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「グローカル人材」の育成を目指し、語学・教養・環境教育を強化

獨協大学 学長 犬井 正さん

 獨協大学は今年創立50年を迎えた。「大学は学問を通じての人間形成の場である」という建学の理念を掲げる同学の特長や今後の展望について、学長の犬井 正さんに聞いた。

 

犬井 正 氏 犬井 正 氏

──獨協大学の歩みについて。

 獨協大学創立以前の大学受験は、戦後のベビーブーマーの数に大学数が追いつかない状況で、競争は激烈でした。その反動か、入学後に学問を遠ざけてしまう学生も少なくなかったのです。初代学長・天野貞祐(ていゆう)先生は、そうした傾向を憂え、入学後にこそ学問に取り組み、専門知識や教養を育む過程で人間力を磨いてほしいと願いました。「入(い)るに易(やす)し、出(いず)るに難(かた)し」が、本来あるべき大学の姿なのだと。

 今もその精神を受け継ぎ、獨協大学の受験は、できるだけ多彩な学生が入れるような入試方式をとっています。入学後は、講義の出席状況や目標達成力が教授陣によって厳正に評価されます。また、学びのカリキュラムは、獨協伝統の「外国語」、人間形成に欠かせない「教養」の両方が磨けるシステムを整えています。
  天野先生が掲げた「大学は学問を通じての人間形成の場である」という建学の理念は、これまでもこれからも変わらないもので、入学式や卒業式など各種行事で、ことあるごとに紹介しています。

──獨協大学の特長とは。

 本学は、外国語学部、国際教養学部、経済学部、法学部の4学部11学科と大学院3研究科、法科大学院を擁しますが、各学部の専門ゼミはすべて少人数制です。それは、教授と学生の活発な対話を重視した天野先生の思想に根ざしたもので、1年生の入門ゼミから卒業論文の指導まで、全課程でフェース・トゥ・フェースの教育を実践しています。

 「語学の獨協」と言われるように、創立以来の特色といえるのが外国語教育です。単に外国語で会話をするための語学教育ではなく、経済や法律、国際関係など専門分野を学ぶ際に必要となる“生きた語学力”を身につけることを目標とし、EGAP(English for General Academic Purposes=一般学術目的のための英語)というプログラムを通じて成果を上げています。レベル別教育の成果も出ています。また、情報、環境、歴史、心理、政治など、「教養」が身につく仕組み「全学共通カリキュラム」も本学の特長です。

──教授陣をまとめる上で心がけていることは。

 全教授陣が集まる全学教授会を定期的に設け、各学部・各学科の状況やカリキュラムの内容を共有しています。この全学教授会は、どういうマンパワーが必要で、どのような学内資源があるのか議論できる貴重な機会となっています。

──学長を務めながらゼミも担当しておられます。今も教え続ける理由は。

 今年はゼミと講義科目の2コマ担当していますが、来年は3コマに増える予定です。今も教え続けるのは、現場感覚を失わないためです。学生が何を求めているのか、教員や職員は彼らの学習を十分サポートできているのか。現場で教えていれば、学生たちの声がダイレクトに耳に入ります。学長の仕事も忙しいですが、その学長の仕事にフィードバックできる大事な活動だと思っています。

──日頃感じている獨協生の持ち味とは。

 象徴的だったのは、東北の震災後の学生たちの行動です。私のゼミではエコツーリズムの研究を行っているのですが、震災があった年の夏は、学生たちの発案で行き先を岩手県に決め、がれきの撤去や図書館の本の修復など、ボランティア活動を行いました。地元の公民館をお借りしての自炊生活でしたが、自分たちにできることは何かと自発的に探して汗をかいている学生たちの姿はとても頼もしかったです。私のゼミの学生だけでなく、本学の多くの学生たちが東北でボランティア活動に携わったと聞いています。本学は、学問の習得と並んでサークル活動や学園祭運営など、自発的な課外活動を通じた経験の蓄積を奨励しています。その成果の一つといえると思います。

犬井 正 氏 犬井 正 氏

──リーダーとしての信条は。

 昨今、大学のガバナンス(組織統治)改革が叫ばれていますが、私が目指すのは上意下達型のリーダーではなく、現場感覚を失わないボトムアップ型のリーダーです。学生の声、学習をサポートする教員の声、学生活動全般をサポートする職員の声、あらゆる声に耳を傾け、取捨選択し、決断・実行していく。その責任はすべて学長の私が負う。そんなリーダーでありたいと思っています。

──今後の展望は。

 大学の使命の一つはグローバル人材の養成ですが、もう一つはCOC(Center of Community)、つまり地域社会の中心になりうるかということがあります。地域の人や自然との共生を真剣に考えられなければ、グローバルな視点も養えないと思うのです。その思いはキャンパス計画にも反映し、「人と自然と建物が調和する空間」の創造をテーマに再編計画を推進しています。具体的には、新築棟の低層化、省・創エネ化、生物多様性保全を目指したキャンパス内外の緑化といった取り組みです。

 また、大学の前を流れる伝右川のありし日の清流と川辺のにぎわいを取り戻すために、埼玉県と草加市、地域住民と連携しながら、息の長い活動を続けていくつもりです。こうした取り組みを通じて、グローバル感覚とローカル感覚をあわせ持つ「グローカル人材」を育てていきたいたいですね。

 

犬井 正 氏 犬井 正 氏

──愛読書は。

 親鸞とその弟子・唯円との問答などを描いた『出家とその弟子』。太平洋戦争末期の旧満州を舞台に、戦時の極限状態の中で人間性を失わずに生きようともがく男の姿を描いた『人間の條件』。この2作品の内容は全く異なりますが、底辺に通じるものを感じました。それは、自分らしい生き方を見つけることの大切さです。どちらも10代の頃に読んだ思い出の書です。

犬井 正(いぬい・ただし)

獨協大学 学長

1947年東京都生まれ。71年東京学芸大学大学院修了。理学博士(筑波大学)。獨協大学専任講師、助教授を経て経済学部教授。日本地理教育学会顧問。日本地理学会、経済地理学会、人文地理学会所属。研究領域は、農業・農村地理学、環境学。2012年から現職。

※朝日新聞に連載している、企業・団体等のリーダーにおすすめの本を聞く広告特集「リーダーたちの本棚」に、犬井 正さんが登場しました。(全国版掲載。各本社版で、日付が異なる場合があります)

広告特集「リーダーたちの本棚」Vol.67(2014年11月25日付朝刊 東京本社版)

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