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Charity(チャリティ)が根付く英国社会

 ロンドンの街を想起させるものと言えば何だろうか?真っ赤な2階建てバス、独特な形をしたブラックキャブ、ハロッズに代表される老舗デパート、至る所にあるパブ、行き交う様々な人種とバラエティに豊むファッションなどがすぐに思い浮かぶ。

※画像は拡大表示できます ロンドンのCharity ShopロンドンのCharity Shop

 ただ、1年半暮らしてみて、その大きさに気づいたのは、地味ではあるが、日常生活に溶けこんでいる「Charity Shop(チャリティショップ)」の存在だ。私の自宅近くには、ユニクロやMUJI、ZARAといった世界展開する店舗が連なるショッピングストリートがあるが、このようなブランドに交じって、「Oxfam」「Cancer Research UK」「Royal Trinity Hospice」「Octavia Foundation」の看板を掲げた店が洋服や靴、食器、家具、おもちゃ、古本まで、様々なものを格安で販売している。それぞれは、世界の貧困克服、癌の研究、ホスピスケアの無料提供、地域社会支援のための基金運用を目的とした慈善団体で、販売されているものは一般の人たちからの寄付がほとんどだという。チャリティショップ団体のウェブサイトによると、英国全土に11,200店舗、ボランティアで働く店員は23万人、年間の売上は10億£(約1,500億円)以上、団体への寄付総額は2.7億£(約400億円)にもなるらしい。

 ロンドンは大都市でありながら、ハイドパークやリージェンツパークに代表される多くの公園があり、天気の(珍しく)良い休日ともなれば家族連れやカップルが緑の中でのんびりと過ごす。日本同様、英国でもジョギングが人気で、ランナーの姿も多い。そして時々目にするのが、チャリティ団体が主催する小規模のランニング大会だ。

チャリティが主催するランニング大会の告知チャリティが主催するランニング大会の告知
チャリティが主催するランニング大会の告知チャリティが主催するランニング大会の告知

 写真の新聞広告は、心臓病の研究に助成するBritish Heart Foundationと重病の子どもへの寄付を募る病院が主催する大会の告知だ。このような大会がシーズンになるとロンドン中で開催されるが、チャリティとマラソンと言えば、世界的に知られるのは毎年4月下旬に行われるロンドンマラソンだろう。2019年大会の申込みは既に5月に締め切られているが、史上最高、そして世界記録更新となる414,168人が世界中から応募した。この大会にはもう一つの世界記録がある。2018年、出走した約4万人のうち、75%以上のランナーが自分が支援したいチャリティへの寄付を募るため42.195kmを走った。結果、集まったのは総額6,370万£(約95億円)。これは1日のイベントで募金された最高記録だそうだ。参考までにお伝えすると、一般枠の抽選に漏れたとしても、ロンドンマラソンにはチャリティ枠というのがあり、個々のチャリティが定めた一定金額以上の募金をすれば参加できる。ある記事によると、その額は概ね2,000£(約30万円)くらいだという。

チャリティのゼッケンを付けてロンドンマラソンを走るランナーチャリティのゼッケンを付けてロンドンマラソンを走るランナー

 今年の夏、「Hey Girls」(正確にはCharityではなく、利益を追求しないSocial Enterprise=社会的企業)がフリーペーパー「メトロ」に掲載した広告が話題になった。英国では貧困層が増えており、女性の10人に1人は生理用品が買えないため、代わりにトイレットペーパーや靴下、あるいは新聞紙さえも使用しているという。このような英国の実情に加え、「Hey Girls」が販売する生理用品1箱を買えば、それを必要とする他の女性に1箱が無料で提供される旨を知らせるため、同社は切り抜いて使う新聞紙の生理用品を表裏広告で表現した。あまり知られていない事実とそれに対する同社の取り組みを伝えるのに、このショッキングな新聞広告以上に最適な手段を想像するのは難しい。

「Hey Girls」広告・表「Hey Girls」広告・表
「Hey Girls」広告・裏「Hey Girls」広告・裏

 各チャリティは、社会の諸問題を知らせるため、その解決に必要な寄付を募るため、ベストな方法を模索している。英国に根付くチャリティが、支援者のエンゲージメントを高めるために実施している活動から学ぶものは多い。

(朝日新聞社 メディアビジネス局 ロンドン駐在 渡辺健司)

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