認知から理解、そして共感を得るために 「たすけあいの日」のモーメントを捉え、考え方や活動を伝える

 災害や事故、病気など思いもよらないアクシデントへの「備え」として、助け合いの仕組みである「共済」による安心・充実の保障を提供しているこくみん共済 coop が、「たすけあいの日」となる2020年10月15日に朝日新聞朝刊で見開き全面広告を掲載した。当日までの10月8~14日には、小型広告を活用したカウントダウンも展開。企画の背景や狙い、掲載後の反響について、全国労働者共済生活協同組合連合会ブランド戦略部の城所亮平氏に聞いた。

2020年10月15日付 朝刊2.2MB

たすけあいの意識が高まったコロナ禍をブランドPRの契機に

 同会の事業の成り立ちは1954年に遡る。当時はひとたび火災が起きると生活が崩壊する時代。火事に見舞われた人を、職場の人たちがカンパを出し合うことで助けるという文化があった。しかしカンパだけでは生活の再建が難しいのはいつの世も同じ。そこで職場の仲間同士が集まって少しずつお金を出し合い、お互いを助け合う火災共済を作ったことが、こくみん共済 coop のはじまりだ。

城所亮平氏

 その後、より多くの人が加入できるよう掛金の手頃さを大切にし続け、共済の種類を住まいから人、車へと拡大。その間、さまざまな社会課題に向き合いながら、会の正式名称である「全国労働者共済生活協同組合連合会」の略称である「全労済」を全面に出し広告展開を行ってきた。そして、創立60周年となった2019年を節目にさらに多くの人々に親しまれ、愛される存在となるため、愛称を「こくみん共済 coop 」とし、同時に「たすけあいの輪をむすぶ」というタグラインの使用を開始した。この大々的なリブランディングについて、城所氏は「私たちの活動は共済の普及と社会課題への取り組みを通じて、たすけあいの輪をむすぶこと。この輪を、組合員をはじめとするさまざまな協力者とともに、未来にむけてむすんでいきたいという想いが込められています」と背景を語る。

 2020年度は新ブランドの展開から2年目。同会のブランド戦略部は、こくみん共済 coop が目指している姿や活動を、認知だけではなく理解してもらい、また少しでも共感してもらうというミッションを掲げてPR活動に取り組んでいた。その一環として掲載したのが今回の見開き全面広告だ。ただ、ブランドの理解を促進したいという目的の他にも「出稿を後押しした要因があった」と城所氏は話す。

 「私たちがコロナ禍を受けて実施した意識調査で6割以上が“コロナ禍でたすけあいの意識が高まった”と回答されるなど、世の中の変化が見えてきたのです。このタイミングであらためて私たちの役割や社会に対する責任を“たすけあいの日”に合わせて発信することは、非常に意味があると感じました。こうした背景もあって、今回の広告ではセールスを目的としたものではなく、私たちの考え方や活動を親しみやすくお伝えすることに注力しました。新聞というメディアを選んだ理由は、“たすけあいの日”というモーメントでの広告展開にぴったりである点、そして幅広い生活者に情報を発信できる点が大きかった。新型コロナウイルスの影響で人と人とのふれあいが制限される中、広くメッセージをお届けできる新聞でのコミュニケーション展開を企画したのです」

新聞広告ならではのインパクトで読者の心をつかんだ

 「共済の紹介となるとどうしても言葉が硬くなりがちなのですが、少しでも親しみやすさを感じていただけるよう、言葉やデザインといった表現の一つひとつに気を配りながら進行しました。また生活者同士のたすけあいによって成り立っている私たちの活動は“街”を舞台に、たすけあいの輪がむすばれている様子は“リボン”で表現し、優しい印象ながらも届けたい情報はしっかりと盛り込んでいます」

 また今回の広告展開でもう一つ特徴的だったのが、「たすけあいの日」までの10月8~14日に展開した、同会の公式キャラクター「ピットくん」が「たすけあいの日まであと〇日」とカウントダウンしていく小型広告だ。枠は大きくないものの、情報量を少なめにしてピットくんを目立たせることで、しっかりと目に止まる広告となった。

 2020年10月8日付朝刊
 2020年10月9日付朝刊
 2020年10月10日付朝刊
 2020年10月11日付朝刊
 2020年10月13日付朝刊
 2020年10月14日付朝刊

 「カウントダウンを行うことで“何があるのだろう”と興味を持っていただけるのではと思って展開しました。実際、小型広告の掲載中に当会のコールセンター宛に“5日後に何があるの?”という問い合わせのお電話が何本か入り、“お楽しみです”とお答えしたことがありました。読者の方々に興味を持っていただけたという手応えがあり、やったな!と思いましたね」 掲載に合わせて実施した広告モニター調査で目立ったのが「とても親しみが持てた」という声。その他にも「どんな活動をしているのかがよく分かった」「ちょうど保障を考えていたところ。広告で中身がよく分かったので検討してみたい」などの意見が聞かれ、今回の新聞広告が好意的に受け入れられたことが分かった。城所氏は新聞広告のメリットについて次のように話す。

 「今回見開き全面広告を出稿し、このインパクトは新聞ならではだと実感しました。あの熱量をwebや手元のスマホのサイズ内で表現することは難しいでしょう。広く、確実に目に触れるように届けることができるのは新聞の強みだと思います。一方で、若い世代の共感を醸成するにはSNSも有効。メディアの特性を見極めながら、課題にあわせて戦略を立てる必要があると考えています」

 1995年の阪神・淡路大震災発生時には、「被災者生活再建支援法」の成立に向けて取り組むなど、保障事業だけでなく、様々な社会課題に向き合いながら、生活協同組合として組合員とともにたすけあいの輪を広げてきたこくみん共済 coop 。今後はさらに防災・減災運動を発展させていくことが重要テーマの1つだと城所氏は語る。 「人口の減少や少子高齢化、また今回のコロナ禍を経たこともあり、今後はますます“人と人とのたすけあい”が大切になっていくと考えています。当会はその輪をむすび、広げるにはどうすればよいのか、今後も考え続けながら実践していきます」