チャールズリバーだより

Vol.4 コラボレーション――“キャラバンの市場”でパートナー探し

 秋学期は二つのクラスをとってみた。いわゆる講義型のクラスはない。どういうアプローチでどんな発想法を求めるのか、のぞいてみようということで登録したのは「途上国ベンチャー事業立案」と「メディアラボ教育プラットホーム構築」という二つのクラスだ。意図したわけではないが、ふたをあけるとどちらもグループワークによるコラボレーションを求められるクラスだった。

 1週目は何を参加者に期待するか、時間配分などシラバスの説明があり、2週目は参加者の関心やバックグラウンドなどを共有する。その後、ゲストスピーカーのトークなどをはさみながら、どちらのクラスもグループ作りとなった。

「途上国ベンチャー事業立案」クラスでは、実際に現地で事業を行っているOBがゲストで講演し、失敗も含めて体験を聴く。 「途上国ベンチャー事業立案」クラスでは、実際に現地で事業を行っているOBがゲストで講演し、失敗も含めて体験を聴く。

 途上国ベンチャーのクラスは「少なくとも10億人の問題を解決するテーマに取り組め」というお題からスタートした。日本市場だけを考えたのではとても足りない。発想のスタート地点は日本でも、グローバルに普遍化できるのかを考えなくてはならない。最初のアイデアは各自が1枚のピッチ(プレゼン資料)を書く。それをもとにグループ作りだ。個人プレーはなし。独りよがりでグダグダ考えるより、他の人にぶつけてみて新しいものを考えろということだろう。

 3週目には「エネルギー」「食糧」「水」「モバイル」「教育」「健康」といった自分の関心のあるテーマを書いたシールを胸にはり、教室を出てメディアラボ3階のアトリウムへ。「いまからお互いに話をして他の人が何を考えているか、グループ作りの準備を。時間は昼まで。さっそく取りかかろう」。マッチメーキング(お見合い)、あるいは私が所属しているシビックメディアグループの指導教官ザッカーマン氏の言葉を借りれば「スーク(市場)」と呼ばれる作業だ。5階まで吹き抜けになっているアトリウムは、人の話し声でいっぱい、まさにキャラバンの市場の様相となった。

 片っ端から人を捕まえて、相手の関心テーマ、自分のアイデアをぶつけ合う。アフリカでの事業経験者やメンター役の教授陣も何人か入っている。単位互換制度があるので、メディアラボ以外にもMIT スローン(経営スクール)やハーバード、ハーバードビジネススクール(HBS)からも参加している。「ハーバードはケーススタディーだけど、ここは作るところ重視だからワクワクしてる」と興奮気味の学生も。

取り上げる問題、その解決にテクノロジー、方法、道具だてなどそれぞれの要素についてどう対応してサービスを組み立てるか、壁に書き出していく。あまりノートは取らず、みんな板書は最後にスマホでパチリと撮影。こちら側は書いてもいいほうの壁。HBSさんゴメンナサイ。でも私たち以外にも書いてたし……。 取り上げる問題、その解決にテクノロジー、方法、道具だてなどそれぞれの要素についてどう対応してサービスを組み立てるか、壁に書き出していく。あまりノートは取らず、みんな板書は最後にスマホでパチリと撮影。こちら側は書いてもいいほうの壁。HBSさんゴメンナサイ。でも私たち以外にも書いてたし……。

 最初から他人のアイデアに乗っかろうという人はいないので、そう簡単に意気投合というわけにはいかない。「教育」というテーマをとっても、英語教育のモバイルプラットホームを作りたい人、乳幼児を抱えた母親向け教育サービスを作りたい人、教師の教育に取り組みたい人などさまざま。手法や着眼点などが近い人をみつけたら、「後で話そう」といってメアドを交換する。そこから先も個人の努力次第。「グループ作れない人はいませんか」なんて誰も心配なんかしてくれない。この後、2回にわたって各自のピッチをプレゼンしグループ作りの基礎にしていく。ピッチの段階ですでにチームを組めている人もいる。

 二つのクラスで共通なのは、「できるだけバックグラウンドやスキルセット(得意な能力)が異なる人と組むこと」を求められる点だ。等質のメンバーでグループを組むと一致点は見出しやすい、しかし従来の延長線上ではないクリエーティブでイノベイティブなものは、多様なメンバーのコラボレーションから生み出されるということだろう。

 無事にグループが組めたところで、そのミーティングの設定が次のハードルだ。私が入っているグループも、MITメディアラボ、MITスローン、HBSにまたがるグループ構成のため、日程、時間合わせが難しい。いきおい平日夜か土日しか日程が合わず、休み返上が多くなる。お互いのスクールや研究所のミーティング室を持ち回りで使うおかげで、ちょっぴり“お宅拝見”気分も。メディアラボはあちこちの壁がホワイトボード代わりになっている。HBSのミーティング室でそのノリで書いていたら、部屋の片側は普通の塗り壁で消えないことがわかり、守衛さんに平謝りに謝って建物を後にした。

 日もとっぷり暮れて、カサカサと音を立て落ち葉が道に舞う。「HBSって結構寂しいところにあるんだね」「私も初めて来たよ」。バスを待ちながら、地下鉄の駅のあるウチのほうがちょっぴり町中かもと、身びいきする自分がいた。

(MITメディアラボ駐在 大西弘美)

大西弘美(おおにし・ひろみ)
大西弘美

取材・紙面編集の仕事を経て、デジタル事業に取り組み15年。2011年からデジタル事業担当。13年7月からMITメディアラボ・シニアアフィリエイト。
Twitter の でMITやボストンでの出来事、メディア関連情報などをつぶやいています。

この記事にいいね!

Vol.4 コラボレーション――“キャラバンの市場”でパートナー探し

海外見聞記新着記事

PAGE TOP