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スポーツ基本法の成立を弾みにオールジャパンでスポーツの価値を高めたい

日本スポーツ振興センター 理事長 河野一郎さん

 国立競技場などスポーツ施設の運営、日本のスポーツ情報機能の強化、スポーツ振興くじの販売及びその収益による助成業務などを展開する日本スポーツ振興センター(JAPAN SPORT COUNCIL、以下JSC)。2011年から理事長を務める河野一郎氏に、現在注力している取り組みなどについて聞いた。

 

河野一郎氏 河野一郎氏

──河野さんは理事長に就任以来、新しい取り組みを推進しています。今年4月には「スポーツ・インテグリティ・ユニット」を設置しました。その目的と活動内容は。

 「スポーツ・インテグリティ・ユニット」の設置は、2016年夏季五輪の招致活動と深く関係しています。活動では日本のスポーツの美点を発信することに努めましたが落選。課題として浮き彫りになったのが、国際的視点の弱さです。その象徴が、日本にスポーツ基本法がないことでした。国や地方自治体がスポーツ政策に関わることは国際的には常識のようなものなのです。このスポーツ基本法は2011年に成立し、大きく前進しました。

 もう一つの課題は、スポーツの価値を国民に明示していないことでした。昨年、柔道女子日本代表チームなど、スポーツ指導において暴力を行使する事案が明るみに出ました。いよいよ新しい概念を世に示す必要性を感じ、あらゆる脅威からスポーツのインテグリティ(Integrity 高潔さ)を守る取り組みを実施する「スポーツ・インテグリティ・ユニット」を設置しました。具体的には、八百長、違法賭博、ガバナンス欠如、暴力、ドーピングといった脅威に対するモニタリング・調査・啓発・防止活動を実施しています。こうした取り組みは、欧米のスポーツ先進国の間で進んでおり、国際サッカー連盟(FIFA)をはじめ海外のスポーツ団体とも連携し、日本におけるスポーツの価値を高めていきたいと考えています

──「JAPAN SPORT NETWORK」についても聞かせてください。

 JSCは、スポーツ振興くじの収益の一部を地方自治体や地方のスポーツ団体に助成しています。ただ、従来は、JSCとそうした団体との1対1のやり取りが中心なので、地域や団体同士のつながりがありませんでした。そこで、互いに情報やノウハウをシェアするネットワーク化を進めています。それが「JAPAN SPORT NETWORK」で、具体的には、メールなどによる情報提供や好事例の紹介、セミナーの開催、JSCの事業に関する参考情報の提供などの取り組みで、2014年7月現在で565の地方自治体と共同宣言を行っています。

 2020年オリンピック・パラリンピックの開催は、東京の一人勝ちなどではなく、おおいに地方も活気づけるはずです。JSCでは、スポーツによる地域の活性化と、地域によるスポーツの活性化のWin-Winの関係を目指します。例えば、北海道の美深町は、スキーのエアリアルの振興に自治体が予算措置をし、エアリアルの魅力を通じて町の評判が高まり、人を呼び込んでいます。こうした好事例を調査・研究し、各地域と共有しています。様々な成果をメディアなどに発信し、2020年までにオールジャパン体制を整えていきたいですね。

河野一郎氏 河野一郎氏

──オリンピック・パラリンピックの東京開催の意義について、どのように考えますか。

 オリンピックに匹敵する盛り上がりをパラリンピックで実現することが重要だと思います。ソフトとハードの両面でユニバーサルデザインが行き届いた都市を作り、その先進性を世界に示す絶好の機会でもあります。また、この先の超高齢化社会に向けても意義のあることではないでしょうか。

──スポーツに関わる仕事のだいご味について聞かせください。

 私は医療や健康の立場からスポーツと関わりましたが、スポーツを通じて政治、経済、教育など多分野に視野が広がり、様々な職種の方々と仕事する機会に恵まれています。そこに面白さを感じますね。純粋にスポーツが好きだということもあります。大学時代はラグビー部に所属していました。

──リーダーに必要なこととは。

 私は医師ですが、医師は意思決定が早くないといけない。もたもたしていたら患者さんの命を救えません。リーダーも同じで、決断の早さが大切だと思います。また、夢を掲げ、そのビジョンを明確にし、戦略、戦術を練って実行に導き、成果を出す。この一連のことをうまくできるのが、優れたリーダーだと思います。私の目下の夢は、スポーツ基本法を日本に根付かせること。そのために、JSCの様々な活動を確実に前進させたいと思います。

 

河野一郎氏 河野一郎氏

──愛読書は。

 『学問のすゝめ』です。学ぶか学ばないかによって人生が決まるという教えは、努力するかしないかによって一流のアスリートになれるかどうかが決まるスポーツの世界に通じます。現代の価値観に置き換えられる内容も多く、諭吉が語る国家論も興味深く読みました。

河野一郎(こうの・いちろう)

日本スポーツ振興センター 理事長

1946年神奈川県生まれ。医学博士。筑波大学大学院教授、学長特別補佐を経て現職。オリンピック日本選手団本部ドクター、日本ラグビーフットボール協会強化委員長、世界アンチ・ドーピング機構委員、2016年招致委員会事務総長などを歴任。日本オリンピック委員会理事、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会副会長。

※朝日新聞に連載している、企業・団体等のリーダーにおすすめの本を聞く広告特集「リーダーたちの本棚」に、河野一郎さんが登場しました。(全国版掲載。各本社版で、日付が異なる場合があります)

広告特集「リーダーたちの本棚」Vol.64(2014年8月27日付朝刊 東京本社版)

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