そのままになっていた、新聞の販促媒体としての「宝の山」

 今年4月、電通は同社のプロモーション事業局と販促系のグループ企業である電通テックのスタッフ約130名を統合し、約270名からなるプロモーションセンターを新たに編成。クライアントニーズの高まっている販促事業に、電通グループは総力で取り組む構えだ。同センターのプロモーション事業局長の村井知哉氏に聞いた。

――プロモーションセンター設立の経緯をお聞かせ下さい。

 プロモーションというのは、多様な概念のある言葉です。一般的にはイベントや店頭ツールなどが思い浮かぶかもしれませんが、これらは手法であり、ソリューションの提案ではありません。我々はマスメディア以外の販促ツールを作るセクシションではなく、モノの売れない時代にお客様が課題を抱えている中で、提供できるソリューションを考えるところからスタートするセクションとして組織されました。

 我々の立場はマス広告の活用にとらわれていないものの、マスメディアそのものの力は重要視しています。メディアパワーは今も落ちてないと思っていますし、メディアの力を借りなければ、プロモーションをパワーアップさせることができないからです。ただし、メディアの力をどうプロモーションに生かすかという点については、従来のクロスメディア手法ではなく、まったく新しい提案力が問われていると思います。

 

必須条件は売り場起点の発想と、デジタルの活用

――クライアントの課題に、どのようにアプローチしますか。

 具体案はケースバイケースですが、専門領域としては、大きく2つの柱があります。1つ目は、売り場を起点に発想すること。今日のお得意様の要望は、店頭展開をプランの中に入れることがほぼ必須です。そこで、電通のもつ流通、店頭リテールにおけるマーケティングノウハウを駆使します。そして2つ目は、デジタルです。例えば電通では「デジモーション」という、QRコードなどを使ったマス広告とDMと連動させる仕組みの特許を持っています。

 また電通が「AIDMAからAISASへ」と提唱して久しいですが、いずれの消費行動モデルも売り場での購買に関しては、2番目の行動のA(Action)に集約しています。そこを深掘りして、売り場での消費行動をいかに活性化するかを考えます。あるいはお得意様の課題がより購買に近いところにあった場合は、最初からテレビCMを作るといったことではないアプローチが当然必要です。課題抽出のところからプレゼンができるクリエーティブチームが必要ですし、そのために販促に強いクリエーティブスタッフ約40名が、当プロモーションセンターに加わりました。

――新聞メディアのプロモーションにおける可能性をどうとらえていますか。

 これまで新聞は「知らせる媒体」として力を発揮してきましたが、その先にある「販促媒体」としての有効な使われ方がされてこなかったわけではありません。例えば資料請求などで高いレスポンスが望める「見込み客」を引きつける力。また通販広告は、新聞の信頼性を利用して、直接的に読者を購買に向かわせる力を発揮します。ただこれまでは、メディアも企業も私たち広告会社も、ともするとその大きな可能性に気づいていませんでした。プロモーション手法が高度化している中で、そこにマスメディアを組み合わせることで、より力強いメッセージ力が生まれると思います。

 朝日新聞が持つ販促に生かせる資産としては、良質な読者層、優れた編集者、そしていわずもがなの信頼力やブランド力があります。また、「朝日新聞」の題字が信頼性を高める抜き刷りを店頭に置き顧客誘引や売り場の活性化に利用したり、デリバリー機能を「知らせる」から「買わせる」に転換し、さらに「買わせ続ける」というアプローチも、世帯に密着した販売店には可能性があります。その媒体資産をリスト化すれば、おそらくレポート用紙1枚では収まらないでしょう。思わぬ資産も有効に生かせば大きな効果が得られるのが、プロモーションの醍醐味(だいごみ)です。