毎日の血圧測定をすすめる「BP365運動」 公共性の高い新聞社とともに発信する意義

 家庭用血圧計で世界トップシェアのオムロン ヘルスケアは2017年度から、日々変動する血圧(Blood Pressure)を測ることで健康な生活に役立ててもらおうという啓発活動「BP365運動」(主催:BP365運動実行委員会、朝日新聞社)に協賛している。シンポジウムやキャンペーンを通じた異業種との連携や運動の広がりに期待を寄せる。

モノからコトへ変わるビジネス 新ムーブメントで目指す事業変革

2017年11月19日付 朝刊1.2MB

 BP365運動は、朝日新聞社が中心となって2017年に運営事務局を開設。乳がんに関する知識の普及を通じて、乳がんが原因で悲しむ患者や家族を減らそうと活動するピンクリボン運動をイメージしてのスタートだった。5月の東京ビジョン会議、7月のBP365運動京都ビジョン会議を経て10月9日、東京・有楽町朝日ホールで「BP365運動スタートフォーラム」を実施。「40歳からの働き方改革─自測自健の時代─」をテーマに、村上憲郎氏(元Google米国本社副社長)と茂木健一郎氏(脳科学者)2人のキーノートスピーチと、大久保孝義氏(帝京大学医学部主任教授)、江田憲史氏(オムロン ヘルスケア執行役員)、濱松誠氏(One JAPAN共同発起人・代表)と茂木氏によるパネルディスカッションを通じて、最初のメッセージを社会に発信した(11月19日付で朝日新聞朝刊に採録紙面を掲載、朝日新聞社企画・編集のウェブサイト「自測自健」のススメでも紹介)。

 当初から協賛社として運動に参画してきたオムロン ヘルスケア 広報・デジタルマーケティング部の富田陽一氏は、この社会運動に注目した理由を次のように語る。

富田陽一氏

 「血圧計の事業は当社の事業の半分を占める。ビジネスの世界が『モノを売る』から『コトを売る』に進化していく中で、当社も単に製品を売る『血圧計事業』から、脳卒中や心筋梗塞などの脳心血管疾患の発症予防を目指して血圧をコントロールする『血圧事業』に進化しようとしている。とはいえ、一企業ができる情報発信や疾病啓発には限界がある。さらに、ユーザーが期待する価値を、血圧のコントロールとしたときに、具体的なソリューションが足りない。そんな課題感を抱いていたところへ、今回、医療分野に強いと定評がある朝日新聞から社会運動をしないかと声がかかった。公共性の高い新聞社とともに、他の企業と連携しながら新しいムーブメントを作っていける可能性があるという点に大変魅力を感じた」

「ゼロイベント」を目標に掲げ 社内で家庭血圧測定に取り組む

 家庭で血圧を測るという行為は「病気になりたくない」「健康でいたい」という人々の願いの表れだ。長年、高血圧が続くと動脈硬化が進行し、寝たきりや死亡の原因となる脳卒中や心筋梗塞などの脳心血管疾患が起こりやすくなる。これらの疾患は医学では「イベント」とも言われているが、オムロン ヘルスケアでは脳心血管疾患イベントの発症ゼロを目指す「ゼロイベント」を血圧事業の事業ビジョンとした。

 「当社が、ゼロイベントの実現を目指すことを発信していくにあたって、社会から『それを呼び掛けている当人たちはどうなのか』と問われる。発信主体である自分たちができていなければ、社会からの信頼も得られない」と、17年10月から、国内の社員全員で血圧値の適正なコントロールを実践する「オムロン ゼロイベントチャレンジ」を始めた。

 約650人中、朝晩きちんと測った人が455人。その平均値は家庭での高血圧の基準値(収縮期血圧135mmHg未満/拡張期血圧85mmHg未満)を下回った。しかし、健康診断では血圧が高めとの指摘はなかったが、家庭血圧の平均値では基準値を超えている「仮面高血圧」の疑いのある社員が約40名見つかった。傾向的には40代から高くなっているが、中には30代の社員もいた。高血圧には疾病が隠れている場合もあるので、該当者には受診を勧めているが、実際に取り組みをやってみて血圧測定を継続してもらうことの難しさも浮き彫りになった。

 「血圧が高くても本人には自覚症状が少ない。だが、高血圧が続くと、イベントを発症するリスクが高くなる。身近にイベントを発症する人が増えてくるシニア層は情報摂取量が増えて関心が高まるが、仕事が忙しい働き盛り世代は血圧が高めでも無関心な人が多い。だから高血圧の人が増えてくる30代後半から40代の男性を啓発していくことの意義は大きい」

新聞社が読者を招待して2018年2月4日に大阪で初めて開かれた「朝日健康・医療フォーラム2018」には、同社の生体工学専門職 白崎修氏が「そうだったのか!血圧計使いこなし術」と題したセッションで参加。要約は「自測自健」のススメで公開されている

働き盛りの日常生活の中で ポジティブなコミュニケーションを

2018年3月31日付 夕刊
半5段広告2.0MB

 「具体的な行動変容を促すには、知識の習得だけではだめで、いかに自分ゴト化してもらえるかが重要」と取り組んだのが、今年4月1日~8日に東京・荒川区の梅の湯で実施した「BP銭湯WEEK」というキャンペーンだ。

 初日には血圧や健康に関するトークイベントを実施。期間中、同社はロビーに血圧計を設置し、入浴の前後に血圧を測って、入浴後には血圧が下がることを体感してもらった。測定結果の記録紙を番台に持って来た先着100人に毎日、サントリー「胡麻麦茶」をはじめ協賛社のグッズやオリジナル手ぬぐいなどが入っている「BP銭湯セット」をプレゼントした。また期間中にスタンプカードの来店ポイントをためると、血圧計や胡麻麦茶1ケースがもらえるキャンペーンも行ったところ、9人が全日分のスタンプを集め、その中には千葉県からの参加者もいたという。

4月1日~8日には梅の湯(東京・荒川区)でキャンペーン「BP銭湯WEEK」を実施した。リポートは「自測自健」のススメで公開されている。

 今後の展開について富田氏は「働き盛りの一人ひとりの日常生活の中の血圧が気になるシーンに注目して、自然と興味関心が高まるようなポジティブなコミュニケーションを展開。血圧測定につなげる気軽な入り口をつくっていきたい」と話した。