30年前の天声人語の予測通り 電気自動車の時代到来を新聞広告で訴求

 100%電力走行の新型リーフの航続距離は、最大280キロ。充電スポットも全国約1万6千基を超え、増え続けています。日産自動車では、電気自動車の時代が到来し、「今」の車であることを新聞広告で訴求。温室効果ガス排出量を減らすという社会課題と向き合う、同社の姿勢も伝わる内容です。

電気自動車は安心して乗れる「今」の車

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2015年12月10日付 朝刊 2015年12月10日付 朝刊

 日産自動車は、2015年12月10日付朝日新聞朝刊に、全15段の広告を掲載した。上10段分の記事体広告の内容は、日本政府の温暖化対策への取り組みを切り口に、電気自動車やプラグイン・ハイブリッド自動車などエコカーの現状について客観的な視点で解説。電気自動車の課題だった航続距離や充電インフラが急ピッチで向上していることを紹介しながら、電気自動車の時代が到来したことを訴求している。

 「マイナーチェンジしたリーフの広告で、一番のトピックスは航続距離が最大228キロメートルから280キロメートルに延びたこと。ただ、そのことを効果的に伝えるためには、まず電気自動車は未来の車ではなく、もう乗れる『今』の車だと知ってもらうことが必要だと考えました」と、日産自動車 日本マーケティング本部ブランド&メディア戦略部・課長の吉野浩正氏は説明する。

 リーフの商品情報は、下段に設けた広告スペースに集約。上部の記事体には、同社の調査結果や政府が発表したデータをグラフにして掲載した。また、「航続距離」や「充電」、「電気代」といった電気自動車特有の言葉は、ガソリン車の単位や用語を併用した。そうすることで、電気自動車に詳しくない人でも、最後までスムーズに読み進めることができるように工夫したという。

吉野浩正氏 吉野浩正氏

 たとえば、ゴールデンウィークや夏休みなどで長距離を運転する場合でも、1日の走行距離は280キロメートルに満たないという調査結果を基に、航続距離が最大280キロメートルのリーフであれば日常の使用で電池切れの心配はほとんどなくなる、と解説。充電スポットについても、2013年3月末時点では約7,300基だったが、わずか2年で約1万6千基まで増加したことや、全国に1,059カ所ある道の駅全てに充電設備を設置する計画など具体的に紹介している。燃料の電気代もガソリンの燃費に換算しているので分かりやすい。

 「電気自動車ユーザーのアンケート結果や所有者のコメントなど、伝えたいことを十分に盛り込むことができ、社内での評判も上々です。朝日新聞社の許諾を取り、全国の販売店に広告紙面を出力して配布しました。商談の場でも活用できると好評です」

30年前の天声人語をメインビジュアルに

2016年2月13日付 朝刊 2016年2月13日付 朝刊

 同社は、12月の記事体広告に続いて、2月13日付朝日新聞朝刊にも全15段の広告を掲載した。「12月の新聞広告は電気自動車の理解促進が目的でしたが、2月はブランディングの一環。日産自動車の印象を高めることが狙いでした」

 この広告の面白さは、30年前の天声人語をメインビジュアルとして使用している点だ。1986年2月17日付の「天声人語」で、電気自動車の現状と普及を願う内容。21世紀の世の中を想像しながら「車とは静かで排ガスのないもの、というのが通り相場になっているはずだ」と書かれている。

 特に興味深いのが、「マラソンの報道関係の車を電気自動車にはできないものか。排ガスの包囲陣は選手に迷惑」という読者の投書を「もっともな意見だと思う」と紹介しているエピソード。5年前の日産リーフの発売以降、横浜国際マラソンや横浜市民マラソンなどの先導車や広報車には、日産自動車の電気自動車が使用されており、既に実現しているのだ。

 「朝日新聞社から30年前の天声人語を広告で使いませんか、と提案していただきました。まるで広告のために書き下ろしたかのようにぴったりの内容で、とても驚きました」

 30年前の天声人語で予測した未来が現実のものとなり、同社が12月の広告でも伝えてきた「電気自動車は『今』の車である」というメッセージを際立たせている。「クルマが変わると未来は変わる」というキャッチコピーも説得力がある。

 「天声人語は、朝日新聞の多くの読者から愛されています。メインビジュアルにすることで、車に興味がない幅広い層にリーチできると考えました。車の写真が天声人語の邪魔をしないように、いつもより小さめに配置しています」

 温室効果ガス排出量を減らし、車に関わる死亡重傷事故ゼロにするために、日産自動車では車の「電動化」と「知能化」に取り組んでいる。今回紹介した二つの広告は、「電動化」の訴求。日産自動車の社会課題と向き合う姿勢を示したものとも言える。

 「12月と2月、どちらも読者調査を実施したところ、いずれも好意的な意見が多く寄せられ、好感度や購入意向が上がったというデータもありました。12月の記事体広告は初めての試みでしたが、訴求できる内容が多く、電気自動車のような説明が必要な商品にはぴったりでした。タイアップの内容や表現を工夫することで、新聞はまだまだ可能性が高いことも分かりました。今後も、新聞広告で新しいことを試していきたいと思っています」と、吉野氏は締めくくった。