日本一美しい島・大三島をつくろうプロジェクト

 世界的建築家の伊東豊雄氏が近年熱心に取り組んでいるのが、瀬戸内海・しまなみ海道沿いの大三島での「島づくり」だ。豊かな自然や食材、生きる力に満ちた個性あふれる島民たちなど、島の魅力を生かした新しい暮らし方を地元の人々や若手建築家らと共に考え、形にしようとしている。

今治市伊東豊雄建築ミュージアム
撮影:高橋マナミ

 「空き家や空き地を利用して交流の場やカフェを建設するだけでなく、昨年からはみかんの栽培放棄地を活用したワイナリーづくりも始めています。従来の建築家の仕事とは少々異なりますが、これがなかなか面白い(笑)」

 建築は、そこで暮らす人々の生活と切り離して考えることはできない、と語る。

 「僕はこれからの日本の可能性は地方にあると思っています。だからこそ地方での新しい暮らし方を提案していきたい」

 建築家として日本人の暮らしや地方で暮らす人々に目を向けるきっかけは、東日本大震災だった。伊東氏は震災後の被災地で若い建築家や地元の人と「みんなの家」プロジェクトを始める。

 「本当に必要なものは何かをじっくり話し合った結果、みんなが集える場所をみんなで作ろうということに。宮城県仙台市でスタートしたプロジェクトは、現在15軒目を建築中です。大勢の声に耳を傾けることは大変ですが、だからこそ新しい発想の建築が生まれることもある。僕はこれからの建築、21世紀の建築はそっちの方が断然面白くなると思うんですよね」

撮影:高橋マナミ(上段)、西部裕介(中段左・右、下段)

伊東豊雄(いとう・とよお)

建築家

1941年生まれ。65年、東京大学工学部建築学科卒業。菊竹清訓建築設計事務所勤務後、伊東豊雄建築設計事務所設立。
作品は「せんだいメディアテーク」「多摩美術大学図書館(八王子キャンパス)」など多数。現在も国内のみならずインド、シンガポール、メキシコなどでさまざまなプロジェクトが進行中。今秋、10年以上の歳月をかけてきた「台中国立歌劇院(台湾)」が完成する。ヴェネチア・ビエンナーレ金獅子賞、王立英国建築家協会ロイヤルゴールドメダル、プリツカー建築賞など受賞多数。