求人と広報がリンクした企業広告の新しい可能性

 インターネットの検索性と双方向性を活用し、学生の企業アプローチ手法を変えた就職情報サイトは、今や就活に不可欠な情報ソースだ。ただし膨大な情報が集積する中で、個々の企業への学生の関心を喚起し、有効なマッチングを図るための新しいアイデアも求められている。毎日コミュニケーションズが運営する大手就職情報サイト、「マイナビ」の栗田卓也編集長に、就職情報サイトの現状や求人市場全体への提言をうかがった。

早期化が進む企業のアプローチ

── 近年の求人状況を、どうご覧になっていますか。

 空前の売り手市場といわれるここ数年の背景には、労働力人口の減少という将来予測があります(図1)。景気の影響もありますが、それ以上に「若い層を採らなくては、自社の活性化や存続すら危うい」という企業の意識が、新卒、第二新卒の採用を押し上げています。

 また少子化の影響もあり大学進学率が高まった結果、学生の実力が二極化しているという声も聞かれます。大学のブランドを手放しで能力の証明とみなさず、学生の実力や質を重視する採用方針へと変化してきています。

 (「労働力需給の推計── 労働力需給モデル(2007年版)による将来推計」 :2008年3月 独立行政法人 労働政策研究・研究機構)
(注)1.「 労働市場への参加が進まないケース」は、若者の労働力率が2006年と同水準で推移した場合
2.「 労働市場への参加が進むケース」は、各種の雇用施策を講ずることにより、若者の労働市場への参加が実現すると仮定したケース

── 就職情報サイトの現状から見られる市場の変化はありますか。

 掲載社数が非常に伸びていることに加え、早い時期からの採用情報の掲載が増えていることが近年の傾向です。現在マイナビに掲載いただいている企業数は約8,000社ありますが、学生が認知する企業は非常に少なく、就活のスタート段階で名前を知っている企業が30社程度という学生も珍しくありません。そこで、学生に早くからアプローチし、初期認知を高めようという動きが加速しています。

 就職情報サイトは情報の息が長い媒体ですが、昨年は企業へのエントリーがスタートする3年生の10月初めからの掲載が約4,000社ありました。

マイナビ2009 マイナビ2009

── 学生と企業のミスマッチを防ぐためのサイト側の取り組みは。

 就職情報サイトは、当初の企業インデックス的な役割から、学生の企業研究ツール的な役割へと機能を拡充させてきました。そのことが、エントリーの意味を資料請求と同様のものにしたともいえます。

 マイナビでは学生に企業をきちんと理解してから説明会や入社試験を受けていただこうと、昨年から「企業マイページ」という機能を設けました。これはマイナビからエントリーした学生にのみ公開される企業ページで、学生に最低限知っておいてほしい情報などを発信することで、学生の意識を醸成したり、セミナーの参加率を上げる効果がでています。

学生の関心高い社会貢献度

── 情報を規格化し、比較できるようにする機能性が特徴でもあるネットにおいて、企業の初期認知をどう高めますか。

 情報を早く載せるということ以外でいえば、文字情報だけではなく、ビジュアルを重視した訴求が増えています。例えばフラッシュを利用したり、企業イメージを高めるために動画を工夫したり、マイナビが発信するメールに企業広告を添付するといったことが行われています。

 その他に弊社では、交通広告など他媒体を使った広告や、学生に配る制作物の企画制作などを通じて、企業ブランド構築のお手伝いを行っています。初期認知の向上を切実な問題ととらえているのは、BtoB企業だけではありません。全体の雇用意欲が高まっていますから、企業の魅力をいかに伝えるかというのは、どの企業にも重要なテーマです。

── ネット情報とは異なる角度から、就活で新聞広告が果たせる役割をどのようにお考えですか。

 ネットと異なる新聞メディアの大きな特長は、情報に「重み」をもたせられることだと思います。例えば最近の学生は、企業を選ぶポイントに「人の役に立つ仕事がしたい」、「社会貢献に積極的な企業で働きたい」といったことも重視しています(図2)。社会貢献は、情報の信頼性と共に読むことで理解を促せる新聞広告の特性が生かせるでしょう。

 また、就活のスタートと共に新聞を読む学生は今も多く、私たちも社会を知るという意味において、学生たちに新聞を読むことを勧めています。

── より効果的な採用活動のために、企業コミュニケーションはどう変わっていくと思われますか。

 対外的に伝えたい企業イメージについて、従来は人事と広報の意見が食い違うものでしたが、最近は、求人を目的とした広告と、企業広報的な広告が接近した気がします。採用の方法も多岐にわたり(図3)、セミナーや面接の場でも、広報の予算で自社の商品を学生たちに配る企業も増えています。

 求人活動が企業広報の一環であり、自社に対して興味をもって集まった学生たちを、重要な成長マーケットとしてとらえる動きは、今後さらに高まっていくのではないでしょうか。新聞広告は企業広告と採用広告の両者に豊かなノウハウをもつわけですから、両者を効果的にリンクさせた、新しい表現の可能性があると思います。