スポーツ面の小型広告を活用して新学部の創設をアピール

 桐蔭横浜大学は今年4月、スポーツ健康政策学部を新設する。学部創設のねらいを学部長の時本識資氏に、広告を含めたコミュニケーション戦略を学務部アドミッションオフィス次長の日隈広至氏と主任の酒元良氏に、それぞれうかがった。

「文化スポーツ」の学問構築と教育を

時本識資氏 時本識資氏

──学部創設のねらい、コンセプトなどについてお聞かせください。

 大学生がスポーツの部分で満足できるような教育ができないか、というのが出発点でした。しかし、中学や高校の保健体育の教員免許が取れる、いわゆる「体育学部」を作るつもりはありませんでした。

 スポーツを単なる競技として、また、健康増進のためのものとしてとらえる時代はもはや終わったと考えています。儀礼や伝統芸能、ダンスや演劇といったパフォーマンスも、体を使い、動かすことによって表現する、という意味ではスポーツと同じで、一体的に考える必要があるのでは、と。また、国際交流や地域社会の活性化、青少年の育成など、スポーツを通じてできることはたくさんあります。このスポーツ性と芸術性が一体となった領域や表現、そして、スポーツを通じて実現できる様々な可能性を、私たちは「文化スポーツ」という学問として構築しようと考えました。体を使い、動かすことによって何ができるのかの可能性を追求し、学び、身につけることを目指します。

日隈広至氏 日隈広至氏

 具体的には次の三つの学科で構成されています。スポーツを通じ、教員として求められる指導力や人間力を培いながら、即戦力となる教育者の育成を目指すのが「スポーツ教育学科」。同学科では、中学、高校の保健体育の教員免許だけでなく、小学校の教員免許が取得できるのが特徴です。「スポーツテクノロジー学科」は、最新のトレーニング理論やスポーツ科学、医学、工学を学ぶことで、トレーナー、スポーツ用品や医療器具を開発するような人材を育成します。そして「スポーツ健康政策学科」は、スポーツを通じ、健康や福祉、文化、行政、国際交流といった第一線の現場で活躍するための教育を提供します。

 教授陣はスポーツの専門家は半分ぐらいで、都市政策の専門家や文化人類学者、日本文化の研究者など、実に多様です。体育を教えるためには読解力が、スポーツテクノロジーを学ぶためにはパソコンを扱えるスキルが、国際交流のためには英語力が必要と考え、それらを身につける履修カリキュラムを組んでいます。

新聞広告で資料請求数が急増

酒元 良氏 酒元 良氏

──新聞広告を使ったコミュニケーションを展開されました。

 新しい学部の告知も重要でしたが、実は大学の名前自体の認知が低い、という現実もありました。桐蔭といえば、高校野球やサッカーで活躍するなど、その名前は全国区で、「文武両道」の学校として知られています。この「桐蔭ブランド」を前面に出しながら、大学名の認知度向上と、新学部創設の告知が、広告展開のねらいです。

 高校生など若い人の新聞離れが言われており、実際に当大学の学生に聞いても、情報収集手段はほとんどがテレビやインターネットのようです。しかし、新聞は社会面や経済面は読まなくても、スポーツ面は読む、中には記事や写真を切り取ってとっておくという学生も多かったのです。特に興味のあるスポーツや好きなスポーツ選手に関しては必ずチェックするようです。新学部創設にあたり、スポーツに関心のある受験生にアピールするのが第一義だったため、それであれば新聞の、それもスポーツ面にピンポイントで出稿しようと考えました。さらに、より関心が高まる日に焦点をしぼり、高校スポーツが行われた翌日や、センター試験の解答が出る日をねらって広告を出しました。

 カラーにもこだわりました。新聞広告は、ともすれば流されてしまう危険性があります。記事が基本的にモノクロなので、その中にカラーの広告があれば目に止まる確率は高くなると考えたからです。

── 反響は。

 他紙も合わせ、12月から1月にかけ週1回のペースで出稿したところ、資料請求の件数が急増しました。1月8日の広告掲載後は、それ以前の実に4倍にも跳ね上がり、驚くとともに、大学の名前や新学部について知ってもらう、スポーツに関心のある学生に興味をもってもらうという、当初からねらっていた効果を実感しました。また、新聞広告が掲載されることが刺激となり、スタッフのモチベーションがとても高まりました。

── 今後の展開は。

 今回の広告展開がそうだったように、ターゲットをしぼりながら、大学名、学部名を大きくアピールしていく考えです。また、新学部が目指すことや考え方は、広告や媒体で説明するだけで伝えるのは難しく、ぜひ高校生や保護者に実際に大学に足を運んで、教員やスタッフの話を聞いてもらいたいと思っています。そうした流れやきっかけを、新聞をはじめとした媒体を上手に活用しながら作っていければと考えています。

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