15段広告とシリーズ小型広告でブランド認知の向上を狙う

独自性をもった語り口で新社名を社会に広くアピール

 今年6月28日、マネックスグループはFX(外国為替証拠金取引)専門業者「トウキョウフォレックス」を「マネックスFX」に社名変更。ネット証券の先駆けとして高い信用力を誇るマネックスブランドを個人投資家に明確にアピールすると共に、投資初心者に易しい取引システムやサポート体制などでサービスの独自性を打ち出した。

 その翌月の朝日新聞朝刊に、同社は新社名「マネックスFX」とその経営姿勢を「分かりやすい」「おもしろい」という身近な言葉をキーワードで伝えるカラー全面広告を掲載した

新聞の時事性を広告に取り込む

松本好史氏 松本好史氏

 FXに関しては昨今、一部業者の管理体制の不備や投資家側のリスク理解の不足などが社会から指摘されている。この広告ではごく一般的な人々がFXに抱いている期待と不安に正面から向き合い、「長く付き合えるFX会社」を目指す同社の思いを伝えている。赤と白のストライプが目に飛び込む紙面はスタイリッシュで斬新だが、言葉以外のイメージ的な要素を使わないその語り口はあくまで誠実だ。

 マネックスグループ経営管理部の松本好史氏は「社名変更を機にブランド認知度を高めると同時に、他社とは違う価値をもったFX専門会社としての姿を伝えたかった」と、広告の狙いを語る。

 「多くのFX業者の広告は、スプレッド(売値と買値の差)の狭さや手数料コストの安さなど、スペック面の優位性をうたっています。しかし、国内に130社以上のFX取引業者がひしめく現状では、他社と同じ切り口で勝負をしてもお客様に響きません。マネックスFXは、主婦層などの幅広いお客様をターゲットとしています。経済専門紙ではなく朝日新聞の幅広い読者に向けて、システム面や情報提供面の充実を含めた当社ならではのFXのあり方を訴求しました」

2008年7月24日付 朝刊 2008年7月24日付 朝刊

 また、7月下旬から8月下旬の約1カ月にわたっては、「FX予報」のシリーズタイトルで社会面小型広告を継続的に掲載。「夏休みには、水着とPCをお忘れなく」「ガソリンが高いのも、無関係と言えないでしょう」など、時事性をもった一言が、味わいのある手書き文字で記された広告は、活字で埋め尽くされた紙面の中でひときわ目立っている。

 「毎回のコピーは、オリンピックやお盆など期間中の出来事や、ガソリン価格の高騰、アメリカ雇用統計の発表などお客様の投資判断の材料になるような話題をテーマにしました。為替はさまざまなニュースに反応しながら刻一刻と変化するものであり、FXは短期運用を実践されているお客様も多い商品です。日々のニュースを伝える新聞紙面とFXとの相性のよさを改めて感じました」

 例えば、シリーズ第一回のコピーは、掲載日が海の日にあたる7月21日であったことから「日本は祝日でも、為替相場は動いているでしょう」。国内の株式市場は休場でも、世界の為替マーケットは24時間いつでも開かれていて今日も取引ができるというFXの商品特性が端的に表されている。

 「具体的には、マネックスFXには24時間の電話サポート体制や、24時間情報を発信しているサポートチームによるリレーブログなどがあります。ただ、そういったサービス内容を広告で伝えようとすれば、金融商品取引法の「広告」に該当し、投資家保護の観点からさまざまなディスクレーマー(免責条項)が必要です。今回の企画では、「シンプルなメッセージを届けたい」「一目見て『おっ』と感じてもらいたい」という想いから、キャッチコピー的なものを考えました」

ブログとの連係で読者をネットに誘導

2008年7月18日付 朝刊 2008年7月18日付 朝刊

 またマネックスFXのホームページでは、毎回のコピーをそのままテーマとして、より詳しい時事解説を行うブログを同時に展開した。同社は前身のトウキョウフォレックス時代から情報力や市場分析力に定評があり、プロのアナリストたちが署名入りで書く原稿は毎回読み応えがある。

 「広告コピーにはキウイ(ニュージーランドドル)、ECB(欧州中央銀行)といった外貨投資をしていない人には聞き慣れない言葉も登場します。少し専門的なにおいのする言い回しで読者の好奇心をくすぐり、ホームページへの誘導を狙いました。またFX業者のイメージカラーは青系が多いのですが、強いイメージを伝えられる赤を一貫して使うことで、読者の注目率が高まったと思います」

 掲載後は毎回、同社のカスタマーサポートチームに広告内容に関する多数の問い合わせが寄せられ、新規の口座開設数は広告掲載以前の3倍以上になった。

 「新聞広告は、社員にとっても新社名の下に力を合わせていこうという意識の向上につながっています。また新規顧客の獲得のみならず、トウキョウフォレックス時代からのお客様にもより信頼感をもっていただくことができました。新聞のもつ幅広い波及力や、影響の大きさを改めて感じています

2008年7月20日付 朝刊

 2008年7月21日付 朝刊
 2008年7月30日付 朝刊
 2008年8月7日付 朝刊
 2008年8月12日付 朝刊
 2008年8月/13 朝刊
 2008年8月14日付 朝刊