誠実に真面目に真摯(しんし)に、人生も仕事もそれは同じ

 一年の世相を漢字で表す毎年恒例の「今年の漢字」で、2010年は「暑」が第1位に選ばれた。たった一文字から想像力が無限に広がる漢字の世界。そんな漢字の技能検定として広く普及した「漢検」を実施する日本漢字能力検定協会の理事長、池坊保子さんは、「漢字は日本文化の大きな源です」と語る。

日本漢字能力検定協会 池坊保子氏 池坊保子氏

――昨年4月に理事長に就任されて、間もなく一年がたちます。協会内をどう見られていますか。

 私は「継続は力なり」「愛は持続なり」とよく言います。仕事というのは努力の積み重ねによってなし得るもので、漢検のような教育的な事業では特にそれは大切です。ですからこの事業に携わる人たちには真摯であることが必要なのですが、協会の人たちは本当に真面目で誠実で、私は大きなうれしさを感じながらこれまで仕事をすることができました。

 日本漢字能力検定協会の職員の平均年齢は33歳。若い方たちと一緒になって、新しい世代の日本文化に対する認識を深める仕事に携われることに、私自身も夢と希望を感じています。

――近年の「漢字ブーム」は相変わらずですが、理事長にとって漢字の魅力とは。

 漢字はそれぞれに成り立ちを持ち、意味が込められた豊かさをもつ文字です。本を読む時も、新聞を読む時も、漢字を目にすることで想像力を働かせることができ、言葉のイメージが広がります。私にとってはその奥深さが漢字の大きな魅力ですね。

 それとせっかく日本に生まれ育ったのですから、日本語をしっかりと学んでほしいですし、学ばなければ本当の意味で社会の中で生きてはいけないと思います。国際社会で活動するにしても、日本語での表現力が未熟であれば、英語でも表現できないでしょう。その力の基礎になるのが、漢字だと私は思います。ただ漢字を覚えるだけではなく、その意味を受け止めながら、その先にある道を一人でも多くの人に歩んでほしいと思っています。

――リーダーとして、常日頃大切にしていることは。

 使命と責任でしょうか。そして、仕事にかける理念を持つことだと思います。私は自分の人生を誠実に、真面目に過ごしていきたいのです。そして仕事の場も、共に働く人たちもそうであってほしい。そのために口先ではなく、自分の生き方を見せることで後に続いてくれる人を引っ張っていくのが、リーダーのあるべき姿だと思います。その考え方は私の父(貴族院議員を務めた梅渓通虎氏)から受け継いだもので、そういう父を尊敬して今日まで生きてきました。

――愛読書を教えてください。

 子供の頃から私は本を読み始めると夢中になって、夜も眠らずに読み続けるほどの活字好きでした。私の父は「保子の体にとって、本は敵だ」といっていたほどです(笑い)。好きな本は何度も繰り返し読むほうで、『聖書』や吉野源三郎氏の『君たちはどう生きるか』などは、子どもの頃から親しみ、今もページを開く本です。

 最近の作品では、浅田次郎さんの『終わらざる夏』に泣いてしまいました。この作品の登場人物たちは平凡に誠実に、家族を支えながら生きていた人々です。赤紙一枚で彼らの人生を根底から覆し、家族も夢も断ち切る戦争の非情さや不条理さ。でもそんな戦争も、指示する者がいなければ起こらないのです。

 私は今、政治家として、法律をつくる立場にあります。法律というのは、いくらよいもので、正義や大義があったとしても、現実を生きる人々の日常生活にどのような影響を与えるかという思いを欠いたものであってはならない。感動と共にそんな決意を新たにさせられた作品です。

文/松身 茂 撮影/星野 章

池坊保子(いけのぼう・やすこ)

日本漢字能力検定協会 理事長

1942年東京都生まれ。学習院大学文学部在学中に、華道家元45世専永氏と結婚。財団法人・池坊華道会の元副理事長、学校法人・池坊学園元理事長。1996年、比例区近畿ブロックから衆議院議員初当選。衆議院文部科学委員長、文部科学委員会理事、青少年問題に関する特別委員会理事、国会移転特別委員などを歴任。公明党の党職として女性委員会副委員長。「子ども読書活動プロジェクト」座長などを務める。2010年4月、財団法人日本漢字能力検定協会の理事長に就任。

※朝日新聞に連載している、企業・団体等のリーダーにおすすめの本を聞く広告特集「リーダーたちの本棚」に、池坊保子さんが登場しました。(全国版掲載。各本社版で、日付が異なる場合があります)

広告特集「リーダーたちの本棚」Vol.22(2011年1月29日付朝刊 東京本社版)