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複雑な社会問題の解決やイノベーションの創出を実現する人材育成へ

千葉大学長 徳久剛史氏

 近年、教養教育の充実と教育活動のグローバル化を積極的に進めている千葉大学。特色ある教育や研究について、学長の徳久剛史氏に聞いた。

──昨年、国際教養学部を新設しました。そのねらいは。

徳久剛史氏 徳久剛史氏

 教養教育は、戦前は高等学校において行われてきました。戦後、大学4年制が導入されてからは大学で教養教育が行われるようになり、私が千葉大学の医学部に在籍していた時も、最初の2年間で教養教育を受けました。その後、時代とともに専門分野が1~2年次へと拡大し、1994年には全国の国立大学で教養部が廃止されました。以後、教養部の先生はそれぞれ専門学部に移り、全学部が協力して教養教育にあたることになりました。

 ただ、専門学部の先生による教養教育は、情熱や難易度にばらつきがあり、しだいに本来の理想とは異なるものになっていきました。学生たちは賢いですから、形ばかりの教養教育なら専門科目に集中したいということになってしまいます。

 現代の社会問題は、分野や国境を超えて複雑化しています。その解決に向けてグローバルな教養教育を再構築する必要があると考え、新学部の設置に至りました。単に昔の教養教育に戻すだけでは進歩がありません。従来の教養教育は文系が主流でしたが、今日の課題解決には科学的な視点が必須との思いから、文理混合教育を実現。活動体験や海外留学のプログラムを充実させています。入試倍率は2年連続で約4倍と高く、全国から志願者を集めています

──教育活動のグローバル化を積極的に進めています。

 国立大学は2004年に法人化されて以降、6年ごとに中期目標を定め、改革を進めてきました。16年度からは第3期中期目標がスタートし、国立大学が機能別に3群に分かれることになりました。第1群が「地域に貢献する取り組みと、強み・特色のある分野で世界ないし全国的な教育研究の推進」に取り組む大学群、第2群が「強み・特色のある分野で地域というより世界ないし全国的な教育研究の推進」に取り組む大学群、第3群が「卓越した成果を創出している海外大学と肩を伍して、全学的に世界で卓越した教育研究、社会実装の推進」に取り組む大学群です。千葉大学は第3群に手を挙げ、16校のうちの1校として認められました。

 当大学は現在、中国、インドネシア、タイ、カナダ、フィンランド、ドイツ、メキシコ、ロシアと、世界各地に海外オフィスを設置し、学生の送り出しや留学生の受け入れ体制を整えています。また、タイのマヒドン大学、ドイツのシャリテ・ベルリン医科大学、アメリカのカリフォルニア大学サンディエゴ校には教育研究拠点を設置して学生や教授を派遣し合う体制を整え、学術研究の交流や教育機会の拡大を図っています。

徳久剛史氏

──研究分野への取り組みについて聞かせてください。

 09年から、多様で発展性を持つ研究を推進する「グローバルプロミネント研究基幹」をスタートさせました。外部有識者の評価で選ばれた研究プロジェクトを推進し、国際的に卓越した研究拠点の形成と革新的なイノベーションの創出を図るのがねらいで、学長裁量により約6億円をこのプロジェクトにあてています。

 プロジェクトのポイントは、グループ研究の育成です。昨年は、国際粘膜免疫・アレルギー治療学研究拠点形成事業、次世代3次元映像計測技術の創成と応用、未来型公正社会の研究、先端マイクロ波リモートセンシング拠点など15の事業が採択されました。自分の研究だけでなく、他の研究分野も巻き込んでイノベーションを起こすようなリーダーや研究者の育成も図っていきたいと思います。

──海外からの留学生の受け入れについて、どのような対策を講じていますか。

 これまで留学生の受け入れは大学院が主でしたが、今後は学部の段階から呼び寄せていきたいと考えています。海外キャンパスの設置はその第一歩です。派遣した教授や学生を通じて千葉大への理解を深めてもらえたらと思っています。また、教育学研究科の院生・学部生と、他研究科の院生とが協働し、千葉大の先端研究を携えてASEAN各国の小・中・高等学校で授業を行う「ツイン型学生派遣プログラム」を開始。こうした機会を通じて千葉大ブランドを発信し、留学生の受け入れ拡大を目指すとともに、将来のASEANと日本の架け橋となる人材育成を目指しています。

──学生たちに望むことは。

 今の若者は、スマホやパソコンと向き合って一人で過ごす時間がとても多い。私が学生だった頃に比べて第三者と関わる時間が極端に減っているように思います。ですから、大学ではサークル活動などを通じてできるだけ多くの人と交流してほしいと思います。留学生と日本の学生が混住できる学生寮を増やすなど、大学としても環境づくりに努めていきたいですね。

──徳久学長は、千葉大学の卒業生でもあります。改めて千葉大の魅力について聞かせてください。

 総合大学であることと、部局間の垣根が低いことです。必然的に専門外の学問や違うジャンルの教員や学生と接する機会が多くなるので、新しい発想や共同研究などが生まれるチャンスも増える。学部と大学院の交流もさかんです。そうした風通しの良さが最大の魅力だと思います。

徳久剛史氏

──リーダー信条は。

 学長としてのモットーは、欲をなくすこと。自身の利害関係を絶えず反芻し、私利となるものは避ける。そうでなければ教職員や学生の心は打てないと思っています。

──愛読書は。

 サルトルの『実存主義とは何か』、渋沢栄一の『論語講義』、中村元の『中村元が説く 仏教のこころ』など、自分の思想に大きな影響を与えてくれた本たちが心に残っています。

徳久剛史(とくひさ・たけし)

千葉大学 学長

1948年まれ。73年千葉大学医学部卒。同年同学部第2内科入局。75年同大学院医学研究科入学。78年スタンフォード大学医学部留学。83年ケルン大学付属遺伝学研究所留学。87年神戸大学教授。93年千葉大学医学部教授。医学研究科院長、医学部長などを歴任。2014年4月から現職。

※朝日新聞に連載している、企業・団体等のリーダーにおすすめの本を聞く広告特集「リーダーたちの本棚」に、徳久剛史氏が登場しました。
(全国版掲載。各本社版で、日付が異なる場合があります)

広告特集「リーダーたちの本棚」Vol.95(2017年3月25日付朝刊 東京本社版)2.5MB


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