クリエーターインタビュー

自分の絵に何が求められているか、を考えながら描く

イラストレーター JUN OSON氏

 ポップな色使いと8の字形の顔でおなじみのJUN OSON氏のイラストレーション。コミカルなタッチで親しみを感じさせるそのイラストは、企業や学校などの広告にも採用され、朝日広告賞小型広告賞を受賞するなど高い評価を得ている。第一線で活躍できるイラストレーターに必要な資質とは何か、などについて聞いた。

守らなきゃいけないルールのもとで描くのが好き

──今回「多様性」というテーマでイラストを描き起こしてもらいましたが、どんな思考と作業を経て描いたのですか。

JUN OSON氏

 はじめに「多様性」というテーマを聞いたとき、パッと思い浮かんだのはいろんな人がいる絵でした。ふだんから人間や宇宙人、ロボットなどごちゃ混ぜの絵を描くことが多いので、まずはそういう絵が思い浮かびました。

 ただ、今回はあえて人数や色数を抑えて描いています。ふだんより色数を抑えた理由は、髪の色や洋服の色ではなく、人間そのものの見た目の差だけで表現したかったから。肌の色や目の形、メガネの有無はありますが、その他はあまり強調しないように色を絞って描いています。人数も本当はもっと多い方が「多様性」という言葉はダイレクトに伝わるとは思いますが、僕たち人間は、一人として同じ人はいません。8人しかいなくても8人皆それぞれ違うということをシンプルに表したいと思い、こういう絵にしました。

 あとは最近の好みもあります。イラストレーションの全体的なトレンドとして、おもしろさよりもシャレた感じの絵の方がはやっているようなので、最近は意図的にシャレた感じに仕上げるようにしています。

──ふだん、イラストはどのように描いていますか。

 アナログとデジタルの半々ですね。まず鉛筆でデッサンし、それをパソコンに取り込んで全体的なバランスなどを修正して下書きを完成させ、それを今度はトレース台で透かしながら筆ペンでなぞり、最後にパソコン上で色をつけています。何回も何回も描きながら形を整えていくアイデアスケッチやラフは、鉛筆の方が僕の場合はスムーズにできます。

──8の字形の顔をしたキャラクターを描くようになったのは、いつ頃からですか。

 イラストレーターを目指し始めてまもなくの頃です。イラストレーターとして食べていくには、やはり自分なりのタッチが必要だと思っていました。変わった輪郭の顔を描くというのは、そのころ憧れていたイギリスのイラストレーター、ジェームス・ジャービスさんの影響ですね。その方はひょうたん形の輪郭をした顔のキャラクターをよく描いていて、僕自身その絵がとても好きだったのです。

 それからずっと、宇宙人もロボットも動物も8の字形の顔で描いてきました。このルールがなければもっと自由に表現できるとは思いますが、たぶん僕はなんでもありの状態で自由に描くより、守らなきゃいけないルールがある中で描くのが好きなのです。

デザイナー的視点とコミュ二ケーション能力

──イラストレーターになる前はデザイナーをしていたそうですね。

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 はい。大学を卒業後、小さなデザイン事務所にデザイナーとして就職したのですが、やりたかった仕事とはほど遠く、どうしてもおもしろいと思えませんでした。その時に初めて、自分がどんなことをやりたいのか、ということを真剣に考えたところ、「僕はもっと自分の『我』を出せる仕事がしたい」ということに気づいたのです。それならデザイナーよりイラストレーターという職業があるじゃないかと思って「よし、なろう!」と決めました。

 事務所を辞め、フリーランスのイラストレーターとして地元で活動し始めたのが23歳のとき。同時に独学でホームページを開設し、自分の作品を掲載したり、ミクシィをやっているうちに、見知らぬ人から「個性的な絵がいいですね」とコメントをもらったり、東京や大阪から仕事が入ったりするようになりました。そこで25歳で上京し、東京を拠点に活動するようになりました。

 もちろんすぐに仕事が舞い込むことはなく、最初の頃は週4日知り合いのデザイン事務所でウェブデザインの仕事をして、生活費を稼いでいました。いろんな考え方があると思いますが、僕はどんなに忙しくても構わないけれど、食べたいものも食べられないような苦労だけはしたくなかったのです(笑)。

 上京した頃からイラストレーターの先輩である白根ゆたんぽさんが、ことあるごとにいろんな場所へ連れて行ってくれたのも、ネットワークを広げるには大きかったと思います。僕自身、そういう機会には積極的に出かけるようにしていました。イラストの仕事だけで食べられるようになったのは、NHKのEテレでアニメ「どこ切る兄弟」を始めた頃。夢に見ていた大ブレークではありませんでしたが、知らない間に少しずつ仕事が増えていった感じです。

──東京理科大学の小型広告「今日をステキにする科学者の名言」38点シリーズでは、2015年度朝日広告賞で小型広告賞を受賞しました。広告の仕事はどんなイメージですか。

 僕自身、広告はすごくやりたかった仕事です。中には「自分の思うように描きたいから、広告の仕事はやりたくない」と考える人もいるかもしれませんが、僕はそれは全くない。それよりも自分の絵で食える喜びの方が大きいですね。

 東京理科大学の広告の仕事では、古今東西の科学者の名言とそれに合わせた僕のイラストで構成した小型広告を、38日間毎日連載するという企画でした。全面広告を1回掲載するより小さくてもインパクトのある広告を毎日掲載した方がいい、という学長のアイデアでした。親しみやすい僕のイラストがアカデミックな世界との橋渡しになれば、と思い描きました。

──イラストレーターを目指す人は多いと思いますが、イラストで食べていくために必要な資質とは何だと思いますか。

Diversity

 たまに考えるのですが、正直よくわからないですね。僕自身というよりも周りの同業者で売れている人を見ると「デザイナー的視点」を持っている人が多いような気がします。僕はもともと欲張りで、雑誌のイラストだけでなく、Tシャツのデザインもアニメーションも全部やりたいと思っていました。今思えば、イラストレーターになろうと決めた頃から、どんなシチュエーションにも使える絵柄を考えていたのかも知れません。

 あとは「コミュニケーション能力」でしょうか。たとえば提案した作品が気に入られなかった時に、「いや、絶対この絵がカッコいいですから」と主張するのではなく、「だったらこういうのはどうでしょうか」と打開策を考える。「あ、それいいね。そうしようか」と相手に納得してもらうためにも、コミュニケーションはとても大事だと思います。人のネットワークを広げるだけでなく、一つひとつの仕事をしていく上でも、重要なことじゃないでしょうか。

 これからの夢は海外進出です。でも、特に海外に向けて戦略を立てるというよりも、今目の前の仕事一つひとつに注力したいと考えるようになりました。インターネットが発達した今、国内での仕事に目を留めた海外の人からオファーがくる可能性もゼロではないと思うのです。

JUN OSON(ジュン・オソン)

イラストレーター

愛知県生まれ、鎌倉市在住。広告を中心にアニメーションや装丁など幅広く活動中。主な仕事にNHK Eテレ「あはれ!名作くん」作画、日本マクドナルド「朝マック」広告、キリン「のどごしオールライトスペシャルパッケージ缶」デザイン、ZUCCaとのコラボレーション、TOYOTA「Ha:mo」広告などがある。
http://www.junoson.com/

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