「挑戦」を支える会社でありたい――思いを力強いコピーに乗せて

「保険は冒険から生まれた。」
3月16日朝日新聞朝刊に掲載された東京海上日動の広告は、このコピーだけ。潔いまでのクリエーティブに、新聞をめくる手を止めた読者は少なくなかったのではないだろうか。同社の広告シリーズは、この日を皮切りに3日間続いた。

コピーのみのクリエーティブで、読者の目と興味をひく

栃谷尚美氏 栃谷尚美氏

 「東京海上グループは4月、『To be a Good Company』というグループメッセージを掲げ、グループ一体となっていい会社を目指していくことを宣言しました。当社はその思いを世の中に向けても大々的に発信しようと、今回の企業広告キャンペーンに踏み切ったのです」

 出稿の経緯について話すのは、東京海上日動 広報部 広告宣伝グループ 主任の栃谷尚美氏。さらに、こう続ける。

 「『Good Company』を目指し続けていくにあたり、基軸となるのは、お客様や社会の『いざ』というときにお役に立ちたいという、私たちの強い思いです。災害や事故などの有事のときはもちろんのこと、たとえば起業したり、マイホームやマイカーを購入したりと、新しい一歩を踏み出すときも『いざ』というときだと思います。お客様や社会のあらゆる『いざ』を支えていきたいというこの思いを、『世の中の挑戦を支えていきたい』をテーマに広告で発信していこうと考えました」

 クリエーティブについて、栃谷氏はこう説明する。

 「当社が新しいことに挑戦しようとしている、変わろうとしていると感じていただくように、目を引くようなインパクトのあるクリエーティブにしたいと考えました。そこで3月16日から3日連続で掲載した紙面では、世の中、そして自分たち自身への問いかけを文字のみで表現し、『何か新しいことを始めようとしている』と注目していただけたら、というねらいがありました」(栃谷氏)

 3日間連続で掲載された全面広告は、いわば「予告編」。約1カ月後の4月15日には、「本広告」と位置付ける見開き二連版の広告が満を持して紙面を飾った。「挑戦の数だけ、保険がある。」という力強いコピー、大海原にこぎ出す帆船の躍動感ある絵が印象的だ。

2015年3月18日付 朝刊
2015年3月17日付 朝刊
2015年3月16日付 朝刊

2015年4月15日付 朝刊

 今回のキャンペーンは、テレビ、ラジオ、WEB、駅貼りや電車内などの交通広告、そして、新聞で同時に展開した。いずれも青を基調とした背景の中に、メッセージ性の高いコピーが描かれる。「一連の広告を見てひとつのプロモーションと認識していただきたいと思いました」と栃谷氏。さらにこう続ける。

 「『挑戦』というキーワードが自分とは関係ないと感じる方もいるかもしれません。そこで、日常生活の中にも挑戦はたくさんあふれているというイメージをテレビで訴求しました。一方で新聞では、『挑戦』というキーワードに込めた当社の思いをボディーコピーに込めました。手に取ってしっかりと読んでもらい、挑戦を表現する大航海時代の絵でさらにイメージをふくらませてもらうには、新聞は最適な媒体と考えました」

 さらに交通広告は、東京、新宿、渋谷、池袋に加え、札幌、大阪、名古屋、福岡と大々的に展開。「大人よ、大志を抱け。」(札幌駅)、「東京には夢がある。挫折もある。どちらも人を強くする。」(東京駅)など、そのエリアで広告を見る人たちに刺さるような内容に。コピーの数は、40種にも及んだ。倍以上もの候補から、何度も議論を重ね選び抜いたという。

 「コピーの内容もそうですが、交通広告や見開き二連版の新聞広告など、ここまで大々的に広告コミュニケーションをするのは当社にとっては初めての経験。まさに『挑戦』でした」(栃谷氏)

ポスターにして全社に配布 社員や代理店の意識を高める

 インパクトをねらったキャンペーンは、ねらいどおり大きな反響を呼んだ。一般の消費者からはもちろん、社員や、保険販売のチャネルとなる代理店からも多くの感想が寄せられたという。

 「社員にアンケートを取ったところ、『世の中の皆さんの挑戦を支えるためには、自分も挑戦し続けなくてはいけないし、支えられる営業活動をしていきたい』といった声がありました。実は今回の企業広告は、社員や代理店の意識を高めるための取り組みとしても位置付けており、その効果があったととらえています」(栃谷氏)

 新聞広告はポスターにして、社内まで配布したという。「日々目にし、原点に戻ってもらえたら」と栃谷氏は期待を寄せる。

 グループスローガンである「To be a Good Company」には中長期的に全社員を挙げて取り組み、そのメッセージは広告コミュニケーションなどを通じ継続的に発信していく考えだ。栃谷氏は、最後にこう言葉を結んだ。

 「世の中の皆さんが新たな一歩を踏み出そうとするとき、まず当社に相談してみようと思っていただけたらうれしい。そのためにも、原点を忘れず、私たち自身も挑戦する姿勢を忘れずに取り組んでいきたいと思います」