高反響コラムの著者に聞く 購買につながるメディア活用術

東海左由留 東海左由留

 朝日新聞夕刊に連載中のコラム「至福の一品」では 毎日の生活でひんぱんに使う、国内外の優れたアイテムを紹介しています。取り上げる選択基準は「日々の生活をより豊かにしてくれるアイテム」この一点につきます。

 掲載アイテムの大半は、自ら買った愛用品。自信を持って読者におすすめできると確信したものだけを紹介しています。さらに、メーカーや取扱企業には、機能を中心に細かく取材。私自身の使用感という「主観」だけでなく、優れた製法やデザインなどの「客観情報」の裏付けを必ず取っています。

 また、取材先すべてに1~2週間後に反応をヒアリング。その結果から、読者が求める商品領域や特性の傾向がわかり、今後の記事の参考になるからです。連載開始からしばらくして、読者からの問い合わせと紹介商品の購買が急増。長期連載による認知度と信頼性アップの手応えを感じています。

 読者の反応がもっとも多かったのは万能クロスの「セーム革」(春日)で、1週間で4,000個を超す販売。最近の例では、「フェリージのバッグ」(FIGO)。49,350円と高額でしたが、発売2週間で100点以上販売し完売となりました。また、60,000円近いチロリアンシューズ「ミカエル」(パラブーツ)は発売翌日から、伊勢丹メンズ館で毎日5~10足、コンスタントに売れ続け、全国で累計200足以上売れたと聞いています。その他、「これまでにない反応と販売数だった」と、ほぼ全社が答えています。

 興味深いのは、「朝日新聞の読者の反応が、他媒体の掲載時と大きく異なる」と答える取材先が非常に多い点です。一つは、「朝日新聞の記事を見て」という問い合わせと来店が多いこと。二つ目は、反応期間が非常に長いこと。半年~1年後でも来店と購買が続くそうです。三つ目は、問い合わせ・来店する読者の7割が40~60代の女性で、ゆとりを感じさせる人が多いこと。ビジネスクラス機内誌の掲載時の反応と似通っているという意見が寄せられています。

 広告には掲載主側が「売りたい商品」を紹介し、性能やスペックで、生活者を説得するという目的があると思います。僭越(せんえつ)な意見と重々承知していますが、もしそれが生活者への情報の押しつけとなってしまうと、読者は敏感に見抜き、購買意欲が萎(な)えるようです。

 連載を通して感じるのは、朝日新聞の読者は「良いモノを見極める着眼点や買い物の仕方」を知りたいという知的好奇心が、他媒体に比べて、格段に高いということです。この知的欲求を満たし、期待を裏切らないアイテムを紹介し続ける。これが、生活品評論家である私の役割だと考えています。

朝日新聞夕刊で毎週月曜連載中の「至福の一品」

1/28 夕刊 1/28 夕刊
4/7 夕刊 4/7 夕刊
5/19 夕刊 5/19 夕刊
東海左由留 (とうかい・さゆる)

1965年生まれ。生活品評論家、企画編集プロダクション・SCRIVA代表。

世界の優れたアイテムを愛し、自らの使用感を伝えている。モットーは「自腹購入」。2007年3月より、朝日新聞夕刊で「至福の一品」のほか、『日経ヘルスプルミエ』(日経BP社)で「生活逸品」を連載中