クリエーターインタビュー

アイデアの源は、ひねりを効かせた視点

イラストレーター 沼田光太郎氏

 雑誌やウェブ、広告のイラストレーションをはじめ、キャラクターデザインや漫画、アニメーション制作なども手がけるイラストレーターの沼田光太郎氏。冊子『広告朝日』の「マーケティングキーワード」のコーナーで挿絵も担当している。ユーモアのある「ゆるい」タッチが特徴だが、その原点は学生時代に描いていたファッションイラストだという。アイデアを生み出す力と枠にとらわれない多彩な画力によって、活躍の場を広げている。

アイデアを考えることは、イラストを描くのと同じくらい得意

──冊子『広告朝日』の「マーケティングキーワード」の挿絵を担当しています。また、描き下ろしの作品が『広告朝日』20号の表紙を飾りました。

※作品画像は拡大表示できます
マーケティングキーワード
「トピックモデル」挿絵
「トキ消費」挿絵
「非対面接客」挿絵

 マーケティングキーワードのイラストのモチーフは、原稿を読んだ上で朝日新聞の担当者と一緒に決めています。解説している内容をそのまま絵にしても、目を引くものにはなりにくい。解説のポイントとなるキーワードから発想を広げるために、担当者と二人で大喜利や連想ゲームのようなことをしながら、アイデア出しをしています。

 『広告朝日』20号の表紙のテーマは、「お祝い」です。「セレブレーションアド」という特集内容と、発行20号という節目の号であることを踏まえ、できるだけ華やかな絵を描こうと考えました。華やかさの象徴として花を選び、お祝いムードを盛り上げるために、女の子やウサギなどの動物たちが楽器を弾いているシーンも描きました。

 女の子と獣が一緒にいる絵は、日頃からオリジナル作品として描いています。女の子と獣を組み合わせる理由は、女の子の生々しさや危うさなど、内面的なものが表現できると考えているからです。

『広告朝日』20号表紙

──仕事をする上で大切にしていることは。

沼田氏 沼田光太郎氏

 目指しているのは、期待以上のものを提案すること。クライアントのニーズや伝えるべきポイントは押さえつつ、新しい切り口や面白い表現がないか、あらゆる角度から検討します。アイデアを考えることは得意で、イラストを描くのと同じくらい好きなんです。

 アイデアに行き詰まったら、とりあえず外に出るようにしています。2,3時間ひたすら散歩したり、銭湯に行ったり、気分転換を図りながら考えると、思いがけないアイデアが生まれることがあるんです。

──ひねりを効かせた面白い表現が多いですね。

 最近は「何か面白いことを考えて」と任される仕事も少なくない。下手に制限を加えないほうが素直に面白いアイデアを出してくれるかも、と期待されているのだと思います。僕自身も、そのほうが楽しいし、やりがいも感じられる。基本的にギャグ系の仕事が多いので、見た人を喜ばせたいという気持ちも強いです。

 子どもの頃から、物事をひねって見るクセがあります。5人兄弟の3番目という生まれ育った環境も影響しているはず。兄と姉、弟2人に挟まれているので、面白おかしく、ひねったことをしないと目立たなかったのです。その延長で今も、日常の中で何か面白いことがないか常に観察しています。

描きたいのは、ゆるくてかわいい中性的な絵

──イラストレーターとして活動するきっかけは。

学生時代の作品
獣と女の子

 美大を目指していたのですが合格できず、桑沢デザイン研究所に入学してファッションデザインを勉強していました。ただ、すごく不器用で洋服を縫うのもパターンを引くのも、うまくできなかった。だけど、デザイン画だけは先生に褒められたんです。それでイラストレーターという職業を意識するようになりました。

 けれども、自分の将来について深く考えていなくて、就職活動もせずに卒業。気づいたらフリーターになっていました。このままではまずいと思い、桑沢デザイン研究所の先生に相談しに行ったらイラストレーターを雇っているデザイン会社の求人を紹介してくれました。面接には、学生時代に描いていたデザイン画やファッションイラストを持って行き、すぐに採用となりました。

 それから独立するまで4年ほど働きました。自分の個性を出すのではなく、タッチも含めて指定されたイラストを描くことが仕事でした。だけど、それにうまく応えることができなかった。自分が得意な絵はすぐに描けるけど、そうでない絵は時間がかかってしまい、なじめませんでした。

 その頃から描きたかったのは、ゆるくてかわいい絵。描いている人が男性なのか女性なのか分からない、中性的な絵に憧れていました。その思いが強くなり、独立を決意。2006年からフリーランスとして活動し、今年の4月に法人化しました。

──ターニングポイントとなった仕事は。

自主制作アニメーション: 空中卵かけライス
アニメーション(YouTube)はこちら

 2010年ごろから『R25』というフリーペーパーでイラストを描き始めて、いろんな会社から連絡が来るようになり、仕事が一気に増えました。絵のテイストが決まってきたのも『R25』で描いていた頃です。

 仕事と並行して、自主制作でアニメーションもつくっていました。そうしたら、たまたまNHKで働いている方と出会い、NHK教育テレビ「シャキーン」でアニメーションをつくらないかと声をかけていただいた。そこからテレビの仕事も増えてきました。

 フリーになってから、営業をしたことはありません。『R25』で描くようになったのも、編集プロダクションの社長が何かで僕の仕事を見てくれて、連絡をくれたのがきっかけです。すごく運がよかったのだと思います。


──今後の展望を聞かせてください。

カプセルトイ: 上だけダンディ

 今、描きたいのはファッションイラスト。学生の頃に描いていたファッションイラストは正統派なタッチでした。それと今のタッチと結びつけられないか、いろいろ描いて試しています。2018年の2月にはグループ展に参加して、猫をテーマにしたアート系の作品を出品しました。女の子を描いたオリジナル作品は、インスタグラムに随時アップしています。

 現在、イラストだけでなく、漫画や文章を書く仕事も手がけています。2017年は「上だけダンディ」というカプセルトイのキャラクターデザインも担当し、4コマ漫画や映像なども制作しました。考えたことを絵にするのが得意ですが、それだけに固執せず、今後もいろいろな表現に挑戦していきたいと思っています。

沼田光太郎(ぬまた・こうたろう)

イラストレーター

名古屋市出身。株式会社光太郎代表。2006年よりフリーランスのイラストレーターとなる。自主制作アニメーション「空中卵かけライス」でこどもアニメーションフェスティバル優秀賞。主な仕事に日本テレビ「ZIP!」の「朝だよ!貝社員」のキャラクターデザイン、ダ・ヴィンチニュースで自伝エッセイ漫画「くすぶりの詩」など。

株式会社光太郎Web
https://www.noromastudio.net/

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