日本の文化状況を一覧できる場に

 ジュンク堂書店池袋本店で副店長を務めながら、書店にまつわるエッセーも執筆する田口久美子さんに聞いた。

田口久美子氏 田口久美子氏

―― ジュンク堂池袋本店の特長や書棚作りについて聞かせてください。

 既刊本や雑誌のバックナンバーを含め、大型店だからできる豊富な品ぞろえと、誠心誠意のお客様対応が当店の特長です。現在の日本がどんな文化状況にあるか、書店に来れば把握できるよう、品ぞろえで網羅していることが、大事な役割だと考えています。

 選書や本の並び替えは、各コーナー担当が行っています。例えば私のいる文芸書のコーナーでは、詩、古典、日本文学など、それぞれ専門分野として担当するスタッフが5人ほどいて、在庫確認や取り寄せをはじめ、絶版本に関しては古書店の紹介をすることもあります。私は古典文芸や文芸評論の担当で、一般読者から研究者まで幅広く満足いただけるような選書・接客を心がけています。

―― 作家のトークイベントを開催したり、作家とのつながりを大切にしている印象を受けます。

 作家との絆づくりは書店員が自発的に行っていますが、最近は作家が「サイン本を店頭で届けたい」と、書店回りを希望するケースが増えています。また来店情報を、ソーシャルメディアを活用して自らPRする作家もいるなど、作家とファンのリアルな絆づくりの場に書店が活用されています。

 そうした新しいコミュニケーションは大変便利ですが、読者がソーシャルメディアから得る情報は自分の興味が中心です。やはり、どんな本がどの出版社から出版されているのか、どんなことが世の中で注目されているのかといった、大きなとらえ方を提示していくことが大切だと思います。

田口久美子(たぐち・くみこ)

ジュンク堂書店池袋本店 副店長 文芸書担当

1973年キディランド八重洲店で書店員としてのキャリアをスタート。97年ジュンク堂池袋店に入社。著書に『書店不屈宣言』『書店風雲録』など。