「おいしさ・健康・美」を追求し、高付加価値商品で市場の創造を図る

 今年3月に創業110年を迎えた日清オイリオグループ。業績は好調で、2014年3月期から4期連続で増益を達成。2017年3月期は過去最高益となった。今年度からは、2020年度までの中期経営計画を推進していく。代表取締役会長の今村隆郎氏に聞いた。

今村隆郎氏

──業績が好調です。その要因は。

 私が社長に就任した2011年は、東日本大震災の影響に加え、原料高もあって業績が伸び悩み、2013年3月期は減益となりました。しかし翌14年3月期から4期連続で増益を果たし、17年3月期は過去最高益となりました。

 その大きな要因は、2007年度からスタートした10カ年経営基本構想「GROWTH10」を13年に中断し、新たな中期経営計画で事業構造改革を推進したことです。当社の商品は原料の多くが海外調達なので、原料相場や為替変動に大きな影響を受けます。10カ年構想が始まった07年頃からそれが顕著となり、大豆で言えば1.5倍から2倍の価格に上昇しました。その変化に応じて事業構造を変える必要がありました。

 まず注力したのが、研究開発の強化です。食用油はライフサイクルが長い商品ですが、コモディティ化から脱却するためにはライフサイクルを短くする必要があります。そこで高付加価値商品の開発に取り組み、その結果、画期的な商品が多く生まれました。商品力の向上により営業の現場も活気づきました。

 また、工場の生産工程や物流のコスト構造を見直し、合理化投資とコスト削減をあわせて行いました。管理部門も、成長分野に人員を振り向けるなどの業務改革を行いました。さらに、海外の子会社との技術連携を強化し、品質を向上させ業績も好調に推移しました。こうして為替や原料環境に左右されにくい事業構造への転換を図ったのです。

──高付加価値商品を生むためにどのような取り組みをしていますか。

 油の成分は多くの可能性を秘めています。例えば、消化吸収がよくエネルギーになりやすいMCT(中鎖脂肪酸)は、ココナッツ油やパーム油に多く含まれ、高齢者の低栄養の改善や手術後のエネルギー補給など、医療や介護の現場ではおなじみです。当社は40年以上前から扱っていますが、こうした油の機能性を深掘りしていく中で、生活習慣病対策や認知症の改善効果などが期待できることがわかってきました。

 また、当社独自技術である結晶性油脂の開発も進み、取引先への提案を進めています。この結晶性油脂は油脂100%での粉末化を可能とし、粉末が細かく融点が低いので、口の中でスッと溶けるような冷涼感が味わえるのが特徴です。食品だけでなく、化粧品原料などファインケミカルの分野での応用も考えられます。当社はこうした様々な技術を有しており、当社だけでなく特許技術をオープンにして他社とのコラボレーションも図り、高付加価値商品の創出と市場創造を目指しています。

──この6月に会長に就任されました。着手していきたいことは。

 当社は現在、2017年度から2020年度までの4カ年の中期経営計画「OilliO Value Up 2020」を推進し、「グローバリゼーション」「テクノロジー」「マーケティング」の3つのキーワードを掲げ、とりわけヘルスサイエンス事業のグローバルな拡大に注力しています。久野貴久新社長とともに会長として、外部との関係構築や、環境対策や社会貢献などのCSR、ガバナンスの強化にも取り組み、企業価値を向上させていきたいと考えています。

──組織を率いるうえで糧になっている職務経験は。

 私は入社時は情報システム部門に配属になり、プログラミング言語を使って、大型コンピューターで給与計算をする仕事に従事していました。その後、パソコン導入に携わり、社内のプログラミング教育も担当しました。残念ながら、当時覚えたプログラミング言語は今や古すぎて使いどころがありません(笑)。ただ、プログラミングのベースとなった「システム思考」は、後に携わった経営企画や、新システムの導入、コスト構造の見直しといった業務改革に大いに生きたと思います。

──リーダー信条は。

 変化や改革にチャレンジする姿勢を常に持ち続けることです。社員にも「現状維持は後退に等しい、失敗してもいいのでチャレンジを」と常々言っています。会社の業績も、最高益よりわずかでも4期連続増益の方に意義を感じています。今後も成長を目指していきたいですね。

──愛読書は。

 私は好きな作家に傾倒するタイプで、よく読んでいるのは、立花隆さん、堺屋太一さん、佐藤優さんなど。また、サイエンスに関する本も好きで、最近では、福岡伸一さんの『生物と無生物のあいだ』、中野信子さんの『脳内麻薬 人間を支配する快楽物質ドーパミンの正体』などを面白く読みました。

今村隆郎(いまむら・たかお)

日清オイリオグループ 代表取締役会長

1949年三重県生まれ。71年横浜市立大学商学部卒。同年日清製油(現・日清オイリオグループ)入社。97年取締役。2002年常務取締役。04年専務取締役。11年代表取締役社長。今年6月から現職。

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(全国版掲載。各本社版で、日付が異なる場合があります)

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