今年で創立40周年。変化をチャンスと捉え、独自のチャレンジを続けていく

 今年9月に創立40周年を迎えるファミリーマート。40周年にちなんだ「40のいいこと!?」キャンペーンや店舗のデジタル化、SDGsへの取り組みなど、様々なチャレンジを推進する代表取締役社長の細見研介氏に聞いた。

細見氏

──創立40周年の節目に社長に就任されました。抱負を聞かせてください。

 社会のあり方が激変している中で、大事な節目を迎えます。新型コロナウイルスの感染拡大により、テレワークが増え、都市部から人が減り、外食が減り、家での食事が増えています。変化のスピードはデジタル化とあいまって加速しており、コンビニ、スーパー、ドラッグストア、さらにはeコマース間の競争が激しくなっています。この変化をチャンスと捉え、地域それぞれに異なるニーズ、多様化するライフスタイルにスピーディーに対応していきたいと考えています。

──40周年にちなんで「40のいいこと!?」キャンペーンを展開しています。

 「もっと美味しく」「たのしいおトク」「『あなた』のうれしい」「食の安全・安心、地球にもやさしい」「わくわく働けるお店」という5つのキーワードを掲げて様々な提案をしています。例えば「食の安全・安心、地球にもやさしい」の一環として「ファミマフードドライブ」を始めました。ファミリーマートは2019年より地域の方々が店舗のイートインに集い交流を図る「ファミマこども食堂」を開催し、これまで約370回、延べ4000人以上の方々にご参加いただきました。コロナ禍で活動の休止が余儀なくされる中で、新たな取り組みとして始動したのが「ファミマフードドライブ」です。ご家庭で余った食品(未開封で破損していないもの。賞味期限まで2カ月以上あるもの。常温保存のもの)を店舗にお持ちいただき、自治体やNPOなど地域のパートナーのご協力のもと、支援が必要な方々にお届けする仕組みで、現在100以上のパートナーと実施に向け協議しています。

──持続可能な社会の実現に向けた「ファミマecoビジョン2050」の取り組みについて。

 「CO2排出量の削減」「プラスチック対策」「食品ロスの削減」の3つのテーマに基づき数値目標を設定。店舗運営におけるCO2排出量の削減や、環境配慮型素材の使用などを進めています。加盟店の判断でお弁当の値引きができる仕組みを導入するなど、店舗の食品廃棄物の削減にも取り組んでいます。

──店舗運営のデジタル化を推進しています。

 新型コロナウイルスの感染拡大による大きな変化の1つが“非接触”へのニーズの高まりです。そこでTOUCH TO GO社と提携し、同社が開発した無人決済システムの導入を進めています。同システムの導入店では、設置されたカメラなどの情報から、入店したお客様とお客様が手に取った商品をリアルタイムに認識。お客様が出口付近の決済エリアに立つと、ディスプレーに購入商品と金額が表示され、電子マネーなどでスピーディーに決済していただけます。このシステムは、非接触や時間短縮に加え、省人化を可能にするので、店舗オペレーションの負担軽減にもなると期待しています。

──コンビニの未来像について、どのように考えますか。

細見氏

 “地域の拠点”としての役割が一層増していくと思います。例えばファミリーマートの子会社シニアライフクリエイトは、現在400カ所の市町村行政から業務委託を受けてシニアに向けたお弁当の宅配を行っており、現在約10万人のお客様にご利用いただいています。例えば、ご高齢でもお元気であれば、ファミリーマートをお弁当の受け取り拠点にしていただくことで、毎日の運動や健康づくりの応援ができると思います。規制緩和が進めば、薬の受け取りなどの機能も果たせるかもしれません。そうした1歩踏み込んだ独自の提案を模索していきます。

──心に残っている職務経験について聞かせてください。

 ファミリーマートの社長に就任する以前は、親会社の伊藤忠商事にいました。若い頃は営業マンで、取引先に単身で飛び込みガンガン営業をかけるタイプでした。でもある時、営業先から「細見さん、1人でできることには限りがあります。チームで動けばもっと大きなことができるはず。そういう仕事のしかたをしたらどうですか」と言われて、ハッと目を開かされました。周囲と業務を分担し、情報を共有しながら仕事を進めた方がいい仕事ができる。そう気づかせてくれたその方の言葉に今も感謝しています。

 もう1つは、アメリカのブランド「レスポートサック」の買収を担当した経験です。有名ファンドと一騎打ちの交渉で、買収に3年を要しました。一喜一憂の繰り返しで、心身ともにきつい3年でしたが、あらゆるルートを駆使して交渉にあたり、全世界の商標権と販売権を取得。絶対にあきらめないことの大切さを学びました。ファミリーマートの社長就任後、各エリアの事業所を回った時も「営業の要諦(ようてい)はあきらめないこと」という話をさせてもらいました。

──リーダーとしての信条は。

 「Go where nobody has gone, Do what nobody has done.」。“誰も行ったことのないところに行け。誰もやったことのないことをやれ”という意味で、挑戦を続けることが、人生を楽しくすると思っています。

──愛読書は。

細見氏

 旅や冒険に関する本が多く、植村直己さんの自伝『青春を山に賭けて』、パウロ・コエーリョの『アルケミスト 夢を旅した少年』は特に好きです。『100のモノが語る世界の歴史』は、湯船に浸(つ)かりながら毎日1点ずつ繰り返し読んでいます。小説はサリンジャーの『フラニーとズーイ』。村上春樹氏の訳が秀逸でした。リーダー論では、唐池恒二氏の『逃げない。 リーダーに伝えたい70の講義』に共感しました。

細見研介(ほそみ・けんすけ)

ファミリーマート 代表取締役

1962年大阪府生まれ。86年神戸大学経営学部卒。同年伊藤忠商事入社。
ハンティングワールドジャパン取締役、伊藤忠商事ブランドマーケティング第三部長、同第二部門長、執行役員食品流通部門長、執行役員第8カンパニープレジデントを歴任。2021年3月から現職。

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(全国版掲載。各本社版で、日付が異なる場合があります)

広告特集「リーダーたちの本棚」Vol.135(2021年5月26日付朝刊 東京本社版)830KB


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