キャンペーン進行と掲載日をリンクさせ広告効果を最大化

インパクトのある登場感を狙いタレントをティザー広告化

 今年9月、東芝は液晶テレビ「REGZA(レグザ)」とハードディスク&DVDレコーダー「VARDIA(ヴァルディア)」を柱とする映像関連商品の広告キャラクターとして福山雅治さんを起用。同月17日に全15段カラーのティザー広告を、20日には2面を使い、新コミュニケーションコンセプト「X CROSS DIGITAL(クロス・デジタル)」の訴求と新製品紹介を朝日新聞紙上で展開した。

タレントの持つ力で美しさと実力を表現

仲 健太郎氏 仲 健太郎氏

 これまでの2年間、東芝は液晶テレビの広告コミュニケーションをノンキャラクターで展開。テレビの画質を左右するのはパネルのみでなく、東芝が世界をリードする半導体が重要であるという同社の優位性を技術面から伝えてきた。しかし、競合各社がビッグタレントをキャラクターに据える中で、「よりインパクトのあるコミュニケーションの必要性も高まった」と広告部国内広告担当部長代理の仲健太郎氏は語る。

 「画質に対する自信は揺るぎませんが、タレントインパクトがブランド認知に大きく影響していることも事実です。またお客様の地デジ対応が進む中で、デジタル映像機器の顔となるのはやはりテレビであり、そのブランド力がレコーダー等の他製品を引っ張っていく傾向が強まりました。これまでレグザは、評論家や映像にこだわるユーザーの方々に高く評価していただいてきましたが、ブランドやメーカー名の想起率は4~5番手の状況です。これを実力に見合ったポジションへと押し上げるためにも、ブランドの顔となるキャラクターを模索してきました」

 その条件となったのは、レグザの美しさと合致する美しさをタレント自身も持っているということ。そしてレグザに搭載した業界初の「超解像技術」を伝えるにふさわしい実力を持つことだった。世代的には脂の乗りきった40歳前後。そして存在そのものが美しさを体現でき、女性層はもちろん男性にも人気の高い実力の持ち主。「そう考えると福山さんしかいませんでした」と仲氏はいう。

 第一弾の新聞広告では、福山さんを起用した効果を最大化するために、話題の主演映画『容疑者Xの献身』とのコラボレーションを仕掛けている。商品も、福山さんと東芝との関係性も明かさない謎に満ちた紙面となった。

 「技術をまじめに訴求する東芝流をここで変えるなら、大胆に変えたいという思いがありました。通常のティザー広告は商品にベールをかけるものですが、この紙面では福山さんの存在をミステリアスにして、読者の関心をひくようにしています」

2008年9月17日付 朝刊
9/20 朝刊(ページ送り) 2008年9月20日付 朝刊(ページ送り)
2008年9月20日付 朝刊(ページ送り)

ページ送りにより理念と商品を訴求

 一連のキャンペーンでは、新聞広告のもつ「日付性」を生かした、綿密なスケジュールが立てられている。テレビCMでティザー広告がスタートしたのが9月12日。視聴者の関心が最高潮に達した17日に新聞広告の第一弾を打ち、18日に新製品を発表。各メディアの報道による情報波及を想定し、第二弾は一日空けた20日に掲載。デジタル体験の無限の可能性をメッセージするページをキャンペーン全体の「扉」に据えた。そしてページをめくるとレグザ、ヴァルディアの新製品が登場する凝った紙面構成をとり、スケール感と登場感を持たせている。

 「印刷部数が圧倒的に多く、狙った掲載日にキャンペーンのスタートを訴えられる新聞は、節目節目で効果的なメッセージを打ち出しやすいメディアです。また、今回はビジュアルの美しさが重要でしたが、屋外広告を除けばこれだけのビッグビジュアルで表現できる媒体は他にありません」

 どの紙面もコピーの分量は少ないが、仲氏は「決して見て楽しんでいただくだけではない、読ませる広告」だともいう。

 「コピーの配置やボリュームに配慮することで、読み込みたくなるようなクリエーティブを目指しました。大きな写真と大きなキャッチが目に飛び込んで、『きれいな紙面だな』だけの数秒で接触が終わってしまっては、これだけのスペースを使った意味が半減してしまいます」

 読者にきちんとコピーを読んでもらい、その上で少し謎を残し、次のステップへとつなげる。そんなコミュニケーションの中継地点の役割が新聞広告には期待された。同社には好意的な反響のメールが数多く寄せられ、「目的は果たされた」と仲氏はいう。特に福山さんのファンからは「いい広告をありがとう」「部屋に飾らせてもらっています」といった声が多い。「お客様からお礼をいわれるのは珍しいことです」(仲氏)

 各社のテレビ事業のキャラクターは安定感のある大物タレントが目立つ中で、福山雅治の存在はフレッシュ。量販店からも、「売り場に新しい風を吹き込んでくれた」と好評で、社内の営業も話がしやすくなったという。

 「キャンペーンは、ロケットでいえばまだ打ち上げが済んだ段階。これからが本番です。次は具体的な商品理解を促進する広告を年末に向けて積極的に展開していきます」(仲氏)