住宅エコポイント制度の施行で、「エコ内窓」の出荷量が前年比の約4倍に

 新築やリフォームを対象にした住宅エコポイント制度が3月にスタートし、省エネ家電に続く「官製特需」をもたらした。住宅エコポイントの対象商品で好調な売れ行きをみせているエコ内窓「プラマードU」を販売する、YKK AP 事業本部 コミュニケーション部 広告・メディア室室長の森久則氏に聞いた。

 

既存のリフォーム商品が
新制度で脚光を浴びる

YKK AP 森久則氏 YKK AP 森久則氏

――「プラマードU」の特長を聞かせてください。

 これまである窓の内側に、壁を壊すといった大掛かりな工事をすることなく、新たに簡単に内窓を装着し二重窓にできるというリフォーム用商品です。窓と内窓の間に空気の層ができるために高い断熱効果があり、冬場の寒さや結露、夏場の暑さを軽減。防音や防犯にも効果を発揮します。

――ヒットの背景、売り上げ好調の要因は。

 実は「プラマードU」は、リフォーム用として以前からある商品ですが、これほど売り上げを伸ばすことになったのは、やはり住宅エコポイントの後押しが大きいですね。リフォームにおいては「内窓の設置」と、エコポイントの条件がかなり明確だったことも、消費者にとって検討のしやすさにつながったのではないでしょうか。また、家電エコポイント制度の実施後で、エコポイント自体の認知がすでに高かったのも追い風になりました。ある程度の売り上げを見込んでいましたが、4月から6月の出荷量は前年比で約4倍と、予想を超える好調な推移を見せています。長引く不況の影響で、昨年度までの会社の業績は好調とは言えない状況でしたが、「プラマードU」の販売が好調であることも奏功し、業績も持ち直しつつあります。

「プラマードU」 「プラマードU」

――マーケティング戦略、コミュニケーション展開について聞かせてください。

 住宅エコポイントが始まるという情報は昨年からありましたが、具体的な内容や時期はギリギリまでわからなかったため、戦略らしい戦略が立てられなかった、というのが正直なところです。とはいえ、施行に先駆けて2月から広告展開を始めなければならず、本当に超特急で対応した、という感があります。

 コミュニケーションは、新聞、テレビ、ラジオ、雑誌、ウェブと、あらゆるメディアを使って展開しました。一般的にはまだあまり認識されていない「窓のリフォーム」を広く知っていただくことを目的としたコミュニケーションです。住宅エコポイント対象商品であること、断熱効果や防音といった「プラマードU」の性能、簡単施工などを訴求しました。

 これまでにない展開としては、エコポイントのからみで家電量販店という新しい販路ができました。実際に店頭に足を運び、効果を体感していただいたことで、内窓というリフォーム商品の存在にも気づいていただけた。こうした点でも可能性に広がりができたと考えています。まだ新しいチャネルなので模索する部分も多いのですが、今後色々な展開ができるのでは、と期待しています。

 

「健康」を切り口に
窓の機能や役割を解説

2010年3月21日付 朝刊 2010年3月21日付 朝刊

――3月21日には、朝日新聞朝刊に出稿しました。訴求内容や期待したことは。

 「プラマードU」の断熱効果、加えて業界初となる浴室仕様が登場したことを告知するために出稿しました。従来の日本の住宅では、居住空間と浴室やトイレとの温度差が激しいため、急激な温度変化で、高齢者らが脳卒中や心筋梗塞(こうそく)といった血管系の疾患を引き起こすケースが増えています。こうした他の部屋との温度差によって引き起こされる家庭内事故を「ヒートショック」と言いますが、浴室に内窓を取り付けることで、その断熱効果によって室内との温度差を軽減することができます。

 紙面の上段は「『窓』から考える健康生活」と銘打ち、ヒートショックをはじめ、住環境が健康に及ぼす影響について、中部大学の加藤昌志教授に解説していただきました。
この広告は、「営業ツールになる」などと社内からも大きな反響がありました。また、広告の解説を担当していただいた加藤教授に、窓と健康を切り口とした講演をしていただくなど、記事をきっかけとした取り組みも広がっています。「窓と健康」は、今後のコミュニケーションにも大事なテーマだと考えています。

――今後の展望について聞かせてください。

 住宅のリフォーム事業は、悪徳業者などもいて、ネガティブなイメージを持つ消費者も多いのが実情です。そうした要素を払拭(ふっしょく)し、安心感や信頼感を醸成するのも、私たちメーカーの使命だと考えています。そうした考えのもと、当社ではパートナーシップを結ぶ建材流通店とともに全国に展開する窓リフォーム店「MADOショップ」を推し進めています。さらにリフォーム事業に本腰を入れるにあたり、必要に応じて適切なコミュニケーションも展開していく考えです。また、広告でもうたっていますが、当社は「窓を考える会社」です。色々な切り口で窓に関する情報発信をしていければと思っています。