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新薬を強みに「グローバル・カテゴリー・リーダー」を目指す

アステラス製薬 代表取締役社長 畑中好彦さん

 旧藤沢薬品工業と旧山之内製薬が合併し、2005年に発足したアステラス製薬。この6月にトップに就任した畑中好彦さんは、藤沢薬品の出身で、経営企画部長や米国子会社のCEOを経験し、投資家向け広報(IR)の経験も豊富だ。同社は、08、09年と主力2製品の特許切れが続き、次の成長に向けた新社長のかじ取りに期待が集まる。

 

──ビジネスプランを聞かせてください。

アステラス製薬 代表取締役社長兼CEO 畑中好彦氏 畑中好彦氏

 医薬品マーケットの成長は、科学技術の進歩、高齢化、経済の発展などと相関関係にあり、その中でどう貢献していくかと考えた時、将来にわたって継続性のあるビジネスモデルとして、「グローバル・カテゴリー・リーダー」となることを選択しました。すなわち、アンメットメディカルニーズの高い疾患領域(カテゴリー)に研究開発費を集中し、新たな価値を持つ薬を生み出し、世界中の患者さんに届けるということです。新興国では、非常な勢いでマーケットが動いていますが、日、米、欧で経験した以上のスピードで医療費抑制策が進んでおり、早晩、全世界のマーケットが同じ環境になるのではないかと考えています。そうした中で、後発(ジェネリック)医薬品や、OTC(一般用)医薬品ではなく、新薬の創出によって差別化をはかり、競争力を高めていきます。

──08年に免疫抑制剤「プログラフ」、09年に排尿障害改善剤「ハルナール」と、主力2製品の特許が切れましたが、新たな成長基盤をどのように構築していきますか。

 05年の合併によって、大規模な研究開発費が確保できることになり、特許切れの影響を最小化するべく、研究・技術基盤を強化し、ライセンスの導入やM&Aを進め、パイプライン(新薬候補物質)の拡充をはかってきました。今後は右肩上がりの成長を見込んでおり、昨年発表した「2014中期経営計画」にある、売上高1兆960億円、研究開発費の売上高比率16%などの目標を達成できると考えています。

──がん研究の強化を表明されています。

 アンメットメディカルニーズの高い疾患となると、当然がんを避けて通ることはできません。07年に買収した米バイオベンチャーのアジェンシス、昨年買収した米OSIファーマシューティカルズは、ともにがんに強い製薬会社です。すでに市場に出ている肺がん治療薬をはじめ、現在臨床試験の後期段階にある薬の開発を加速し、世界市場での拡販を目指していきます。

──「個別化医療」への取り組みについて。

 同じ診断名の病気に対して同一の薬剤を提供するというのが従来の医療でしたが、個別化医療は、患者のタイプによって、投薬前に薬の効果や副作用の出方を予測して処方するため、薬の高い有効率と副作用の低減、さらには経済上のメリットもあります。医療の自助を基本とする米国を中心に、重要なアプローチだと思っています。

──1万6千人いる社員のうち、半数が外国人ということですが、人材育成の取り組みについて、聞かせてください。

 これまでも、国や分野ごとにマネジメントできる人材を育成し、成果をあげてきました。今後はさらに、グローバル展開をリードできる人材を増やしていきます。具体的には、今秋より、研修1年間、フォローアップ1年間の研修プログラムを開始。当初3年分の名簿は作成ずみです。社員が働く国の事情や国民性はさまざまです。だからこそ、「先端・信頼の医薬で、世界の人々の健康に貢献する」という経営理念や、「明日は変えられる。」という企業広告に象徴される、アステラス製薬の精神を共有することが重要だと思っています。

──今後の課題は。

 患者さんのため、患者さんの家族や友人のために、少しでも研究開発の速度を早め、市場浸透を促進していくことです。薬づくりに近道はありません。しかし、優れた研究開発力で創薬に挑戦し、有用性の高い新薬を生み出し世界中に届けることこそ、私たちの使命であると認識しています。

──経営ポリシーは。

 一つひとつの業務に誠実に向き合うことです。当社には、折々で患者さんから手紙が届きます。「薬のおかげで病気を克服した。ありがとう」という内容を、子どもからお年寄りまで、いろんな方からいただきます。こうしたお便りが届くたび、誠実であり続けたいと思いますし、社員にもそうあってほしいと願っています。

──愛読書は。

 司馬遼太郎さんの『この国のかたち』です。私は、90年代初めに米国駐在を経験しました。職場には、米国人をはじめ、西欧、東欧、中国、韓国などさまざまな地域から人が集まっていて、仕事に対する考え方や価値観の違いを感じるたび、自分が日本人であることを意識させられました。ちょうど出張で帰国した際に出会ったのがこの本で、「自分が拠(よ)って立つところ」がいかに大切か、かみしめました。「ヒトは、無人の曠野(あらの)にうまれず、その民族やその国家、社会、さらにはその文化のなかにうまれてくる。さらにいえば、その歴史のなかにうまれてくる」という一文など、とても共感したのを覚えています。
昭和天皇の侍従長を務めた入江相政氏の随筆集『侍従とパイプ』もお気に入りの一冊で、入江氏の教養の高さ、洒脱さ、ユーモアのセンスに惹かれます。エッセー本の中では最も好きな一冊です。
『錯覚の科学』は、日常生活で陥りやすい6つの錯覚を、心理学的見地から解明しています。人間の思い込みや過信について考えさせられる内容で、同書特設サイトの実験動画で「注意の錯覚」に関するテストをしてみるのも一興です。

畑中好彦(はたなか・よしひこ)

アステラス製薬 代表取締役社長兼CEO

1957年静岡県生まれ。80年一橋大学経済学部卒業。同年藤沢薬品工業入社。2005年アステラス製薬経営戦略本部経営企画部長。同年執行役員経営戦略本部経営企画部長。06年執行役員アステラスUS LLC President&CEO兼アステラス ファーマUS,Inc.President&CEO。08年上席執行役員アステラスUS LLC President&CEO兼アステラス ファーマUS,Inc. President&CEO。09年上席執行役員経営戦略・財務担当。11年6月から現職。

※朝日新聞に連載している、企業・団体等のリーダーにおすすめの本を聞く広告特集「リーダーたちの本棚」に、畑中好彦さんが登場しました。(全国版掲載。各本社版で、日付が異なる場合があります)

広告特集「リーダーたちの本棚」Vol.30(2011年9月22日付朝刊 東京本社版)

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