Taeko's Media & Trends Report from London

COVID-19によって変わる、さまざまな距離

 3月18日にロンドンに着任してから、あっという間に2か月半が経ちました。出発前に事前の情報収集で想定はしていたものの、到着早々ロックダウンが始まり、街全体がゴーストタウンのような静けさに。家探しもままならない中、仕事だけでなく、生活の不安や猛威を振る新型コロナウィルス(COVID-19)への感染の恐怖を抱えながらも、試行錯誤の末、ようやく居を構え、生活も落ち着きを取り戻しつつあります。

 以前のようなロンドンの日常や賑わいを紹介できる日はもう少し先になりそうですが、今月からスタートする「Taeko's Media & Trends Report」では、ヨーロッパ各国で現在進行中のコロナ禍の状況におけるメディア状況やトレンドなど、現地で話題になっていることや感じることをリポートしていきます。

 初回は、COVID-19との闘いで、広告を含む情報がどのように国民の意識・生活を変化させているのか、ロンドンの街の様子を交えながらリポートします。

ソーシャルディスタンシングが街のいたるところに

公園入口などで2メートルのソーシャルディスタンシングを求める表示公園入口などで2メートルのソーシャルディスタンシングを求める表示

 3月23日に“Stay Home”のスローガンとともにスタートした外出禁止を伴う都市封鎖(ロックダウン)は、ようやく5月13日に部分的緩和がなされました。これまで、エッセンシャルワーカー(フロントラインワーカー)と呼ばれる医療関係者やスーパー・公共交通機関従業員以外は、職場への通勤・出社が原則禁止となっていましたが、建設業や工場勤務者など在宅での勤務ができない分野では職場復帰が促されるようになりました。

 同時に、食料・薬等生活必需品の購入や1日1回の近所での運動に限られていた日常の外出制限についても、運動の回数制限が取り払われ、家族以外の人にも公園などであれば1対1で会うことができるように。また、6月1日からは同居人以外の人と6人までなら屋外で集まることを認めるなど一段と緩和が進みました。小学校の一部の学年の授業や屋外市場の営業も再開。6月15日からは百貨店を含むほぼすべての小売店の営業を再開させる方針も示されています。

 ロックダウン直後から継続的に、スーパーなどでは営業再開や感染防止策を伝えるメッセージ広告が増え、街のいたるところでは、ソーシャルディスタンスを取ることを促す表示が目につきます。

スーパーの動画広告

スーパーへの入店街の列 スーパーへの入店待ちの列
スーパーの窓に時間制限の表示スーパーの窓に安全に買い物をするためのガイドの表示

心の距離を縮めよう

 ソーシャルディスタンシングという、人と人の物理的距離の確保を促進する一方で、物理的距離によって離れていってしまう、心の距離を縮める動きも活発に見られます。

 ロックダウン発令直後から、新聞には寄付を募る広告が継続的に掲載されています。最前線でCOVID-19と戦う医療関係者(NHS:National Health Service 国営の医療サービス)への寄付だけではなく、社会的弱者である貧困層、家庭内暴力を受けている人、コロナウイルス以外で治療や入院が必要な患者などをサポートする寄付を募る広告を多様な社会課題解決に努める団体から数多く、継続的に掲載されています。

寄付を募る新聞広告寄付を募る新聞広告(拡大表示できます)
100歳の誕生日までにNHSへ約43億円の寄付を集めた元軍人は国を挙げた話題に

 全世界的にも報道されていますが、医療機関などで働くフロントラインワーカーへの毎週木曜日夜8時に各家庭から鳴りやまない拍手喝采や、NHSへの感謝を伝える7色の虹をシンボルに使ったキャンペーンも各メディアを通じて、国民に浸透しています。

NHSへの感謝を伝える拍手を促すOOH広告NHSへの感謝を伝える拍手を促すOOH広告
各家庭で子供達が描いたNHSへの感謝の虹の絵各家庭で子供達が描いたNHSへの感謝の虹の絵
NHSへの感謝の虹のシンボルは街中にも沢山NHSへの感謝の虹のシンボルは街中にも沢山

トラディショナルメディアが奮闘

 英国情報通信庁OFcomが行った、ロックダウン直後からの継続した調査によると、このCOVID-19の影響で英国民のメディア接触状況も変化してきている模様。COVID-19に関する情報をテレビのニュース、新聞、ラジオというトラディショナルメディアで入手する傾向が高まっているとのことです。

 政府は、国民への情報発信として毎夕5時からテレビ中継される定例会見の他に、インターネット、トラディショナルメディアを広告媒体としてフル活用し、人々の意識や生活を一気に変えることを狙ったメッセージを連日発信。

 ロックダウン当初には強く簡潔な語調のスローガン「STAY HOME. PROTECT THE NHS. SAVE LIVES」が毎日何度も繰り返されると同時に、一斉に臨戦態勢に突入し、強力なロックダウン体制がスタート。感染のピークが過ぎた5月13日からは「Stay Alert」へとスローガンを変えて、国民へ一体となった闘いの継続を求める号令を発表するなど、状況にあわせて、メッセージを変化させました。

 より確かな情報を求める国民のメディアへの期待に合わせた形で、タイムリーに広告を活用する取組みが功を奏し、国民全体が一体となって見えない敵と闘う前向きな気持ちを醸成させることに成功したと思います。

 特に、最初のスローガンのキャンペーンには数10億円規模の予算をかけたという情報も。世界各国の指導者が、さまざまなアプローチでCOVID-19との闘いに打ち勝とうとしていますが、明確でわかりやすいメッセージと、それを効果的に伝える広告によって、多くのイングランド国民が、この状況を辛抱強く受け入れて順応しています。

Stay Alert以降、運航を通常に戻すバス停でのOOH広告でもマスク着用や利用時間制限を訴求

 COVID-19との闘いはまだまだ続きますが、これからロックダウン緩和に向けて進んでいくロンドンや欧米の様子も含めてリポートしていきます。

(朝日新聞社 メディアビジネス局 ロンドン駐在 伊藤耐子)

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