読者個々人の利益拡大につながるテーマ設定がカギ

 経済誌の分野でリーダー的な役割を長年にわたり果たしているダイヤモンド社の『週刊ダイヤモンド』。同誌編集部編集長の鎌塚正良氏に、読者を引きつけるための取り組みや最近の読者の傾向、広告の役割についてうかがった。

── 誌面構成はどのように決められるのでしょうか。

鎌塚正良氏 鎌塚正良氏

 基本的に合議制で、特集に関しては毎週水曜日に編集会議を行い、編集長と副編集長がネタ出しをして、大体1カ月先の内容まで決めていきます。そして決定したテーマに基づき、1カ月かけて取材を行い、50~60ページの記事を構成していきます。

── どのような特集が読者にアピールしますか。

 最近は特定の産業や業界、企業のことを取り上げる号に加えて、給料の比較、介護、保険の話など、かつてなら特集企画になり得なかったようなテーマへの人気が高まっています。例えば「年収が20倍増えた仕事術『グーグル化』知的生産革命」という特集は反響が大きかったですね。「後悔しない『老後』」も、コア読者ではなかった女性からの手応えを感じました。仕事でも生活でも個人の利益拡大にいかにつながるかという視点から誌面を組んでいく必要があると考えています。

 また最近は、本来経済誌として一番強い、経済に関する特集号も好調です。例えばゼネコン・不動産業界の破たんを取り上げた号は、近年でトップの売り上げを記録し、1週間で2回も増刷をかけました。また、倒産危険度ランキングなどにも大きな反響があります。これは米国発の金融危機で、いろいろな方が経済に興味を持ち始め、読者層に広がりが出てきている証拠だと思います。

── 様々なメディアがある中で、存在感を示すには。

 インターネットのスピード感からすると、経済誌は情報が遅いと見られてしまいます。単純に経済ニュースを追いかけているだけではだめですし、読者も当誌に速報性を強く求めているわけではないでしょう。しかし、作り手側の我々が、情報の賞味期限が1週間だと思っていても、読者にいい特集だと判断されれば、それ以上長い期間にわたって売れ続けることもあるのです。そこで、『週刊ダイヤモンド』を新書のビジュアル版に近い存在だと考え、当社のウェブサイト「ダイヤモンドオンライン」とも連携しながら、深くて詳しい情報提供を心がけています。

── 広告展開についてお聞かせ下さい。

 経済紙への出稿に加えて、テーマが広がってきている分、一般紙の朝日新聞も使用しています。新聞広告と電車の中づり広告を出稿していますが、毎号の特集テーマをいかに読者にアピールできるかがカギなので、広告には大きな役割を期待しています。

2/4 朝刊
『週刊ダイヤモンド』 2008年 2/9号