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「ARクラウド」

博報堂DYホールディングス マーケティング・テクノロジー・センター / 博報堂 研究開発局 上席研究員 目黒慎吾氏
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ARクラウドとは、現実世界の物体情報・空間情報をクラウド上に保存、保持し、共有するための技術です。これによって、現実空間と融合したバーチャル空間において、複数の人が同時に、同じ場所に、同じデジタル情報を見ることができるようになり、仮想空間が新たなコミュニケーションの場に進化すると期待されています。

 ARクラウドを説明する前に、そもそも「AR」という言葉をご存知でしょうか?Augmented Realityの頭文字を取って「AR」。一般には「拡張現実」と訳されていますが、最もイメージしやすいのはポケモンGOでしょうか。スマホのカメラに映る現実空間に、3DCGなどのデジタルデータを重ね合わせて、仮想の物体・情報があたかもその場に存在するかのように見せる技術です。SnapchatやFacebookカメラなどを例にとってもわかりやすいのですが、認識した顔にメイクを重ね合わせたり、動物に顔を変えたりするアレもARなので、意識しない間に使っている方も多いのではないでしょうか。

 しかし、今までの「AR」では、見ているものを端末同士で共有できないという大きな弱点がありました。例えば、あなたが友達とポケモンGOを隣同士でしているとして、あなたが目の前に珍しいポケモンを見つけたとしても、隣にいる友達の端末からは目の前の珍しいポケモンを見つけることができるとは限りません。GPSによって近い場所には表示されるかもしれないが全く同じ場所には存在していないという話です。つまり、従来のARはソロプレイというわけで、「インターネットに繋がっていないパソコン」と形容されたりするのもそういった理由のためです。ARクラウドは現実の物体情報・空間情報、さらには表示する3DCGなどのデジタル情報をクラウド上に保存し共有することで、今まではアプリを落とすと消えてしまっていたARを永続的に空間に表示しつづけると同時に、ARの体験をマルチプレイにすることで、複数人が同じ空間に同じ情報を見ながら、時にはリアルタイムに影響を及ぼし合う等、ユーザー同士のインタラクティブ性やソーシャル性を持たせることまでが可能となってくるのです。

2019年4月に神戸で実施したARクラウドのデモ風景

 そして、これは何もエンターテインメントやゲームの分野に留まる話でもありません。ARの体験がマルチプレイになることで、現実空間の上に重ねられた仮想空間は、新たなコミュニケーションのレイヤーとして立ち上がってくることになるでしょう。例えば、街中で少し良い雰囲気のレストランを見つけたとしましょう。スマホで検索するのではなく、お店を目にするだけで、そのお店に紐づく情報として一般の評価や友達の残した推薦コメントを見ることができるようになるかもしれません。さらに、その推薦コメントに対して何かリアクションしたり、自分が残していたコメントに対してリアクションされたり、現実環境を考慮して重ねられた仮想空間の上が新たなコミュニケーションの場となってくるはずです。となると、企業・ブランドと生活者との新たなコミュニケーションチャネルもそこに開かれるはずで、従来の物理スクリーンに縛られた二次元の表現から、いかに三次元的、空間的、場所を生かしたブランド表現を行い、クリエーティブなアイデアを盛り込めるかということが広告文脈では議論されることになろうと想定されます。

ARクラウドイメージ画像

 こういった世界が実現して広く一般的なものになるまでには、ARクラウド技術だけではなく実際にはグラス型デバイスや5G Networkの普及も必要となります。「じゃあ、なんだ未来の話か」と思ってしまいがちですが、GoogleやAppleなど巨大IT企業のカンファレンスではARが既にメインテーマとして扱われていること、この領域での投資が進んでいるためデバイスの進化も早いこと、5Gは2020年の東京オリンピックの前後に一部スタートするような見込みがあること等、総合的に考えると実はそれほど遠い未来の話でもないのかもしれません。

目黒慎吾(めぐろ・しんご)

博報堂DYホールディングス マーケティング・テクノロジー・センター / 博報堂 研究開発局 上席研究員

2013年よりTBWA\HAKUHODO にてデジタルマーケティング業務及びグローバル広報業務に従事。2015年からは日用品クライアントのロシアにおけるマーケティング業務を支援した。2018年より現職。ARクラウドを始めとして、生活者との新たなタッチポイントやコミュニケーションを生みうる新技術の研究を行っている。

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