「ハローキティ」など人気キャラクターを有し、店頭から世界へと展開

 「ハローキティ」をはじめ、数々の人気キャラクターでグローバルにライセンスビジネスを展開するサンリオ。取引のあるライセンシーは約450社、ライセンスアイテムは2万点にものぼる同社のビジネス戦略について、取締役ライセンス事業本部長の佐々木章人氏に聞いた。

ライセンスビジネスの発端は消費者のニーズ

サンリオ 佐々木章人氏 サンリオ 佐々木章人氏

──御社のライセンスビジネスの成り立ちについて、聞かせてください。

 当社の創業は1960年。社長の辻信太郎が著作権ビジネスにいち早く目をつけ、オリジナルの絵柄を入れた陶器や文具を販売。最初にヒットしたのはイチゴの絵柄で、以来、「パティ&ジミー」「ハローキティ」「リトルツインスターズ」など数々のキャラクター商品を生み出してきました。当初の販売ルートは主に問屋でしたが、売る環境もデザインしたいと考え、全国各地に直販店をオープン。百貨店や量販店にも進出する中、消費者のニーズは、布団、自転車、レトルトカレーなど、生産していない分野にまで拡大。「消費者が求める商品を、高品質、優れたデザイン、リーズナブルな価格で提供する」という企業ポリシーを実現するため、布団なら西川産業、自転車ならブリヂストン、レトルトカレーなら大塚食品と、一流専門メーカーと組んで商品を作るようになりました。

──キャラクターの価値をどのようにとらえていますか。

 当社が掲げるスローガンの中に、「スモールギフト・ビッグスマイル」という言葉があります。愛着のあるキャラクター商品にグリーティングカードを添えて贈ったり、贈られたり。ほんの小さな贈り物でも、贈った人、贈られる人、双方が幸せになり、友情が育まれる。そうした心の通い合いこそがキャラクターの生む価値だと考えます。

──ライセンシーとの関係性をどのように構築していますか。

 ライセンシーにリスクを負わせない、長くつきあえる関係を理想とし、実際、現在おつきあいのあるライセンシーのうち半数以上は20年以上も関係が続いています。最も重視しているのは、高品質、優れたデザイン、リーズナブルな価格にどう近づけるかで、ライセンシーと一緒に知恵を出し合い、具現化しています。当社独自に市場調査をかけ、ライセンシーに報告したりもしています。

 また、自分たちが作りたい商品は企業に提案もします。例えば、社内でキティ柄のカマボコを作りたいという案が出た時は、最大手の紀文にアイデアを持ちかけ、商品化に至りました。


店頭を核にコミュニケーション
最大の強みは、企画力と販売力

──御社のライセンスビジネスの特徴、強みは。

 商品企画の打ち合わせには当社のデザイナーも立ち会い、ライセンシーの要望をできるだけ形にできるように努めています。また、「このキャラクターはこう扱ってほしい」と押し付けるのではなく、売れ筋のデザインや色など、業種それぞれのノウハウを勉強させていただき、くみ取るように心がけています。

 自社製品も作っているので、ノベルティーグッズや販促品などは当社の製造委託先で安く高品質なものを作ることもできます。「ハローキティ」など人気キャラクターのノベルティーグッズや景品を作った企業からは、「集客につながる」「お客さんが喜んでもらってくれる」という評判が返ってくることが多いですね。

 最大の強みは、直営店約150店、百貨店店舗約150店、量販店を含めて約1,300店の店舗を持ち、ここでライセンス商品の販売ができることです。例えばテレビアニメになっている「ジュエルペット」というキャラクターも、店での実績があるのでライセンシーにも安心して商品を作ってもらえる。一般的なテレビアニメのキャラクターだと視聴率や当たり外れの予測が難しい面がありますが、当社のキャラクターは店で人気の程度がはかれるわけです。

──ライセンスビジネスの新しい事例をいくつか教えてください。

 「ハローキティ」ファンの女の子が「キティラー」と呼ばれて久しいですが、近頃は「キティ男(お)」という言葉も生まれていて、キティ柄の男性用サンダルが飛ぶように売れたり、「ATMOS」という“裏原系”のメンズショップでキティ関連の衣類が好評だったりと、男性のニーズが急増しています。

 ここ数年はグローバルな展開も増えています。最近では、電子楽器の大手メーカー「KORG」がキティ柄のチューナーを作り、ワールドワイドに販売しています。「ハローキティ」に関しては、マライア・キャリー、浜崎あゆみ、X JAPANのYOSHIKIなどセレブリティーのファンも多く、コラボレーションの引き合いが後を絶ちません。最近では世界的に有名な写真家のレスリー・キーの作品に起用されるなど、多くの大人の心をつかんでいます。

2009年11月1日 朝刊 2009年11月1日 朝刊

──昨年「ハローキティ」は誕生から35周年、今年はサンリオ創立50周年です。周年の取り組みについて聞かせてください。

 「ハローキティ」35周年では、イベントや、記念商品を発売したりするなど、店頭プロモーションに注力。スワロフスキー社など海外ブランドとのコラボレーションも行いました。

 サンリオ創立50周年では、ストロベリーデザインの復刻商品をはじめ、過去50年で生まれたキャラクターを生かした商品や記念アイテムを作り、こちらも店頭プロモーションに力を入れています。その他、海外でのイベントも企画しています。

──御社のCSR活動にもキャラクターが一役買っていますね。

 赤十字、ピンクリボン、子宮頸(けい)ガン予防啓発運動などに「ハローキティ」を使っていただいたり、当社も独自に、キティが全国の病院や養護施設を回ったりしています。ずっと表情のなかったお子さんがとびきりの笑顔を見せてくれた、という話もあり、そのたびにキャラクターの持つ不思議な力を感じています。

──ライセンスビジネスにおけるメディア活用は。

 当社は、地道に何十年にもわたって店頭プロモーションを続け、クチコミで大きくなってきた会社で、「店が広告媒体」という意識が強いんです。ですからメディア活用はわりと少なく、雑誌とのタイアップ、テレビ番組とのコラボレーションなどを展開する程度です。昨年来は周年記念の情報を中心に新聞広告で告知。大変好評で、売り上げに大きく反映されました。

──今後の抱負を聞かせてください。

 まず、グローバル化をさらに進め、世界的に活躍している企業と組んでライセンスビジネスを広げていきたいと考えています。また、当社は独自の販売チャネルを持ち、キャラクターの商社として機能できるインフラも整っています。すでにセサミストリートやピンクパンサー&パルズなどを取り扱っていますが、今後も自社のキャラクターにこだわらず、多様なキャラクターを扱っていきたいと思います。さらに、低年齢層のニーズの獲得を確実に行っていきます。「ハローキティ」の成功もそれが原点なので、地道な店頭プロモーションを変わらず続けていくつもりです。