エンターテインメントビジネスの市場戦略

バラエティー番組のノウハウを販売 市場はアジアから欧米へ

テレビ朝日 コンテンツビジネス局 国際ビジネス開発部長 上田直人氏

 多メディアでの競争の時代を迎え、テレビ業界もCM以外の収入源を探っている。海外市場への番組販売事業もその一つだ。テレビ局によっては長い歴史を持つ事業だが、ここへ来て、各局が力を入れ始めている。海外での番組販売の現状について、テレビ朝日のコンテンツビジネス局国際ビジネス開発部長の上田直人さんに聞いた。

コンテンツを売るアニメ バラエティーはアイデアを販売

上田直人氏 上田直人氏

――海外への番組販売の現状について教えてください。

 テレビ朝日では30年以上前から、海外に向けて番組を販売しています。主な販売方法は2つ。まず、日本で制作したアニメーションやドラマの映像そのものを販売する方法です。買い手の国の言語に吹き替えたり字幕をつけて、「現地化」して放送します。ハリウッド映画と同じですね。コンテンツ自体はそのままで言語だけを変える方法です。テレビ朝日の人気アニメ「ドラえもん」や「クレヨンしんちゃん」も、この方法により世界中で放送されています。

 もう一つが、番組のコンセプトやアイデアを売る「フォーマット販売」という販売手法です。番組の企画やノウハウを提供し、買う側は、そのフォーマットに基づいて、自国の制作スタッフ、キャストで現地版を作ります。欧州のように、言語の違う国々が隣接している地域で定着していた方法です。「ドラマのリメーク」もあります。

――海外に販売する上で、どのような番組が人気ですか。

 アニメを筆頭に、フォーマットで引き合いが多いのはゲームやクイズ番組です。国の文化や習慣などに影響を受けにくく、テレビ向きのジャンルとも言えます。欧米ではオーディション番組も人気です。アジア新興国では、経済の発展に伴い、グルメや紀行番組が注目されるなど、テレビ番組には世相や文化が反映されるので、その兆しに敏感であることが重要です。

――テレビ朝日でフォーマット販売しているのはどのような番組ですか。

 「ロンドンハーツ」の「格付けしあう女たち」は、オランダやドイツ、インドなど7カ国で現地版が放送されています。特番で放送されていた「30人31脚」もタイやベトナムなどで現地版が作られています。

 海外のバラエティー番組はクイズならクイズ、ゲームならゲームのみ。複数のコーナーで成り立っている日本のバラエティー番組とは少し作り方が違います。そこで、「格付けしあう女たち」のように50分くらいの長さに拡大できるコーナーであれば、1つの番組として販売することもあります。

――今年3月にアメリカのワーナーブラザースと提携しました。

 番組の企画をフォーマット化する上で、番組の骨格となるオリジナリティーを壊すことなく、海外で受け入れやすい形にアレンジする必要があります。日本では面白い素材でも、文化の違う国ではウケないこともありますから。そういった問題を解決する上でも、欧米文化に精通したパートナーが必要でした。その上で、テレビ朝日はアジアへ、ワーナーブラザースは欧米へと地域分担もしています。

――番組はどのような方法で海外へ販売するのでしょうか。

 フランス・カンヌで開催される「MIPTV」や「MIPCOM」をはじめ、日本で開催される「TIFFCOM」など世界各国で開催されているテレビ番組・映像コンテンツの見本市に出展しています。そこで知り合った海外の放送局や制作会社と直接商談をするほか、番組販売のディストリビューターやエージェントなどを介して販売することもあります。現在、テレビ朝日のコンテンツビジネス局で国際ビジネスに専門で携わるスタッフは約20人。信頼関係がビジネスに大きく影響するため、人と人のネットワークづくりが基本です。販売の現場は意外とアナログなのです。

 今年10月に開催された世界最大の番組見本市「MIPCOM」では、在京7局と日本政府と共同で「トレジャーボックスジャパン」というイベントを開催しました。オールジャパン態勢で国際市場に臨んだのは初めてのこと。勢いを増す韓国や中国などに対抗するためにも、各局が持ち合わせている番組のフォーマットを一同にアピールする機会を設けました。

韓国で公式配信を開始 違法配信に法的に対抗

――番組を販売する上で、著作権などの問題は発生しませんか。

 番組の違法アップロード配信の問題は後を絶たないですね。日本での放送後、あっという間に現地語の字幕付きで動画サイトにアップロードされてしまいます。発見し次第、削除の依頼をしていますが、たとえ削除されても、また誰かがアップロードする。それが際限なく繰り返されているのが現状です。そうした違法配信を取り締まるためにも、海外の放送局からは「できるだけ間隔を空けずに正規の放送や配信ができるようにしてほしい」という要望も強くなっています。

 現在、韓国では「ロンドンハーツ」の動画配信を公式でおこなっています。それまで非公式でアップロードされていたのですが、相当数の人に見られていて、とても人気があることがわかりました。それならばと、韓国の動画配信サイトで公式に配信することに決めたのです。字幕付きで、1回の視聴につき1,000ウォン(約69円)。日本のバラエティー番組が韓国で公式に配信されることは初めての試みです。動画配信事業がうまくいくことはもちろん大事なことですが、公式に配信されていることで海賊版に対する、その国での法的措置も取りやすくなり、違法配信取り締まりの成果も上がっています。

――海外での番組販売の今後の展望を聞かせてください。

 かつて日本のドラマやバラエティー番組は、なかなかアジアの枠を超えられませんでした。けれども、フォーマットを販売するようになって状況が変わりました。欧米でも日本のバラエティー番組のオリジナリティーに対する評価は高く、関心も高まってきているので、力の入れ所だと思います。また、スマートフォンやIPTVなど新しいサービスや技術の台頭で、人々のメディアとの接触の仕方も変わってきています。ビジネスの拡張を図る上では、「コンテンツの多媒体対応」も重要性を増しています。

上田直人(うえだ・なおと)

テレビ朝日 コンテンツビジネス局 国際ビジネス開発部長

2000年テレビ朝日入社。05年編成制作局編成部マルチ編成担当副部長。07年編成制作局 編成部クロスメディア編成担当部長。08年ビーエス朝日出向。12年から現職。

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