クリエーターインタビュー

進化するテクノロジーで世の中をおもしろく

メディアアーティスト/ライゾマティクス取締役、ライゾマティクスリサーチ主宰 真鍋大度氏

 Perfumeのステージやリオデジャネイロオリンピックでのフラッグハンドオーバーセレモニーなど、最新テクノロジーを駆使した斬新な作品で世界中の視線を集め続けているメディアアーティストの真鍋大度氏。加速度的にテクノロジーが進化し「おもしろいもの」が瞬く間に消費されていく今、時代の先端を走り続けるクリエーターの視線の先には何が映っているのだろうか──。

みんながあっと驚く新しい表現を追究し続ける

──インタラクティブなプロジェクトや、斬新なメディアアートの可能性を追究するクリエーター集団「ライゾマティクス」の創立から10年がたちました。

真鍋大度氏 真鍋大度氏

 10年という時間は長いようで短いな、と感じます。というのも結局、今僕がやっていることは当時やっていたことの延長でしかないですから。僕が使っているプログラム言語も当時と大きくは変わらない。でも、テクノロジーの進化と大衆化が進んだことによって、メディアアートの世界はこの10年で大きく変わりました。10年前には特殊な環境や理想的な条件下でしかできなかったことが、今ではどこでも誰でも簡単にできるようになっています。例えば、5年前でさえ演算処理の関係でパソコン上でしかできなかった高度な画像処理が、今はスマートフォンで誰もが気軽に楽しめます。研究室で芽生えていたテクノロジーが、世の中に広がった10年だったと思いますね。

 もう一つこの10年で変わったことは、ユーチューブやSNSをみんなが日常的に使うようになったことで、動画や写真など「おもしろいもの」に触れる機会がものすごく増えました。その分「おもしろいもの」が消費されるスピードも加速し、一瞬にして拡散され一瞬にして話題にならなくなっています。

 こういう時代にプロとして新しいテクノロジーを使った表現を創り続けるのは正直、すごく難しいですね。特に僕たちは表現の使い回しをせずに、毎回新しくチャレンジすることを信条としているチームなので大変です。テクノロジーはすぐに古くなってしまうため、常に新しいものを発掘していかなければならないと思っています。

──メディアアートの制作スタイルも変化してきているのでしょうか。

「border」 「border」

 そうですね。これだけテクノロジーが進化すると、誰か一人が全ての知識を持ち、指示を出すのは無理だと思います。ライゾマティクスでもソフトウェアとハードウェアを合わせる多種多様なスキルセットを持つ人たちが、チームで動いています。たとえばドローンを作る場合でも、ドローンをコントロールするインターフェースをデザインする人、ソフトを開発する人、ドローンそのものをデザインする人、それを設計する人──とかなりの人数のスペシャリストが一緒に動いています。逆に言えば、それが僕たちの強みだと思っています。

 ライゾマティクスは今、三つのセクションに分かれていて、僕が率いる「ライゾマティクスリサーチ」は、特に研究開発的な要素が濃い部門。研究室で行われているような最先端の研究と、音楽やダンス、ファッションなどのカルチャーの領域をつなぐような新しい表現を創り続けています。音楽や映像、光でみんなをあっと驚かせるライブには、新しいテクノロジーによる演出は欠かせません。たとえば、2015~16年に僕たちがダンスカンパニーELEVENPLAYとコラボレーションした「border」は、VRとAR、そしてドローンを使った観客参加型のパフォーマンスです。最新テクノロジーを導入して創り出した迷宮的な空間を生身のダンサーが踊ることで、観客は仮想世界と現実世界の区別がつかなくなっていく。仮想世界を現実世界のように楽しむだけではなく、その二つの世界をシームレスにつなぐことで、その境目に何か一つの表現が生まれるのではないか──そう考えて作った作品です。

 ライブの仕事はぶっつけ本番の部分が大きく、技術的にはかなり難易度が高い仕事になります。それでも、僕はいろんな分野のスペシャリストが集結して、一つのものを作り上げていくライブの仕事が好きですね。一瞬たりとも気の抜けない、あのヒリヒリする感じがいいんです。

メディアアートの教育普及にも力を入れていきたい

──小学生の頃からプログラミングをしていたそうですね。

「border」 「border」

 学校を舞台にしたロールプレイングゲームを作り、友達にやらせたりしていました。両親が音楽の仕事をしていたため、家にシンセサイザーがあったので、子どもの頃から音色を作るのも好きでしたね。そんなことをするやつは学年に僕一人だけでしたから、今思えば、変わったスキルセットを持っていた子どもだったのかもしれません。

 大学に入った頃は「テクノロジー×エンタメ=ゲーム」の時代だったので、ゲーム会社に入りたいと思っていましたが、結局入れませんでした。僕の場合、今の仕事はかなり音楽寄りのところからスタートしています。音楽で何かおもしろいことをやるなら、やっぱりツールを作るところからやらないとダメだと思って。最初に作っていたのは音楽を作るソフトの開発や楽器の開発でした。振り返ってみると、音楽に数学にプログラミング。自分の得意なことが融合して今の仕事につながっているんだと思います。

 テクノロジーが進化して、僕たちの生活は格段に便利になりました。ただ僕は世の中を便利にするよりも、世の中をおもしろくするためにテクノロジーを使いたい。人間の創作活動である音楽やダンスなどのカルチャーと、最新テクノロジーを融合させることで、新しい表現の可能性を探りたいと思います。

──2020年、そして未来に向けての展望を聞かせてください。

 日本の社会全体が、ポジティブな流れになるといいなと感じます。メディアアート的にも、チャレンジできる場所はいろいろ出てくるでしょう。テクノロジーは、日本の一つの持ち味だと思っています。国内外で仕事をしていますが、メカや光のコンピューター制御は日本人が世界に誇れる職人芸だと思っています。

 これからは教育普及にも力を入れていきたいですね。すでに中高生を対象にしたメディアアートやプログラミングについてのワークショップや、講演会をよくやっています。最近はSNSを介して「文化祭でプロジェクションマッピングをやりたいのですが、どうしたらいいですか」と直接質問してくる学生も少なくありません。おそらく今、学校でそういうことを教えられる人材が不足しているのだろうと思います。自分が好きな創作への動機付けがしっかりできれば、子どもたちはもっとやる気になるはず。要望があればどんどん教えに行きたい。ぜひ、下の世代にメディアアートのスーパースターが出てきてほしいと願っています。

真鍋大度(まなべ・だいと)

メディアアーティスト/ライゾマティクス取締役、ライゾマティクスリサーチ主宰

1976年、東京都生まれ。東京理科大学理学部数学科卒業。国際情報科学芸術アカデミー(IAMAS)DSPコース卒業。2006年、株式会社ライゾマティクスを仲間と設立。特に技術と表現の可能性を探求する部門である「ライゾマティクスリサーチ」を率いて活動する。2012年に第16回文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門大賞を受賞(Perfume“Global Site Project”)するなど、その作品は国内外から注目を集めている。

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