ターゲット層の「共感」を起点に広告コミュニケーションを設計

 自宅を担保に資金を借りられる金融商品「リバースモーゲージ」が、脚光を浴びています。同商品のパイオニア・東京スター銀行が扱う「充実人生」は、発売して10周年を迎える今年、新聞を積極的に活用した広告キャンペーンを展開しています。

広告コミュニケーションの流儀を踏まえ、KPIの達成を目標に

満田 寛氏 満田 寛氏

 自宅を活用して豊かな老後を考えよう─と、シニア層に呼びかけた東京スター銀行の全面広告。自宅を担保に融資を受けられる新型リバースモーゲージ「充実人生」は、複数のローンを一つにまとめる「おまとめローン」とともに、同行の主力商品だ。「他行でも同様の商品の取り扱いが始まり、メディアが『リバースモーゲージ』というカテゴリーで取り上げる機会が増えました。それによって、認知度が高まっているようです」と語るのは、マーケティンググループとチャネル推進グループを統括する、満田寛氏。

 同行には、広告コミュニケーションにおける一つの“流儀”がある。問題を提起する「プロブレムセットアップ」と、「ソリューションとしての商品の紹介」、そして問題解決後の「エモーションベネフィット」の3点セットを広告クリエーティブ上で必ず表現することだ。「広告出稿時のKPIは、入口のところでのレスポンス獲得です。広告内でこの3点セットをうまく描き切れば、レスポンスはついてくるのではないでしょうか。ユニークな商品設定で他行と差別化を図っているので、その点も訴求してブランディングに寄与したいと考えています」(満田氏)

「共感」と「強さ」で確実なレスポンスを獲得

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2015年6月16日付 朝刊 2015年6月16日付 朝刊
発売10周年を機にプランディングの要素も取り入れる。

 東京スター銀行が「充実人生」を発売した10年前に比べると、シニア世代の経済状況や心境はずいぶん変わってきたという。

 「昔はカードローンなどの返済に充てるお客様が中心でしたが、最近は定年後も住宅ローンが残っている方や、子孫に資産を残さず自分たちの余生のために楽しんで使おうと考える方が増えています。そうしたニーズの変化を、広告表現にも反映させています」

 そのため「充実人生」の広告では、「リバースモーゲージ」を利用目的に合わせた訴求メッセージにしている。また、デプスインタビューやグループインタビューなどで顧客の生の声を収集し、活用している。「大切なのはターゲット層から『共感』を得ることです。インタビュー時にお客様がぽろっと発した言葉をブラッシュアップして広告のキャッチコピーに使うこともあります。3人ぐらい同じフレーズで回答していると、お客様に共通する心の声かな、と思いますね」

 そして、もう一点重視しているのが言葉の「強さ」だという。「問い合わせの電話をかける、相談会に足を運ぶ、最終的な契約をしていただくなど、お客様の行動を促すためには、それだけお客様の心に突き刺さる『強さ』が必要です。『共感』と『強さ』。この2点によって確実にレスポンスを獲得していけるよう心がけています」

ターゲット層と親和性の高い新聞広告の可能性

 「充実人生」のメインターゲットであるシニア層は、新聞購読率が高い。実際、窓口に新聞広告の切り抜きを手に訪れる人もいるという。ただ、この世代でもインターネットの普及率が高まってきているのも事実だ。

 「それでも、新聞は自分で選択して購読しているメディア。『信頼感』は高い。新聞広告の切り抜きを手に取ってずっと検討できるという『保存性』とともに、特長だと感じています」

 また、新聞読者の方が具体的に商品を検討する割合が比較的高いという。「例えば、インターネット広告は入口のレスポンスは高いが、その後の相談会への申込率が新聞や他の広告より低いという傾向もあります」

 今後ネットの可能性を探りつつ新聞をいかに活用するかが課題だと、長年広告業務に携わってきた満田氏は続ける。「インターネットでレスポンスが測れるようになり、直接効果の高い媒体に偏りやすい傾向はあります。ただ、シニア層に対し媒体の信頼感と共に十分なリーチを持つのは、やはり新聞ではないでしょうか」

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