「販促メディア」として注目されるマスメディア

 『販促会議』は、今年の10月号で「マスコミヒット商品二番戦略」と題し、販促媒体としてのマスメディアの可能性について事例を追いながら特集した。売り場や消費者に密着した視点から、マス4媒体の可能性を見直す試みは販促の専門誌である同誌としても珍しく、マスメディアの担う役割の多様化を実感させた。編集長の赤澤可奈氏に聞いた。

 

新聞の持つ、圧倒的なリーチとメディア資産の活用を

――今、「販促メディア」としてマスメディアが注目されている理由は何でしょう。

 背景にあるのは、消費者、広告主、メディアそれぞれの変化です。消費者の変化として挙げられるのは、情報接点の多様化です。これまではテレビや新聞で商品を知り、中吊りでそれを見つけ、店頭のPOPが後押しになるといった、認知から想起、購入に至るプロセスがある程度一定でした。しかし現在は、必ずしもそうではありません。ブログやSNSなどの登場で情報接点が多様化し、すべてのメディアの役割がフラットになりました。

 広告主の変化では、ブランディングに加え、より直接的に購買に結びつく使い方をマスメディアでもしたいという意向の強まりがあります。そしてマスメディア側も、従来とは異なる媒体の使い方や、自社のさまざまな資産を連携させた新しい提案を積極的に行っています。これらのことから、「認知メディア」とされてきたマスメディアが、販促や集客、PRなど様々な目的を持って使われる状況が生まれたと思っています。

――販促という視点から見て、マスメディアのどのような点が強みになるとお考えですか。

アース製薬のエリア広告(タブロイド版)。マスクを張り付け、ターゲット層の居住エリアに配布 アース製薬のエリア広告(タブロイド版)。マスクを張り付け、ターゲット層の居住エリアに配布

 マスメディアの最大の強みは、昔も今も圧倒的なリーチを持つことです。これは「誰もが知っている商品を生む力」ともいえます。食の安全の問題や景気の停滞などの影響で消費者が購買に慎重になっている現在、マスメディアが商品に与える「安心感」や「信頼性」は、直接的な購入の決め手になる力になります。

 特に新聞に関していえば、宅配網のネットワークと販売店単位で持つ顧客情報を生かし、細やかなターゲティングができることが強みです。また新聞の持つ資産を生かしたプロモーションには、新聞社主催の文化事業やスポーツ事業もあります。消費者が感情移入できるコンテンツと深く連動ができれば、商品と個人を近づける力が生まれます。

――特に朝日新聞の活動に対して印象は。

 朝日新聞では、販売店の機動力や対応力を生かした斬新な企画が目立ちます。例えばアース製薬の高機能マスク「ウィルガード」を張り付けて配布したエリア広告の事例は、編集部でも話題になりました。ターゲット層が多く住むエリアを細かく選定し、新聞の持つ信頼性によって商品を確実に手に取ってもらうこのプロモーションは、商品と消費者の距離を近づける非常に有効な展開だったのではないでしょうか。

 また、販促では顧客接点のお店を起点に考えることが重要です。紀ノ国屋インターナショナルと手を組んで、旬の素材を生かしたレシピを毎週掲載するコーナー「おかず100選」の店頭ツールに活用されている事例は、記事をお店に飛び込ませることで情報を商品のすぐそばに置き、新聞を読まれない方にも朝日新聞のコンテンツ力が効いている例だと思います。新聞の持つ時代の空気を作る力、今日の話題を作る力をより有効に活用すれば、情報を2次的、3次的に広げることができます。

朝日新聞に毎週掲載している「おかず100選」を、紀ノ国屋インターナショナルでは店頭ツールとして活用

――より販促に有効なメディアとなるために、朝日新聞に今後望むことは。

 販促の分野でも、最近ではコーズマーケティング的な手法が導入されています。新聞には大きな社会問題を地域・個人の関心事に落とし込む力があります。例えば大企業が環境保護に絡めたキャンペーンを行う時にも、地域の販社が購買の現場でいかに伝えやすくするかが実は重要です。今後は、新聞社の持つコンテンツや販売力のネットワークを活用し、ソーシャルなキャンペーンを消費者レベルに引き寄せて、商品との出会いの場を作れれば、今日的で新聞社らしい販促キャンペーンが生まれると思います。