シニア層をコアターゲットに 新規ビジネスでニーズを掘り起こす

 病院や介護福祉施設への食事サービスを長く提供してきたノウハウを生かし、2012年から在宅配食サービス「食宅便」を展開している日清医療食品。シニアマーケットをどのように捉えているのか。営業本部・在宅配食サービス部課長の斉藤政人氏に聞いた。

冷凍食品を通販スタイルで 新規マーケットを開拓

斉藤政人氏 斉藤政人氏

 日清医療食品の「食宅便」は、冷凍で家庭に届く弁当で、レンジで温めるだけで食べられる。和食・洋食・中華・肉料理・魚料理のラインアップがそろい、塩分やカロリー、栄養バランスに配慮したメニューには、長年病院・福祉・保育施設へ食事サービスを提供してきた同社のノウハウが生かされている。

 料理のおいしさを保つ冷凍技術をはじめ、骨を取り除いた魚、食感が生かされるサイズにカットした野菜、隠し包丁を入れてかみ切りやすくしたイカ・タコなど、シニアの嗜好(しこう)に合わせた食感や食材選びを行い、医療や介護の現場で培ってきた食事サービスのノウハウを詰め込んだのが、「食宅便」の強みだ。

 「在宅配食サービスの市場は、全国に製造・販売拠点を持ち、エリアマーケティングを得意とする外食産業大手やコンビニがけん引してきました。一方当社は、冷凍の商品を通販スタイルで全国に届けるという事業モデルにたどり着きました」(斉藤氏)

 コアターゲットはシニア層、特に料理や買い物が困難な高齢者だ。高齢者医療制度の見直しや介護報酬の引き下げなど、社会保障費を抑制する政策が進むなか、食事サービスを提供する場が病院や施設からシニア層の自宅に広がり、そこにニーズやポテンシャルがあると見込んだ。

 「ただ、事業展開を始めてから、マーケットに気づかされたことが多くあります。シニアをコアターゲットとしつつも、実は忙しい共働き世帯や身動きが取りづらい出産前後の母親からの需要があったり、冬場の北海道・東北地方で売り上げが伸びたりと、『食宅便』利用者の裾野は広がっています」

 広告メディアには新聞を中核に据えている。クリエーティブでは、シズル感あふれる料理写真を打ち出し、「管理栄養士がメニュー考案」「塩分・カロリー控えめ」「1食あたり500円」といった「食宅便」のメリットを伝えてきた。「ずいき」や「九条ねぎ」など、普段家庭では使わないような食材も織り交ぜて、読者の目を引いた。

理解促進型のコミュニケーションで 顧客との長期的関係を構築

 2015年1月12日付で掲載した広告のクリエーティブでは、メインビジュアルを料理の写真から記事体へと変えてみたところ、大きな反響を得た。「企業理念や商品・サービスの詳細など、料理イメージだけでは伝えきれないことがあります。今のシニア層は、ぜいたくを知りながら、一方でとても堅実。よい商品だと理解した上でないと、なかなか財布を開いてくれません。ただ、判断は早くて揺るがず、一度気に入ると長くお付き合いしていただけるうれしいお客様です」(斉藤氏)

 さらに2015年3月8日付では、情感に訴えるショートストーリーをメインに据えた小説体のクリエーティブを展開した。「ストーリーのなかで『食宅便』の利用シーンを描き出しました。記事体も小説体もお客様が納得して、必要だと思っていただくための切り口で、手法や表現は違っても、新聞メディアを通じてお客様に伝えることはまったく同じ方向です」

 継続して購買するシニアは、事前に支払い方法や返品システムなど細かいところまで吟味し、理解に努める傾向が強い。顧客と長い関係を築くには、やはり商品やサービスに対する理解を促すコミュニケーションが不可欠だと、斉藤氏は説明する。

 「お客様から『冷凍食品でもおいしくて、意外だった』という声をよく耳にします。そんな声を聞くと、我々が伝えるべきことはまだたくさんあると思います。読者から高い信頼を得ている新聞メディアは、顧客とのコミュニケーションを図る際の後ろ盾になっていると思います。シニア層をターゲットとする際、特に言えるのではないでしょうか」

画像は拡大表示します。

2015年1月12日付 朝刊 2015年1月12日付 朝刊
 2015年3月8日付 朝刊