洞爺湖サミットのタイミングで新エネルギーの認知向上・利用促進を図る

 地球温暖化対策が急がれる中、風力や太陽光、バイオマス、地熱など環境負荷の小さい新エネルギーに注目が集まっている。消費者のグリーン電力への理解を深めるとともに、企業・団体などによる新エネルギーの利用を促進することを目的として、資源エネルギー庁が主導するプロジェクト「グリーン・エネルギー・パートナーシップ」が6月30日に設立された。省エネルギー・新エネルギー部政策課長の河本光明氏に、その狙いやコミュニケーションについてうかがった。

「パートナーシップ」を民間と連携して設立

河本光明氏 河本光明氏

── 新エネルギーによって発電された電気の環境付加価値を「グリーン電力証書」という形で取引するシステムは、民間レベルで展開されてきました。今回、国としてグリーン電力証書に深く関与することとなったきっかけとは。

 洞爺湖サミットを前に、地球温暖化が大きな課題として挙がってきたのがきっかけです。1997年の京都議定書発効以降、多くの民間企業では自主行動計画や省エネの徹底が掲げられてきました。今後は、それをさらに進めるとともに、新エネルギーの利用を大幅に増やしていかなければならない段階にあります。しかし現状、「省エネ」を戦略の中枢に据える企業は多いものの、「新エネ」については、認知や意識が十分に高まっているとは言えません。

 そこで、今回「グリーン・エネルギー・パートナーシップ」が設立しました。発電事業者、電力証書発行事業者、企業、自治体、消費者などが連携し、情報交換をしながら、グリーン電力の活用や認知度の向上を目指す組織です。グリーン電力の活用度によって、パートナー会員を「エクセレント・パートナー」から「グリーン・エネルギー・サポーター」まで5つに階層化しています。スタート時点で、予想を大きく上回る300もの企業・団体の参加を得ました。また、グリーン電力を使って作られた製品に「グリーン・エネルギー・マーク」の共通ロゴをつけ、消費者が環境負荷の低い商品を選択できるようにしています。シャープの「アクオスRシリーズ」や、日本テトラパックが手がける、カゴメ「野菜生活」のパッケージなどに「g 」マークがついています。

 現時点では、グリーン電力証書の購入費用は、税法上寄付金として取り扱われていますが、製品に「g 」マークを付与するためにグリーン電力証書を購入する場合には、今後費用を損金処理できるよう、検討が行われています。これまで、税制上のメリットがないと大量に購入できないという指摘がありましたが、購入が評価される仕組みができれば、グリーンエネルギーを経済活動の中に、より組み込みやすくなるでしょう。

── 民間とともに取り組むことの意図は。

 産業界および消費者と連携しながら取り組まないことには、前に進まない問題が増えてきているように思います。特に環境問題は、河本光明氏国民一人ひとりに密接なテーマです。民間とともに同じベクトルを向くことによって、国民運動のような大きなムーブメントをつくり出せればと考えています。

各媒体の特性を生かし効率的に情報発信

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── 7月7日付朝刊に、パートナーシップ制度の立ち上がりを告知する広告が掲載されました。

 サミットに重なる7月5日から1週間を「グリーン・エネルギー・促進ウィーク」と位置づけ、キャンペーンを行いました。掲載前日には、天ぷら油などの廃食油をリサイクルしたバイオディーゼル燃料によって発電した電気を使って、東京タワーをグリーンにライトアップ。その模様が翌日の広告のメーンビジュアルとなるニュースアドを展開しました。

 東京タワーのライトアップと同日に、環境問題に高い関心を寄せるアーティストの青山テルマさんが、六本木ヒルズのエコイベントに登場しました。青山さんには、紙面にメッセージを寄せてもらうと同時に、テレビCMにも出演していただきました。青山さんの登場で、若い世代にも環境問題を“自分事”としてとらえてくれることにつながったのではと思います。

── 今回のように複数のメディアを使っての展開に期待することは。

 これまでは、画一的に一つのメディアに出稿することが多かったのですが、ここ1、2年で、一つのテーマについて、メディアを複合的に使って展開するケースが増えてきました。新聞広告は、きちんとしたコンテンツであれば、何度でも読み返していただけます。一方で、テレビCMは、視覚的なインパクトが強いメディアです。今後も、それぞれのメディアの特性を生かして、効率的に発信していきたいと思っています。

── 今後のパートナーシップの課題や方向性は。

 欧米のグリーン電力の市場は日本の90倍ほどあり、各企業がどれほど購入しているかが一般に公開されています。「自然エネルギーを使うことはいいことなんだ」「そういうエネルギーを購入するのはよい企業なんだ」と思ってもらえる風土が日本にもできれば、パートナーシップは定着していくものと考えています。

グリーン・エネルギー・促進ウィーク期間中に、全15段と小型広告(朝刊、1面・社会面)で連日にわたって訴求した

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