地域賞「ケフィアの市場創造プロジェクト」

 コーカサス地方の伝統的な発酵食品「ケフィア」を、摂りやすい形にして商品化し、日本市場への投入を図ったやずや。その「ケフィアの市場創造プロジェクト」が地域賞に選出された。ケフィアという新ジャンルの商品市場を創造した点や、優れたダイレクトマーケティングのプログラムなどが高い評価を獲得。通販コミュニケーションを超えた、綿密なカテゴリー創造コミュニケーション戦略について、取締役企画部長の山下眞理氏と経営戦略室 室長の松尾和彦氏に聞いた。

やずやの千年ケフィア やずやの千年ケフィア

――「市場創造プロジェクト」の対象となったケフィアとは、どんな商品ですか。
 やずやでは、これまでにも「二年醤油」や「熟成やずやの香醋(こうず)」などの発酵食品を商品化してきましたが、そうしたものを勉強するうちに乳酸菌に興味を抱くようになりました。「できれば食品で何とかしたい」という思いもあり、いろいろな乳酸飲料を調べているうちに出合ったのが、ケフィアです。
 発酵食品で、乳酸菌と酵母を共生発酵したものはたくさんありますが、ケフィアはそのバランスが非常に優れている食品です。毎日続けていただくために、飲みやすいカプセルにしたい、しかも100%ケフィアを入れたい。そうした思いから長い年月をかけてようやく開発したのが「やずやの千年ケフィア」です。それだけに今回の受賞はうれしかったですね。(山下氏)

――マーケティング戦略の考え方や、実際の取り組みについて教えてください。
 ケフィアの本場であるロシアにCMの撮影で行くまでは、正直「そんなに飲まれているのかな」という感じがありました。すると、牛乳やヨーグルトと同じように、空港の売店でもスーパーでもどこでも売っている。いろんな種類のケフィアがあって、日常的な飲料として飲まれているんです。ケフィアは、本当にロシアの生活に根付いているとわかり自信を持ちました。まずは、日本の人たちにケフィアを知ってもらうところから始めようと。
 一昨年、CMで新発売のキャンペーンを行いましたが、その第1作がケフィア発祥のストーリーを語ったものでした。さらに、ケフィアがロシアの食文化として定着していることをCMやウェブを中心に表現し、ロシアの食文化イコール、ケフィアの世界を構築していきました。テレビやウェブで、まずケフィアの認知を広めたうえで、レスポンス広告を打ったり、新聞広告でしっかりと「ケフィアとは何か」を訴求したり、メディアの住み分けというかバランスを考えて展開していきました。
 ケフィアはまったく新しい商品なので、新規顧客の獲得が大きな狙いでしたが、私どもには既存顧客の方が大勢いますので、そうした方にもDMでご案内しました。CMが流れているタイミングと合わせると反応がよく、今後もそのあたりを意識して、インターネットやダイレクトマーケティングの部署と一緒に、大きなキャンペーンの枠組みをつくっていこうと考えています。(松尾氏)

ドリンクタイプは、やずや初のドリンク商品 ドリンクタイプは、やずや初のドリンク商品

――ウェブを使ったマーケティングや、従来にない新しい試みもされていますが。
 ウェブでのマーケティングは、基本的には新規顧客やレスポンスの獲得が目的です。ですから、CMなどの反応を見ながら、ウェブ上でいろいろな試みをしています。無料モニターを募集したり、ブロガーの方にケフィア体験の感想を語っていただいたり、クチコミによる広がりも期待しました。
 弊社のお客さまの平均年齢は50代前後です。当初はケフィアの購買層も50~60代の熟年層が中心になると予想していましたが、意外にインターネットでの反応がよかったですね。新発売キャンペーンのときに使用した「ヨーグルト。いいえ、ケフィアです。」というキャッチコピーもネット上で大きな反響がありました。
 カプセルタイプの商品を発売した翌年、ドリンクタイプの商品を発売しましたが、やずや初のドリンク商品ということで、他社とのコラボも積極的に行いました。東京、大阪、名古屋、福岡、広島といった主要エリアでの、カフェキャンペーンです。原料にケフィアを使用した各店独自のメニューを作ってもらうことで、テレビ局にも取材され、話題になりました。こうしたカフェのイベント情報は、ウェブとも連動性をもたせています。
 また、赤坂サカスの夏祭りイベントなどにも出店し、3日間で1万人以上の方に試飲いただきました。普通の甘いヨーグルトと違って酸味が強いので、健康によさそうというイメージを持っていただいたようです。現在は、カプセルをご利用いただく方のほうが多いのですが、ドリンクもうまくいくのでは、という手応えを感じました。(松尾氏) 

2007年 8/29 朝刊 大阪本社版 2007年 8/29 朝刊 大阪本社版

――一連のキャンペーンの中で、新聞広告の位置づけはどうお考えでしたか。
 ケフィアを発売した一昨年には、「ケフィアが出ました」ということをふまえ、全15段広告を出しました。新発売のインパクトはあったのではと思います。
 ただ、まだまだ新聞の可能性を生かしきれていないとも感じています。これまでは新聞の社会性という機能を考え、商品のこと、やずやという企業のことをしっかりと伝えていくような広告でしたが、今後は、今までとは違った形での新聞広告の活用法も模索してみたいですね。(松尾氏)

――ケフィア市場の今後の課題や目標は?
 ケフィアは真新しい商品ということで、新発売キャンペーンでのお客さまの反応は非常によかった。そこから継続していただいて定着していくというのが、次の課題です。新発売キャンペーン終了後の調査では、ケフィア自体を聞いたことがあるという人が90%以上でした。しかし、「名前は知っているけど、どんなものか知らない」という人がほとんどだと思います。「飲んだことがある」という人をどれだけ増やしていくかが、次のステップだと思います。もちろん、それは1年2年の話ではなく、長い期間をかけてやっていくことになるでしょう。(松尾氏)