シリコンバレーだより

変わるCES、非IT企業の台頭と動画サービスの最新動向

 COVID-19(新型コロナウイルス)の感染拡大にともない、SXSW、F8、Google I/Oといったテック系イベントが軒並みキャンセルになった。これらのテック系イベントは、その年のトレンドを見る上で重要な役割を果たしている。そんな中で、CESはまだアメリカでCOVID-19の影響が広く認識されていなかった今年1月初旬に予定通り開催された。

 1月6~10日にラスベガスで開催されたCESは、これまでの流れから大きく舵(かじ)を切ったものとなった。そもそもCESは「Consumer Electronics Show」という家電ショーだったものが、2016年に主催団体の名称がCEA(Consumer Electronics Association:全米家電協会)から、CTA(Consumer Technology Association:全米民生技術協会)へと変更されたことに伴い、それまで略称として使われていた「CES」が正式名称となったものだ。

Parallel Reality技術と人物トラッキング技術を使ったデルタ航空のディスプレーのデモ。ディスプレーの角度がそれぞれ少しずつ異なり、見る角度によって見える情報が違うことがわかる

 「CES」に名称変更してITショーという色合いがより濃くなったのだが、今年はショーの主役が家電メーカー/ITメーカーから、非メーカー/非IT企業に変わるという大きな変化があった。これまでのCESでは、家電メーカーやIT企業のトップがキーノートスピーチを行うのがお約束になっていたが、今年はデルタ航空CEOのエド・バスティアン氏が、キーノートスピーチを行った。デルタ航空はまた、会場に大きなブースを出展し、これまでの「飛行機での旅行」をディスラプトするコンセプトを発表していた。搭乗ゲートや手荷物受け取りなどの案内情報を、Parallel Reality技術と人物トラッキング技術を使い、一つのディスプレーで複数の人が個別の情報を確認できるデモは、これまでの飛行機での旅行や空港における体験を大きく変える可能性に満ちているものだった。なお今回のデモと同様のサービスは、今年の夏に米デトロイトのデルタ航空のターミナルで展開予定と発表されている。

 デルタ航空とともに注目を集めたのがQuibiだ。Quibiは、米The Walt Disney Studiosの元会長、ジェフリー・カッツェンバーグ氏が立ち上げ、米HPEの元CEO、メグ・ホイットマン氏がCEOを務めるメディア系ベンチャーである。「最高品質のハリウッドスタイルの作品を、10分以内の“bite-sized”(一口サイズ)のフォーマットで、スマートフォン向けに提供する」サービスを、広告付きを月額4.99ドル、広告なしを7.99ドルで、4月6日にローンチする予定だ。

Quibiの予告動画画面

 Quibiはこれまでにも、10億ドル以上を投じて7,000以上(今回の発表で8,500に増加)のオリジナルコンテンツを制作すること、スティーブン・スピルバーグ監督による作品や人気俳優の主演作品を計画していることを発表してきたが、今回のCESでは、端末を縦にしても横にしても自然に視聴できるようにする特許出願中の技術「Turnstyle」機能について発表があった。YouTubeなどでは、横置きでは全画面表示、縦にすると画面上部に小さく動画が表示されるが、Quibiでは、提供するすべての動画が、縦にすると縦のまま自然に続きを見られるようになるようだ。CESではこの他、ユーザーへの毎日25番組の「フィード」、メタタグを利用した機械学習におけるパーソナライズ機能や検索機能の提供、といったことについても発表された。

Quibiの予告動画の一覧。予告動画も品ぞろえが豊富だ

 有料の動画サービスは「Apple TV+」「Disney+」が始まり、今春にはAT&T傘下のWarnerMediaが「HBO Max」、Comcast傘下のNBCUniversalが「Peacock」のローンチを予定している。また、COVID-19の影響でコンテンツの需要が高止まりしていることもあり、アメリカではコンテンツの競争がさらに加速することになりそうだ。

 ちなみにメディア系のサービスを始めるにはどの程度の費用がかかるのか。NBCUniversalのPeacockの場合、最初の2年で20億ドル(約2,200億円)を投資するとしており、Walt Disneyが21st Century Foxを買収した際にかかった費用は、約710億ドル(約7兆8,100億円)と言われている。Quibiもこれまでに、Alibaba GroupやSony Pictures Entertainmentなどから、約17.5億ドル(約1,925億円)の資金調達を行っている。

(朝日新聞社 メディアラボ 米シリコンバレー駐在 野澤 博)

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