「お客様目線を大切にする」という先代のポリシーを堅持し、商品とのうれしい出会いを創出する

 今年創業30周年を迎えたジャパネットたかたを含む8社体制で事業に取り組むジャパネットホールディングス。昨年1月に社長に就任した髙田旭人氏に、今後の取り組みについて聞いた。

髙田旭人氏 髙田旭人氏

──経営において重視していることは。

 父はテレビショッピングのパフォーマンスの高さで知られましたが、その真骨頂は、「お客様目線を大切にする」という確固たる信念です。短期的な利益が期待できる商品でも、お客様の暮らしを長く幸せにするようなものでなければ売らないということを徹底していました。30年続くその企業文化を堅持し、発展させていきたいと思います。ちなみに社長交代後は経営の一切を委ねてもらっています。社内の制度改革などについて先代は「思い切ったことをやるね」と言うくらいで、全面的に応援してくれています。

──国内外のネット通販が利用者を拡大しています。

 当社が提供するのは、「出会うつもりがなかった商品とのうれしい出会い」です。それは、書店での本との出会いに似ています。ネット通販で本を買う時は、たいてい買いたい本が決まっていて、具体的な書名や著者名を入力してダイレクトに買い物画面に進みます。一方、書店では、自分とは縁のない分野のタイトルが自然と目に入り、好奇心で読んでみると、思いがけない感動や知識に出合えたりする。「知ったおかげで世界が広がった、人生が変わった」と思うこともあります。この偶然をいかに創出し、後悔しない出会いにできるか、ということを常に意識しています。

 ネット通販は、品数を増やそうと思えばいくらでも増やせて、その一つでも売れれば数字に反映されます。バイヤーはなるべく多くの品を並べたいところですが、当社は品数を増やすよりむしろ減らし、厳選商品のみをお届けしています。品数を絞って全商品の在庫を抱えられれば、スムーズな納入が可能になる。在庫が多く残るということは目利きが悪いということですから、バイヤーは品選びの目をさらに磨く必要が出てきます。そうした仕組みを通じて差別化を図っています。

 また、自社のMCとCM制作スタジオを持つ強みを生かし、全商品に動画をつけて商品説明を丁寧に行うなど、通販サイトの拡充も図っていきたいと思います。

──社長就任後、残業時間短縮、ノートPCへの切り替えなど、新たな施策を次々打ち出しています。

 残業時間短縮と休暇の拡大は、社員の働く意欲の向上と労働の効率化を目指した取り組みです。私は、思考力や感性を養う時間を作ることで、労働の効率やスピードは高められると考えています。社員の健康増進プロジェクトも開始し、全社禁煙にした他、社員食堂にタニタ様のヘルシーメニューを導入しました。口で唱えるだけでなく、制度や環境の整備を通じて企業体質の強化を図っています。

──この9月、初の体験型店舗「ジャパネット レクリエーション ラボ」を「マリノアシティ福岡」に開設しました。

 おかげさまで多くのお客様が足を運んでくださり、売れ行きは予想を超えています。ただ直営店の目的は、売ることではなく、商品をじかに見て触って試していただいた感想を直接うかがうことです。生の声を商品改善や制作などにフィードバックしていきたいと考えています。

──有望視している商品や分野はありますか。

 近年は、旅行、ウオーターサーバーの定期便、エアコンクリーニングなど、体験やサービス、メンテナンスの提供にも力を入れています。今後も領域にとらわれず、日々の暮らしを楽しく豊かにする商品を発掘し、お届けしていきます。

──ご自身のキャリアを振り返り、どのような経験が今に生きていますか。

 福岡で7年間、コールセンターの仕組みづくりに携わったことは、自分にとって大きかったです。最初の2年で「上司に替わってほしい」という問い合わせはすべて記録に残すシステムを構築し、週末はその問い合わせ一つ一つに目を通していました。厳しい声もあって落ち込むこともありましたが、お客様の声がいかに大切か身にしみた7年間でした。

──社長就任から1年10カ月が経ちました。今後の展望について一言。

 経営者としての私の手腕が問われるのはこれからです。成長はもとより、お客様、取引先様、社員、当社にかかわるすべての人がハッピーになれるような会社づくりに邁進(まいしん)していきます。

──愛読書は。

 日清食品の安藤宏基社長が、創業者である父・百福氏との確執や二代目の苦労を赤裸々につづった『カップヌードルをぶっつぶせ!創業者を激怒させた二代目社長のマーケティング流儀』は、自分の境遇と重なる部分が多分にあり面白かったです。あとは『静かなリーダーシップ』。ここに登場する地味で地道なリーダー像に励まされ、自信をもらいました。

髙田旭人(たかた・あきと)

ジャパネットホールディングス 代表取締役社長

1979年長崎県生まれ。東京大学教養学部卒。2002年野村証券入社。04年ジャパネットたかた社長室室長に着任。10年ジャパネットコミュニケーションズ代表取締役社長。12年ジャパネットたかた取締役副社長兼ジャパネットコミュニケーションズ取締役。15年1月から現職。

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(全国版掲載。各本社版で、日付が異なる場合があります)

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