「パーソナルデータ」

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個人情報保護法で定義された、特定の個人を識別できる「個人情報」に加え、位置情報、購買履歴など、個人識別性のない「個人に関する情報」を含めたデータ全般のこと。「パーソナルデータ」の利活用が、マーケティングの未来を左右すると考えている。

 「パーソナルデータ」の代表格であるCookieデータを活用することで、デジタル広告は飛躍的な成長を遂げている。また、各企業もDMPを構築し、外部連携しながら顧客解明、サービス開発につなげる動きが活発化しており、一見すると「パーソナルデータ」の利活用は順調に進んでいるかのようにみえるが課題も多い。

 スマートフォンかPCか、デバイスにより取得できるID数の歩留まりや、ログの範囲や正確性が変わってくる。数千万規模のユニークIDを保有するプラットフォーマーですら、取得できる行動ログ・購買ログは「パーソナルデータ」のごく一部に過ぎないのである。こうした状況では、企業と個人の間ですれ違いが生じやすい。IBMとEconsultancyが2015年に実施した調査によると、「生活者の8割は企業側が自分を理解できていない」と感じているという。

 マーケティングは「生活者の課題を発見し、解決すること」だとすると、ある行動の断片的な「パーソナルデータ」ではなく、行動のパターンや傾向など包括的な「パーソナルデータ」を分析しなければ、リアルな生活者の課題は発見できない。欧米では、メディアや異業種間で共通IDやプラットフォームを構築し、「パーソナルデータ」を統合的にマネジメントする動きが始まっている。

 欧州連合 (EU)では、2018年5月に一般データ保護規則(GDPR)を施行し、個人のプライバシーを保護する権利を強化する。個人データを扱う管理者には「義務」と、違反した場合の「罰則」を科すと表明した。生活者からみると、企業が一方的に個人情報を管理する社会は、決して望ましいものではないのである。

 「パーソナルデータ」の利活用に向けて、個人が現金を銀行に預託するように、「パーソナルデータ」を預託し、運用することを想定した「情報銀行」に関する実証実験もみかけるようになった。

 「お金は社会の血液」と言われるように、「パーソナルデータ」も社会の血液といえる。情報がサイロ化されて血流障害に陥るよりも、個人に情報の管理権限を付与しながら「パーソナルデータ」をユニークなIDにひもづけて統合管理し、運用できるしくみの方がメリットがある。日々の生活や、重要なライフステージにおいて、よきタイミングで、よりよい意思決定をアシストしてくれるようなサービスマッチングが可能になるからだ。現在の課題である、企業と個人の間で生じているすれ違いは大きく減るだろう。

 企業が「パーソナルデータ」に投資し所有するか、それとも社会の共有資産として「パーソナルデータ」を個人の管理権限付きで活用するのか。明確な答えはないが、用途や目的に応じて使い分けをするのかもしれないと考えている。

 2020年に向けて、政府は「未来投資戦略2017」を掲げ、第4次産業革命を推進している。「利便性」「セキュリティー」「プライバシー」の観点から、さらに議論を深めていく必要があるが、新聞、広告業界をはじめ「パーソナルデータ」を利活用した未来社会はすぐそこまできている。

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※「匿名加工情報」は①、「個人識別符号」「要配慮個人情報」は②に区分される。
※CDP=Customer Data Platform/プライベートDMP、DMP=パブリックDMP、PDS=Personal Data Service/Store
福田 勝(ふくだ・まさる)
福田 勝氏

電通テック デジタル・マーケティングセンター データ・マーケティング部 部長

1998年電通テック入社。デジタル、CRM、リテールマーケティング領域におけるデータ分析、施策プランニングに携わる。現在は豊富な実務経験をもとに、データを活用したビジネス開発、ソリューション開発を行っている。上級ウェブ解析士(撮影・内藤拓)