クリエーターインタビュー

好きなものから探究 ミニマルでファッショナブルなタッチのイラスト

イラストレーター / アーティスト 長場 雄氏

 企業とのコラボレーションのほか、広告や装丁画、挿絵など、幅広く手がけている、イラストレーターの長場 雄氏。長場氏が描く人物は、ミニマルな表現だが、都会のどこかで暮らしていそうなリアリティーがある。手描きによるゆるやかなタッチと、カジュアルでファッショナブルな世界観が特徴。そんな独自の表現は、自分の好きなものを手がかりに見いだしたという。

Watch(『広告朝日』28号表紙)

自分らしい仕事への憧れ

──長場さんがイラストレーターになったきっかけは。

 美大卒業後、アパレルメーカーにアルバイトとして入りました。オリジナルのTシャツを販売しているメーカーで、僕の仕事は、手描きのイラストからグラフィカルなものまで、Tシャツの柄をデザインすることでした。その後、フリーランスになりましたが、イラストレーターになりたいと思って独立したわけではないんです。主な仕事はグラフィックデザインで、知り合いからイラストの仕事を頼まれると描いていたくらい。ただ、漠然と自分らしい仕事がしたいという願望はあったんです。絵を描くことはもともと好きだったので、イラストのタッチの方向性を模索するようになりました。

 ファッションや映画など「自分が好きなもの」を手がかりにしながら、写実的に描いたりシンプルに描いたり、自分にしかできない表現を探究していました。そしてたどり着いたのが、シンプルな線で手描きする、現在の表現です。奥さんに見せたら、これがいいんじゃないって言われたので、そうしてみようかなと。それで、試しに新しいタッチで描いた作品を個展で発表してみたら、日頃から読んでいたマガジンハウスの「POPEYE」編集部から連絡があったんです。最終的には、表紙に僕のイラストを掲載していただきました。それをきっかけに、イラストの仕事の依頼が多くなりました。それが2014年のことです。

──貪欲(どんよく)に営業してステップアップしていくイラストレーターも多いと思います。長場さんは、そういうタイプではなさそうですね。

Photo Courtesy of All Rights Reserved

 かつて自ら営業したこともあるんですよ。たしかに仕事を得ることができましたが、なんかしっくりこなかった。自分が本当に好きだとか、良いと思うものでないと、どうイマジネーションを膨らませていいのか分からなくて。自分のイラストを気に入ってくれて、作風に合うものをオーダーしてくれるほうが、僕には合っているんだと思います。そう考えると、個展は今の僕を知ってもらうための営業活動とも言えるかもしれません。

 最初の作品集は、自費出版です。よく通っている書店で販売してもらいたくて、代官山の蔦屋書店に自らお願いしました。そしたら、販売だけではなく、展示もさせてもらえることになったんです。

見る人の目を引くためのモチーフ

──ユニクロのUTで「PEANUTS×YU NAGABA」と題したコラボレーションは大きな話題となりました。スヌーピーやチャーリーブラウンなど、キャラクターはもともとシンプルに描かれています。そんなPEANUTSの世界観はそのまま、タッチの違いで長場雄独自の表現に変えました。

 感覚的なんですけどね。実在する人やキャラクターを表現するときは、抽象化したら何が残るか考える。それを抜き出して描くと、特徴をつかむことができると思っています。大切にしているのは、見る人が自然体で見られるように、シリアスになりすぎず、抜け感があることです。

「PEANUTS×YU NAGABA」
「PEANUTS×YU NAGABA」

© 2019 Peanuts Worldwide LLC © 2019 Yu Nagaba

──2019年12月には香港で初個展『MEET YU NAGABA GALLERY – I’M YOUR VENUS』を開催しました。

 ヴィーナスという作品を立体作品にしたいと声を掛けてくれて、その発表とあわせて香港で個展を開催しました。立体作品「I'M YOUR VENUS」のほか、ヴィーナスを感じる有名人やアーティストなどを描いた25点のキャンバス作品も展示しました。現地の方にも注目してもらえて、手応えがありました。

Photo Courtesy of All Rights Reserved

──今回、動画というテーマで描き下ろした作品を、広告朝日28号の表紙に掲載しました。

 僕の絵は、線画で情報量が少なめですが、見る人の目を少しでも引くように、強く伝えたいという思いがあります。そのためのモチーフ選びは、常に意識していることの1つです。今回は『動画』というテーマだったので、動画の再生マークのアイコンを入れることにしました。動画をイメージできる最適なモチーフなので、特集にもぴったりだと思いました。

──長場さんのように活動したいと思っている若手イラストレーターは多いと思います。

長場 雄氏

 2014年に「POPEYE」の表紙に自分の絵が掲載されたことは、とても達成感がありました。ただ、それに満足してはいけないと思ったんです。最近は毎日アップできていませんが、今でもインスタグラムでイラストは日々発表しています。自分の感覚を鈍らさないように、イラストレーターにおける筋トレみたいな感じです。今はSNSで簡単に作品が発表できるので、活用しないのはもったいない。とはいえ、やみくもに描くのではなく、自分が描きたいテーマを決めるといいかもしれません。

 僕自身、個展を開催するとき、各メディアにプレスリリースを送っていました。特につながりがなくてもメールで送ったら、気軽に取り上げてくれたウェブメディアもありました。今も次の個展を企画しています。その個展をきっかけに、また仕事の幅や方向性など、世界が広がるといいなと思っています。

長場 雄(ながば・ゆう)

イラストレーター / アーティスト

1976年東京生まれ。東京造形大学デザイン学科卒業。アーティストとして個展を開催する他、雑誌、書籍、広告、様々なブランドとのコラボレーションなど領域を問わず幅広く活動。過去のワークスに、UNIQLO、ASICS、G-SHOCKとのコラボレーション、その他、マガジンハウス、RIMOWA、Technics、Spotify、Universal Music、Monocleなど国内外問わず様々なクライアントにアートワークを提供している。

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