーヒー用など、飲み水以外の活用が広がれば、浄水カートリッジの拡販につながり、ビジネス的なメリットは大きい」と、名嘉眞氏は話す。

 「水の安全性やおいしさを裏付けるスペックを確認してから買うユーザーが多いので、自社ウェブサイトや店頭を通じた機能訴求も丁寧に行っています」

会員サイトなどを設置し、クチコミの拡散を促す

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2015年5月14日付 朝刊 2015年5月14日付 朝刊

 同社は、10年近く前からブランド認知に関する消費者調査を実施している。その中で重視しているのが、女性の「クチコミ力」だ。「最近はSNSの影響力が増しているので、拡散を促すために、公式フェイスブックやユーチューブサイト、さらに『ブリタクラブ』という会員サイトも展開しています」。ブリタクラブには、「みんなのユーザーストーリー」というユーザーの投稿ページを設置、ブリタの水を飲んだ人々の声を紹介している。「サイトの閲覧者や投稿者も多くが女性で、中には60代以上の方も。感想には、『親子3代にわたってブリタを愛用しています』といった心温まるストーリーも多く、こうした資産をコミュニケーションに役立てています」と話す。

 マスメディアの活用も長く継続している。朝日新聞への広告掲載については、次のように語る。「新聞は認知メディアと言われますが、当社では販促メディアの役割も期待しています。中でも朝日新聞の読者層は、エコや食への関心が高いことや、所得、ライフスタイルなどが当社の購買層と重なるため、長く活用しています」。とりわけ、有名シェフの料理レシピや人気タレントのコラムを連載する広告特集「ボン マルシェ」は、多くの女性読者を持つ。ここで展開した全5段広告では、ソムリエの若林英司氏、料理研究家のコウケンテツ氏が登場し、ブリタの水のクリアでピュアな味わい、子どもに飲ませたい安全性、水道水が使える経済性などを、自身の体験をもとに語ってもらった。名嘉眞氏は、「過去に展開した際に大きな反響があったので、今年も飲料の需要が伸びる初夏から夏場にかけて出稿しました。反響は大きく、紙面をきっかけに店頭に足を運ぶ動きも見られました」とその効果を説明する。

 最後に名嘉眞氏は、コミュニケーションにおける今後の課題についても語った。

 「従来のマーケティングでは、F2層、F3層などと年齢別にターゲティングし、メッセージを使い分けることが効果的とされていました。しかし今の時代は、若い人向けのメッセージがアラフォー世代の反響を呼ぶなど、従来のデモグラフィックが必ずしもあてはまらなくなっています。女性たちは年齢別の訴求をむしろ嫌がる傾向にあり、興味や関心にひもづけたコミュニケーションがより重要になっていると思います」

2015年6月13日付 朝刊 2015年6月13日付 朝刊
2015年7月9日付 朝刊 2015年7月9日付 朝刊