日本と海外文化が融合した街・銀座をイルミネーションで明るく照らす

 2002年、銀座通りと晴海通りに店舗を構える海外のラグジュアリーブランド7社が協力し、銀座のさらなる認知向上と活性化を図るために設立されたGILC(ギルク)。現在、代表を務めるジョルジオ アルマーニ ジャパン代表取締役社長の笹野和泉氏に、GILCの活動や外資系ラグジュアリーブランドから見た銀座について話を聞いた。

銀座の老舗との共存を図り イベントで街を活性化

笹野和泉氏 笹野和泉氏

──GILC設立の背景は。

 銀座は昔から海外文化の発信地として知られますが、1990年代半ばから2000年代にかけて、ティファニーやエルメスなどの外資系ラグジュアリーブランドが次々と旗艦店を出店しました。そこで、「昔から銀座に店を構え、銀座を愛する人たちと共に街の発展を目指したい」という思いから、GILCが設立されました。GILCは銀座通連合会に属する委員会で、現在15社が参加しています(※)。

──具体的な活動内容は。

 国際的で文化的な銀座を国内外に向けてアピールするために、設立の翌年から文化イベントを行っています。2003年には、ファッション雑誌『VOGUE』とのタイアップで、「銀座の今と昔」をテーマに写真展を開催。04年は、銀座通りを桜の木で飾る「GINZA SAKURA AVENUE」を開催しました。

 05~10年は、街の各所でジャズが聴ける「ギンザ・インターナショナル・ジャズ・フェスティバル」を開催。かつて、有楽町から銀座にかけてジャズクラブがたくさんあったことから、銀座とジャズのいい関係を再認識してもらおうと企画したものでした。ジャズフェスティバルは、海外文化の窓口としての銀座を象徴するイベントとして大変好評で、毎年足を運んでくださるファンもいらっしゃったことから、6年続きました。

──2011 年からイルミネーションを行っています。

 そして、より多くの方に認知してもらえる取り組みとして「ギンザ・イルミネーション」プロジェクトを2011年から立ち上げるべく準備を開始したのですが、その矢先に東日本大震災が起こり、計画を一時見合わせることになりました。 

 震災以降、銀座は「明かりの消えた街」として何度もテレビニュースに映し出されました。実際、節電のために多くの店舗が明かりを落とし、渋谷や原宿など他の繁華街に比べてもなかなかにぎわいが戻らなかったのです。「悲惨なことがあった後に楽しんではいけない」と自粛する大人が集まる街ゆえの現象だったと思います。

 そうした状況だったからこそ、私たちは、「銀座に元気を取り戻すことは、日本を明るくすることにつながる」という思いで、を再計画しました。期間中、GILC参加社、及び趣旨にご賛同いただいた店舗に募金箱を設置し、集まった募金をユネスコ協会の「東日本大震災子ども支援募金」に寄付することも決めました。社会的な目的が加わったことで、以前よりも協賛社が増え、大手企業の協賛もいただくことができました。

 3回目を迎える今年は、銀座通連合会の中に「イルミネーション委員会」を設置。準備段階から街の各店と連携し、“オール銀座”体制で実施することになりました。

銀座ジャズフェスティバルから 銀座ジャズフェスティバルから
(c)2009GILC
ギンザ・イルミネーション ギンザ・イルミネーション
(c)2012GILC

伝統を守り、新しさも受け入れる手づくりの街

──銀座という商圏をどのように捉えていますか。

 長い歴史を大事に守りながらも、新しい要素を受容する懐の深さがある街だと思います。外資系ラグジュアリーブランドも、最近増えてきたファストファッションブランドも、今や街の文化の一部です。歌舞伎座があり、数々のグルメの名店があり、おしゃれをして出かけるのが楽しい、「ハレ」の場所だと思います。

 若者だけをターゲットとした街や、流行の店がひしめくエリアは、ある程度の年齢になったり、趣味が変わると行かなくなってしまうものですが、その点、銀座は様々な世代を満足させてくれるので、お客様が“卒業”しない普遍の街だと思います。

──「アルマーニ銀座タワー」は2007年にオープンしました。

 ジョルジオ アルマーニは、流行に左右されない本当に上質な品、いつまでも変わらない価値を追求し続けているブランドです。そうした思想を伝える上でも、本物志向の人たちが集まる銀座に旗艦店を構えることには大きな意味がありました。建設に際しては、日本のスタッフが、銀座のブランドとしての位置づけを本国に伝え、アルマーニ本人がこのタワーの建設を決断しました。

──銀座で営業する上で特別に配慮していることはありますか。

 外国人のお客様も多く、言語や国のバックグラウンドを踏まえたサービスを心がけています。また、せっかく店舗にいらしたお客様を裏切らないような接遇を徹底しています。品ぞろえは、初めてのお客様からリピーターのお客様まで幅広いニーズにお応えできるように、国内一を誇っています。

──最近の銀座について、感じることは。

 近年はやはり、外国人観光客がとても増えました。以前は中国の方が多かったのですが、ここ数年は、東南アジア、インド、中近東の方も目立ち、ますます国際化が進んでいます。
また、東京駅から有楽町駅にかけて再開発が進んだこと、歌舞伎座の建て替えが終わったことなどもあって、人の流れが以前にも増して活発化しているように思います。旧銀座東芝ビルの建て替え事業、銀座6丁目地域の再開発なども、新しい人の流れを生むのではないかと期待しています。

──銀座の老舗の商店と連携していく中で、発見したことはありますか。

 六本木や丸の内のように大手ディベロッパーが巨費を投入して物事を動かしている街と違い、銀座は複数の商店が協力し合いながら発展に努めています。銀座に店舗を構えている人々は、治安、衛生、美化のため、自分たちで日々努力しています。手づくりの街だからこそ、画一的ではない、独特の街並みが守られているのだと思います。

──GILCの今後について。

 銀座に相次いで進出してきた外資系ラグジュアリーブランド各社も、ようやく銀座の街に受け入れてもらったように思います。そういう意味ではGILCの当初の目的は達成したと考えています。今後は「銀座を応援するGILC」ではなく、銀座の一員として、街の活性化を目指していきたいですね。 
「ギンザ・イルミネーション」は、今年も11月末から来年1月上旬まで開催予定です。今回からGILCの上部組織である銀座通商店会の主催に替わります。現在、協賛社を募集中ですので、よろしくお願いします。

※GILC加盟社[Alfred Dunhill / Burberry / Bulgari / Cartier / Chanel / Giorgio Armani / Gucci / Harry Winston / Hermes / Longchamp / Louis Vuitton / Montblanc / Salvatore Ferragamo / Tiffany & Co. / Van Cleef & Arpels(アルファベット順)]

笹野和泉(ささの・いずみ)

Ginza International Luxury Committee (GILC) 代表 / ジョルジオ アルマーニ ジャパン 代表取締役社長

1958年東京生まれ。81年3月早稲田大学政治経済学部卒。同年4月ソニー入社。85年~00年欧州に赴任し新規ビジネス立ち上げに携わる。85年3月エセック(仏・経済商科高等大学院)卒。00年2月シャネル入社。ファッション本部長。06年9月ジョルジオ アルマーニ ジャパン入社。取締役社長。09年3月より現職。08年よりGILC代表。