飲料ビジネスの強みをバネに、新しい事業にチャレンジ

 「ダイドーブレンドコーヒー」「贅沢香茶」「miu」など、飲料の分野で個性的な商品を持つダイドードリンコ。2010年の構造改革を経て、新しい領域でのビジネス拡大を図っている。代表取締役社長の髙松富也さんに聞いた。

 

髙松富也氏 髙松富也氏

──創業以来、継承していることは。

 「人と、社会と、共に喜び、共に栄える。」という理念です。商品においては、「本物のおいしさ」と「ダイドーらしさ」を守り続けています。

 「本物のおいしさ」というのは、例えば、売り上げの約5割を占めるコーヒー飲料では、香料で人工的に香りを付加した商品も多い中、あくまでコーヒー本来の味を追求し、無香料にこだわり続けています。

 「ダイドーらしさ」というのは、お茶系飲料は香り高いジャスミンティーやハーブティーの「贅沢香茶」シリーズ、柑橘(かんきつ)系飲料はゆず果汁とレモン果汁をブレンドした「和菓ごこち ゆずれもん」など、個性的なラインアップであり、独自の価値をお客様に提供しています。

──2010年に構造改革を推進しました。

 改革の背景には、市場環境の変化がありました。当社の飲料売上高の約9割が自動販売機ですが、自販機業界の成長は頭打ちの状態です。人口減による市場縮小も避けられません。そこで、不採算自販機の撤去、組織や業務の全面的な見直しによる諸経費の削減などを実施しました。収益重視にかじを切ることで、飲料以外の事業領域への投資など、新たなチャレンジを進めていきます。

──2012年に看板商品である「ダイドーブレンドコーヒー」のリニューアルを行いました。その意図は。

 構造改革を乗り越え、全社一丸となって次のステージへと飛躍する象徴として、37年ぶりに大々的なリニューアルを行いました。リニューアルに際しては、ロングセラー商品としてお客様に広く認知されているブランドを新たに訴求するため、マーケティング調査を徹底し、その結果をもとにブランドコンセプトを「Blend is Beautiful.」に決定。何通りもの豆のブレンドを試してモニター調査を実施し、レシピを完成させました。パッケージも、これまで築いてきたイメージを守りつつ、今の時代のニーズに合ったデザインに一新しました。

──同じ2012年、フルーツゼリーメーカーのたらみを子会社化しました。

 たらみと飲料メーカーである当社は、「本物のおいしさ」や「らしさ」の追求ということにおいて商品開発の基本概念がよく似ています。思いを共有するたらみのブランドを通して食品分野での成長を目指していきます。

──2013年に創業以来の理念に根ざしたグループビジョンと中期経営計画を策定、今年3月に発表しました。

 「人と、社会と、共に喜び、共に栄える。その実現のためにDyDoグループは、ダイナミックにチャレンジを続ける。」というグループ理念に加え、「お客様と共に。」「社会と共に。」「次代と共に。」「人と共に。」という4つのビジョンを掲げました。

 中期経営計画「Challenge the Next Stage」では、「既存事業成長へのチャレンジ」「商品力強化へのチャレンジ」「海外展開へのチャレンジ」「新たな事業基盤確立へのチャレンジ」の4つのChallengeを掲げました。ちなみに海外展開は、昨年ロシアに現地法人を設立し、自販機ビジネスの浸透を図っています。企業理念、ビジョン、スローガンをもとに持続的成長を目指していきます。
  またこれらの浸透を図るため、全国に約百カ所ある営業拠点を回り、現場の率直な意見に耳を傾けています。

──昨年末に実父である富博前社長から後継者に指名されたそうですね。

 子どもの頃から漠然と「いずれは会社を継ぐのかな」と思っていたので、特別な驚きはありませんでした。37歳での就任は少し早いなと思ったぐらいです(笑)。とはいえ肩にのしかかる重責は想像以上で、行動や発言が周囲に与える影響の大きさを感じています。だからといって萎縮するのではなく、各方面の先輩や社員の言葉に真摯(しんし)に耳を傾けながら、掲げたビジョンやスローガンを遂行していきたいと思っています。

──企業経営において大事にしていることは。

 全国の営業拠点を回って社員と意思疎通を図っていると話しましたが、そのたびに会社を支えているのは「人」だと実感しています。ですからいちばん大事しているのは人材、具体的には人事です。いくら能力が高くても、自分だけ得をすればいい、自分だけ成果を上げればいい、というマインドでは当社の文化になじみません。家族とともに、一緒に働くチームの仲間とともに、会社とともに、社会とともに、幸せな結果を求めたいという「共存共栄」の精神を持った人材の採用と育成に力を注いでいます。

髙松富也氏 髙松富也氏

──リーダーとしての信条を聞かせてください。

 社員と率直に意見を交換し合えるリーダーでありたい。そして、失敗を恐れないこと。何事にもチャレンジ精神をもって臨んでいきたいと思います。

──愛読書は。

 松下幸之助さんの著書『道をひらく』です。人としてのあり方や道徳観を説く内容で、テクニカルなビジネス本も読みますが、傍らに置いて何度もページを繰るのは本書です。壁にぶつかった時などに読むことが多いですね。

髙松富也(たかまつ・とみや)

ダイドードリンコ 代表取締役社長

1976年奈良県生まれ。2001年京都大学経済学部卒。同年三洋電機入社。04年ダイドードリンコ入社。08年営業本部副本部長兼販売会社統括部長。同年取締役。09年常務取締役。10年専務取締役。12年取締役副社長。14年4月から現職。

※朝日新聞に連載している、企業・団体等のリーダーにおすすめの本を聞く広告特集「リーダーたちの本棚」に、髙松富也さんが登場しました。(全国版掲載。各本社版で、日付が異なる場合があります)

広告特集「リーダーたちの本棚」Vol.62(2014年6月24日付朝刊 東京本社版)